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メシアの生涯(50)—12使徒の選抜 ‐イスカリオテのユダ‐—
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イスカリオテのユダの人生から教訓を学びます。
「12使徒の選抜‐イスカリオテのユダ-」
§053 マコ3:13~19、ルカ6:12~16
1.はじめに
(1)12使徒のメッセージの最後
(2)これまでに11人取り上げた。
①ペテロ:キーマン
②アンデレ:紹介者
③ヤコブ:天国への一番槍
④ヨハネ:主が愛された弟子
⑤ピリポ:哲学者
⑥ナタナエル(バルトロマイ):イスラエルの型
⑦マタイ:神からの贈り物
⑧トマス:懐疑論者
⑨アルパヨの子ヤコブ:隠れた偉人
⑩熱心党員シモン:転向者
⑪別名タダイのユダ:ライオンハート
(3)今回は、第3組の最後に出て来るイスカリオテのユダを取り上げる。
①ユダがなぜイエスを裏切ったのかは、謎である。
②そのため、さまざまな意見が出てくる。
<12使徒の歌(ルカ6:14~16)>
1. イエスの使徒たち12人、彼らは全員20代、
1組4人で活動し、御国の福音伝えます。
2. ペテロが最初の長(おさ)となり、弟アンデレそこに付き、
ヤコブとヨハネの兄弟も、 御国のために仕えます。
3.ピリポの組の者たちは、バルトロ、別名ナタナエル、
マタイ、もとは取税人、トマス、あだ名がデドモ(双子)です。
4. ヤコブの父はアルパヨで、シモンの前歴熱心党、
別名タダイのユダがいて、 裏切り者のユダ最後。
2.アウトライン
(1)概略
(2)裏切りに至るステップ
(3)裏切り行為
(4)裏切りの結果
3.結論:イスカリオテのユダの人生から、教訓を学ぶ。
このメッセージは、イスカリオテのユダの人生から教訓を学ぼうとするものである。
Ⅰ.概略
1.呼び名
「イエスはイスカリオテ・シモンの子ユダのことを言われたのであった。このユダは十二
弟子のひとりであったが、イエスを売ろうとしていた」 (ヨハ6:71)
(1)イスカリオテ・シモンの子
①ユダの父親の名は、イスカリオテ・シモンである。
②「イスカリオテ」とは、「カリオテ出身の人」という意味である。
③彼の父親も彼自身も、カリオテ出身である。
④それで、イスカリオテ・ユダという。
(2)カリオテ
①ユダ(イスラエル南部)の町である。
②ヨシ15:25に、この町の名が登場する。
(3)以上のことから、イスカリオテのユダだけがガリラヤ人でなかったことが分かる。
①彼は、都会人である。
②一般的に、ユダの住民はガリラヤ人たちを見下していた。
③ユダにも、そのような傾向があったと思われる。
2.イエスによる選抜
(1)イエスは、ユダの内に使徒としての可能性を見たはずである。
①でなければ、彼を選ぶことはなかったであろう。
(2)ユダは、使徒集団の中で重要な役割を果たしていた。
①彼は、金入れ(財布)を預かっていた(ヨハ12:6、13:29)。
②つまり、彼には管理能力があったのである。
③集団の財布を委ねられるのは、人格的に最も信頼されている者である。
(3)イスカリオテのユダは、12使徒のリストの中では常に最後に出て来る。
Ⅱ.裏切りに至るステップ
1.はじめに
(1)使徒の召命から裏切りに至るまでの情報は、ヨハネの福音書だけに出て来る。
(2)イスカリオテのユダは、最初から邪悪な性格を宿していたと思われる。
①徐々にその邪悪な性格が明らかになっていく。
②イエスのことばは、時とともにユダの性格を鮮明に指摘するようになっていく。
2.命のパンのメッセージが語られた場面
(1)ヨハ6:35
「イエスは言われた。『わたしがいのちのパンです。わたしに来る者は決して飢える
ことがなく、わたしを信じる者はどんなときにも、決して渇くことがありません』」
①5千人のパンの奇跡の後、カペナウムで語られたメッセージである。
②「天から下って来た」とは、自分は人間以上の存在であるという宣言である。
③ユダヤ人たちは、イエスをヨセフの子としてしか認識していなかった。
④彼らは、イエスの処女降誕に関しても、イエスの受肉に関しても無知であった。
(2)ヨハ6:41~42
「ユダヤ人たちは、イエスが『わたしは天から下って来たパンである』と言われたの
で、イエスについてつぶやいた。彼らは言った。『あれはヨセフの子で、われわれは
その父も母も知っている、そのイエスではないか。どうしていま彼は「わたしは天か
ら下って来た」と言うのか』」
①このメッセージの後で、弟子たちのうちの多くの者が離れ去った(ヨハ6:66)。
②さまざまな理由が考えられる。
*イエスが、彼らの期待するメシア像とは異なる方向に歩んでいるから。
*イエスのメッセージ(悔い改めと信仰)が気に入らなかったから。
*イエスの超自然的な自己宣言が信じられなかったから。
(3)ヨハ6:64
「『しかし、あなたがたのうちには信じない者がいます。』──イエスは初めから、信
じない者がだれであるか、裏切る者がだれであるかを、知っておられたのである──」
①イエスは、公生涯の最初から弟子の中で信じない者が出ることを知っていた。
②また、裏切り者がだれであるかを知っていた。
③ペテロは、イエスへの信頼をただちに告白した。
(4)ヨハ6:70~71
「イエスは彼らに答えられた。『わたしがあなたがた十二人を選んだのではありませ
んか。しかしそのうちのひとりは悪魔です』。イエスはイスカリオテ・シモンの子ユ
ダのことを言われたのであった。このユダは十二弟子のひとりであったが、イエスを
売ろうとしていた」
①イエスは、12人の中のひとりは悪魔だと言われた。
②悪魔の手先として働いているという意味であろう。
③ここでもイエスは、イスカリオテのユダの名を上げてはいない。
④ヨハネが説明を付け加えている。
⑤この段階で、ユダの心はすでにイエスから離れていた。
⑥彼が依然として使徒集団に留まるのは、別の動機から。
⑦彼は、忠実な使徒の仮面をかぶって活動を継続する。
3.マリアによる油注ぎの場面
(1)ヨハ12:3~5
「マリヤは、非常に高価な、純粋なナルドの香油三百グラムを取って、イエスの足に
塗り、彼女の髪の毛でイエスの足をぬぐった。家は香油のかおりでいっぱいになった。
ところが、弟子のひとりで、イエスを裏切ろうとしているイスカリオテ・ユダが言っ
た。『なぜ、この香油を三百デナリに売って、貧しい人々に施さなかったのか』」
①マリアは、イエスの埋葬の準備をしていた。
②ユダは、その気前の良い行いに文句を言った。
③「なぜ、貧しい人々に施さなかったのか」とは、正論である。
④マタ26:8では、「弟子たちは憤慨して言った」となっている。
⑤マコ14:4では、「何人かの者が憤慨して互いに言った」となっている。
(2)ヨハ12:6
「しかしこう言ったのは、彼が貧しい人々のことを心にかけていたからではなく、彼
は盗人であって、金入れを預かっていたが、その中に収められたものを、いつも盗ん
でいたからである」
①これもまた、ヨハネによる注釈である。
②使徒たち全員が、同じ財布に金を入れた。
③それは、貧しい人々のためにも用いられた。
④ユダは、盗人である。また発覚していないが。
⑤ユダは、共通の財布から、少額を習慣的にかすめていた。
Ⅲ.裏切り行為
1.姿を消す
(1)ユダは、収入源が断たれる時が近いことを認識した。
①イエスは、自らの死について語った。
②イエスは、悪の力が働いていることを知っていた。
③使徒集団から去る時が来ている。
(2)マタ26:14~16
「そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテ・ユダという者が、祭司長たちのと
ころへ行って、こう言った。『彼をあなたがたに売るとしたら、いったいいくらくれ
ますか』。すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。そのときから、彼はイエスを
引き渡す機会をねらっていた」
①単にイエスの居所を教えるだけでなく、裁判で証人になることを提案した。
②銀貨30枚は奴隷を贖うための値段である(出21:32)。
③その価値を正確に言い当てるのは困難である。
*どの銀貨か明確には書かれていない。
*購買力は時代によって変化する。
*ユダにとっては取引に値する額である。
④両者の間に契約が結ばれ、その場で報奨金の支払いが行われた。
(3)ルカ22:3
「さて、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれるユダに、サタンが入った」
①ユダは自分の心にサタンを招き入れたと言える。
2.姿を現す
(1)ヨハ13:2~4
「夕食の間のことであった。悪魔はすでにシモンの子イスカリオテ・ユダの心に、イ
エスを売ろうとする思いを入れていたが、イエスは、父が万物を自分の手に渡された
ことと、ご自分が神から出て神に行くことを知られ、夕食の席から立ち上がって、上
着を脱ぎ、手ぬぐいを取って腰にまとわれた」
①ユダが最後の晩餐(過越の食事)の席に同席している。
②彼は悪魔(サタン)の支配下にあった。
③イエスは、弟子たちの足を洗われた。
(2)ヨハ13:10~11
「イエスは彼に言われた。『水浴した者は、足以外は洗う必要がありません。全身き
よいのです。あなたがたはきよいのですが、みながそうではありません』。イエスは
ご自分を裏切る者を知っておられた。それで、『みながきよいのではない』と言われ
たのである」
①イエスは、ユダが自分を裏切ることを知っておられた。
②ヨハネは、そのことを解説している。
(3)ヨハ13:21
「イエスは、これらのことを話されたとき、霊の激動を感じ、あかしして言われた。
『まことに、まことに、あなたがたに告げます。あなたがたのうちのひとりが、わた
しを裏切ります』」
①イエスは、この時点でも、ユダという名を出していない。
②ペテロがヨハネに指示を出し、ヨハネがイエスに、裏切り者は誰かと聞いた。
(4)ヨハ13:26~27
「イエスは答えられた。『それはわたしがパン切れを浸して与える者です』」。それか
らイエスは、パン切れを浸し、取って、イスカリオテ・シモンの子ユダにお与えにな
った。彼がパン切れを受けると、そのとき、サタンが彼に入った。そこで、イエスは
彼に言われた。『あなたがしようとしていることを、今すぐしなさい』」
①イエスの回答は、ヨハネだけが聞くことができた。
②パン切れを与えるのは、主人のもてなしの行為である。友情のしるし。
③友情のしるしが、裏切り者を特定する方法となった。
④サタンは、ついにユダを完全に支配するようになった。
⑤しかし、ヨハネでさえもイエスのことばの意味を理解できなかった。
3.再度姿を消す
(1)ヨハ16:30
「ユダは、パン切れを受けるとすぐ、外に出て行った。すでに夜であった」
①イエスのユダに対することばは、神の計画を予定通りに進める力となった。
*イエスは、過越の祭りの間に十字架にかかる必要があった。
*祭司長たちは、祭りの後でイエスを殺そうとしていた。
②ユダは、新約のしるしとしてのパンとぶどう酒を受ける前に、そこを去った。
③ヨハネの福音書の中で、最も暗い箇所である。
4.再度姿を現す
(1)ヨハ18:2~3
「ところで、イエスを裏切ろうとしていたユダもその場所を知っていた。イエスがた
びたび弟子たちとそこで会合されたからである。そこで、ユダは一隊の兵士と、祭司
長、パリサイ人たちから送られた役人たちを引き連れて、ともしびとたいまつと武器
を持って、そこに来た」
①イエスは、ゲツセマネの園で祈っておられた。
②そこに裏切り者のユダがやって来た。
*およそ600人のローマ兵
*祭司長、パリサイ人たちから派遣された役人たち
*たいまつと武器
③ユダは、イエスに口づけした(マタ26:49)。
Ⅳ.裏切りの結果
1.後悔
(1)マタ27:3~4
「そのとき、イエスを売ったユダは、イエスが罪に定められたのを知って後悔し、銀
貨三十枚を、祭司長、長老たちに返して、『私は罪を犯した。罪のない人の血を売っ
たりして』と言った。しかし、彼らは、『私たちの知ったことか。自分で始末するこ
とだ』と言った」
①ユダは自責の念にかられたが、これは救いに至る悔い改めではない。
②彼は、銀貨30枚を返した。
③しかし、祭司長、長老たちは、取り合わなかった。
④彼らは、罪の道では友人であったが、義の道では他人同士である。
2.自殺
(1)マタ27:5~7
「それで、彼は銀貨を神殿に投げ込んで立ち去った。そして、外に出て行って、首を
つった。祭司長たちは銀貨を取って、『これを神殿の金庫に入れるのはよくない。血
の代価だから』と言った。彼らは相談して、その金で陶器師の畑を買い、旅人たちの
墓地にした。それで、その畑は、今でも血の畑と呼ばれている」
①ユダは、銀貨を神殿に投げ込んで、別の場所で首をつって死んだ。
②自殺は、ユダヤ教では最悪の行為である。
③マタイによる皮肉
*祭司長たちは、大切なことは無視して、小さなことにこだわっている。
*イエスを殺すのは平気、血の代価を神殿の金庫に入れるのには抵抗がある。
④彼らは、陶器師の畑を買い、旅人たちの墓地にした。
結論:主の愛を拒み続けた人
1.誤った見解(すべてユダの性格を上に引き上げるものである)
(1)ユダは、愛国者であった。
①イエスを、ユダヤ人の伝統を破壊する敵と見なした。
②そのため、イエスを殺すことに手を貸した。
③しかし、祭司長たちはユダを拒否したので、この説は成り立たない。
(2)ユダは、イエスのメシアとしての啓示を早めるために、イエスを売り渡した。
①ユダは、政治的メシア像を持っていた。
②イエスは、いつまで経ってもその方向に動かないので、ユダの方から動いた。
③ユダが自殺したのは、イエスに失望したからである。
④しかし、イエスのユダを叱責する厳しいことばは、この説を否定している。
(3)ユダは、裏切り者になるように定められていた。
①神の計画があるのだから、こうなるのは当然である。
②ユダの裏切りがなかったら、イエスは十字架にかかっていなかった。
③これは、予定論の極端な適用である。
④神の主権と人間の自由意志の問題は、簡単に解決できるようなものではない。
⑤神の主権を認めると同時に、ユダの責任を問わなければならない。
2.正しい見解(ユダには責任がある)
(1)ユダの罪の進展に注目すべきである。
①ユダには、最初から、能力とともに心の汚れ(盗人の性質)があった。
②彼は、共通の財布から少しずつ盗み始めた。
③彼は、イエスのことばを聞き、地上的成功の見込みがないことを感じ始めた。
*命のパンのメッセージ
④彼は、もっと盗み始めた。
⑤彼は、イエスから心が離れていても、それを隠して使徒集団の中にとどまった。
⑥彼は、イエスの叱責のことばを聞いて、サタンを心に迎えた。
*ベタニヤでの油注ぎ
⑦彼は、銀貨30枚でイエスを売り渡す約束をした。
⑧彼は、「今しなさい」というイエスのことばを聞いて、裏切りを実行に移した。
*最後の晩餐
⑨彼は、逮捕する者たちをゲツセマネの園に導いてきた。
⑩彼は、口づけでイエスを売り渡した。
(2)イエスの愛に注目すべきである。
①イエスは、決して裏切り者がユダであることを明かさなかった。
②最後の晩餐では、ユダはイエスの左の席にいた(2番目の席)。
③イエスは、ユダにしか分からないように、パンを与えた。
④イエスは、最後までユダに悔い改めの機会を与え続けた。
⑤ユダは、後悔はしたが、悔い改めはしなかった。
*彼は、自らの罪責感を処理しようとした。
*しかし、イエスとの関係を修復しようとはしなかった。
⑥主イエスを信頼するなら、赦されない罪はない。
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