ローマ人への手紙(2)—あいさつ(1)—

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このメッセージでは...

パウロの自己紹介を通して、クリスチャン生活の本質を確認する。
チャート「神の義の啓示」

「あいさつ(1)」

1.はじめに

  (1)前回の復習。パウロの執筆目的。

  ①パウロの神学をまとめるため

  ②スペイン伝道の支援を求めるため

  ③ローマの教会の中にあるユダヤ人信者と異邦人信者の対立を解決するため

(2)その目的を達成するために、書き始めの言葉は非常に重要なものとなる。

  ①ロマ書は、パウロ自身が設立していない教会に宛てた唯一の手紙である。

  ②最初に、自分と受取人とをつなぐ作業が必要となる。

  ③決して技巧ではなく、心の絆、愛の絆を結ぶ必要がある。

    (3)2つの情報によりそれをした。

  ①神と自分との関係の紹介

  ②受取人と自分が共有している真理の確認

(4)今回は、1:1だけを取り扱い、パウロの立場を確認する。

  2.内容理解のための準備

(1)ギリシア語と日本語の語順の違いに注目する必要がある。

「神の福音のために選び分けられ、使徒として召されたキリスト・イエスのしもべパ

ウロ」(新改訳)

「キリスト・イエスの僕、神の福音のために選び出され、召されて使徒となったパウ

ロから」(新共同訳)

    (2)原文の語順

  ①パウロ

  ②しもべ、キリスト・イエスの

  ③召された、使徒として

  ④選びだされた、神の福音のために

(3)パウロという言葉を3つのキーワードで説明している。

  ①しもべ

  ②召された

③選びだされた

  3.メッセージのアウトライン

(1)パウロという名前の意味

(2)しもべという言葉の意味

(3)召されたという言葉の意味

(4)選びだされたという言葉の意味

  4.メッセージのゴール

(1)パウロと私たちの間に絆があるかどうかの確認(クリスチャン生活の確認)

(2)ロマ書を学ぶべき理由があるかどうかの確認(ロマ書の権威の確認)

このメッセージは、パウロの自己紹介を通して、クリスチャン生活の本質を確認するためのものである。

Ⅰ.パウロという名前の意味

  1.異邦人の解釈

  ①サウロは、ユダヤ人としての名前。

  ②パウロは、クリスチャンになってからの名前。

  2.ヘブル的解釈

(1)離散の地のユダヤ人は、通常2つの名前を持っていた。

  ①ヘブル名 サウロ(シャウール)。好ましいという意味。

  ②ラテン名 パウロ(パウロス)。小さいという意味。

*パウロという名は、クリスチャン名ではなく普通のラテン名であった。

    *使13:7 地方総督セルギオ・パウロ(サラミスでの伝道)

  ③今でも、離散の地のユダヤ人は2つの名前を持っていることが多い。

*フルクテンバウム先生は、アーノルドである。

*しかし、ユダヤ人の会堂では、アロンという名で知られている。

    (2)サウロからパウロへの変更

「しかし、サウロ、別名でパウロは、聖霊に満たされ、彼(魔術師エルマ)をにらみ

つけて、言った」(使13:9)

  ①この箇所から、パウロの異邦人伝道が始まったことを示している。

  3.パウロの言語能力

    (1)彼は、ヘブル語もギリシア語も理解し、話せた。

  ①当時のローマ世界では、ギリシア語は共通語である。

  ②パウロがギリシア語を話せたことは、なんという幸いか。

  「あなたはギリシヤ語を知っているのか」(千人隊長の言葉。使21:37)

(2)ロマ書はギリシア語で書かれている。

  ①それゆえ、当時の習慣に従って、ラテン名のパウロを使用した。

  ②その上で、次の3つのキーワードによって、自らの資格を証明しようとした。

  ③もしギリシア語を知らず、サウロという名でしか手紙を書けないなら、ロマ書

  は成立していなかったであろう。

Ⅱ.しもべという言葉の意味

  1.「キリスト・イエスのしもべ」

(1)しもべとは、ギリシア語で「デューロス」である。

  ①奴隷のことである。

(2)奴隷には2種類あった。

  ①旧約時代のユダヤ人は、貧しさのゆえに自分を売り、奴隷となった。

  ②その奴隷は、自分の意志に反して奴隷となったのである。

  ③その場合、6年間働いて、7年目に解放される。これがモーセの律法の規定。

  「あなたがヘブル人の奴隷を買う場合、彼は六年間、仕え、七年目には自由の身

  として無償で去ることができる」(出21:2)

  ④もしその奴隷がさらに主人に仕えることを選択するなら、それが許された。

  「その主人は、彼を神のもとに連れて行き、戸または戸口の柱のところに連れて

  行き、彼の耳をきりで刺し通さなければならない。彼はいつまでも主人に仕える

  ことができる」(出21:6)

    *その家の所有物になったことを象徴している。

  ⑤彼は、自由意思に基づく奴隷となった。

  2.パウロの自己認識

(1)イエスによって買い取られた奴隷であるという認識

「あなたがたは、代価をもって買われたのです。人間の奴隷となってはいけません」

(1コリ7:23)

(2)パウロが経験した3つのステップ

  ①罪の奴隷から解放された。

  ②自由の身となった。

  ③自らの選択によって神の奴隷となった。

(3)「キリスト・イエスのしもべ」とは、逆説的言葉である。

  ①最も不自由であるかに見えて、最も自由である。

  ②最も低き所に降ろされたように見えて、最も高き所に引き上げられている。

  ③最も弱い者になったように見えて、最も強い者にされている。

Ⅲ.召されたという言葉の意味

  1.「召された」

    (1)パウロの使徒としての資格を疑う人が多かった。

  ①かつてはキリストの教会を迫害していた。

  ②律法を否定する者と非難された。

  ③恵みを強調することによって、放縦な生活を助長していると非難された。

    (2)パウロは、自らの使徒としての資格は、神からの召しにあると主張した。

  ①1コリ1:1

  「神のみこころによってキリスト・イエスの使徒として召されたパウロ」

  ②ガラ1:1

  「使徒となったパウロ──私が使徒となったのは、人間から出たことでなく、ま

  た人間の手を通したことでもなく、イエス・キリストと、キリストを死者の中か

  らよみがえらせた父なる神によったのです──」

  ③2コリ11:23

  「彼らはキリストのしもべですか。私は狂気したように言いますが、私は彼ら以

  上にそうなのです。私の労苦は彼らよりも多く、牢に入れられたことも多く、ま

  た、むち打たれたことは数えきれず、死に直面したこともしばしばでした」

  ④ロマ書執筆当時は、その戦いは下火になっていたが、それでも「召し」につい

  て書かざるを得ない。

(3)私たちは、人間の組織によって召しの認定を受けるのではない。

  ①神学校の卒業証書や、学位は、召しの認定にはならない。

  ②神から召されたという強い確信が必要である。

  2.「使徒として」

    (1)ギリシア語で「アポストロス」である。

  ①遣わされた者

  ②メッセンジャー

  ③教会に与えられた最高の賜物(1コリ12:28)

    (2)ユダヤ的考え方では、遣わされた者は「代理人」である(ヘブル語でシャリアハ)。

  ①遣わされた者は、遣わした者と同一人物である。

*同じ権威をもって行動し、交渉(商売)をする。

  ②エリエゼルはアブラハムの代理人として行動している(創24章)。

  ③モーセは神の代理人としてエジプトに遣わされた(出3:14~15)。

    (3)新約聖書にも「代理人」の概念がある。

  ①イエスは究極的な意味で、神の「代理人」である。

  「神がお遣わしになった方は、神のことばを話される。神が御霊を無限に与えら

  れるからである」(ヨハ3:34)

Ⅳ.選びだされたという言葉の意味

  1.「選び分けられ」

(1)ギリシア語の「アフォリゾウ」という動詞から来ている。

  ①「アフォリスメノス」(受動態、完了形)

  ②パリサイ人(ファリサイオス)と同じ語源。

  ③パウロはパリサイ人であったが、主イエスとの出会いによって「霊的パリサイ

  人」となった。

(2)時期はいつか

  ①生まれる前から

  「わたしは、あなたを胎内に形造る前から、あなたを知り、あなたが腹から出る

前から、あなたを聖別し、あなたを国々への預言者と定めていた」(エレ1:5)

②ダマスコ途上での回心の時

③両方の可能性がある。

  2.「神の福音のために」

    (1)ギリシア語では「ユーアンゲリオン」である。

      ①元々は、戦争で勝利したという知らせのことである。

      ②「グッドニュース」のことである。

    (2)旧約聖書

      ①イザ52:7は、この「グッドニュース」を救いのこととしている。

      「良い知らせを伝える者の足は山々の上にあって、なんと美しいことよ。平和を

      告げ知らせ、幸いな良い知らせを伝え、救いを告げ知らせ、『あなたの神が王とな

る』とシオンに言う者の足は」

②イザ61:1~2

「神である主の霊が、わたしの上にある。【主】はわたしに油をそそぎ、貧しい者

に良い知らせを伝え、心の傷ついた者をいやすために、わたしを遣わされた。捕

らわれ人には解放を、囚人には釈放を告げ、【主】の恵みの年と、われわれの神の

復讐の日を告げ、すべての悲しむ者を慰め、」

  *ルカ4章でイエスが朗読された。

  *「われわれの神の復讐の日を告げ」という部分は省略された。

    (3)新約聖書

      ①バプテスマのヨハネの宣教は、神の国(メシア的王国)の宣言であった。

      ②イエスの宣教もまた、神の国の宣言であった。

        *メシアが到来した。

        *信仰をもってメシアを受け入れるなら、神の国は成就する。

      ③イエスの死と復活以降は、その福音の内容は異なる。

        *それがなんであるかは、次回学ぶ。

結論:

  1.
パウロと私たちの間に絆があるかどうかの確認(クリスチャン生活の確認)

    (1)選びの確信は共通している。


  ①ヨハ15:16


  「あなたがたがわたしを選んだのではありません。わたしがあなたがたを選び、


  あなたがたを任命したのです。それは、あなたがたが行って実を結び、そのあな


  たがたの実が残るためであり、また、あなたがたがわたしの名によって父に求め


  るものは何でも、父があなたがたにお与えになるためです」


  ②エペ1:4


  「すなわち、神は私たちを世界の基の置かれる前から彼にあって選び、御前で聖


  く、傷のない者にしようとされました」


    *選びの目的は、聖化、栄化である。

    (2)キリストのしもべであるという確信は共通している。


  ①ロマ12:1~2で、このテーマを展開している。


  「あなたがたのからだを、神に受け入れられる、聖い、生きた供え物としてささ


  げなさい」


  ②教理が先、それから実践。

  2.ロマ書を学ぶべき理由があるかどうかの確認(ロマ書の権威の確認)

    (1)「アポストロス」は、遣わした者と同じ権威をもって行動する。

  ①パウロは、大祭司からの紹介状を持って(代理人として)ダマスコに向かった。

  ②回心してからは、キリストの代理人となった。

  「しかし、主はこう言われた。『行きなさい。あの人はわたしの名を、異邦人、

  王たち、イスラエルの子孫の前に運ぶ、わたしの選びの器です。彼がわたしの名

  のために、どんなに苦しまなければならないかを、わたしは彼に示すつもりです』」

  (使9:15)

  ③使徒たちは全員、神の「代理人」として派遣された人たちである。

    (2)2種類の使徒たちがいた

  ①12使徒

  「すなわち、ヨハネのバプテスマから始まって、私たちを離れて天に上げられた

  日までの間、いつも私たちと行動をともにした者の中から、だれかひとりが、私

  たちとともにイエスの復活の証人とならなければなりません」(使1:22)

*イエスが洗礼を受けた時から、弟子であった人

*復活のイエスに出会った人

  ②第2グループの使徒たち

*復活のイエスに出会った人

*パウロはこの資格を満たしている。

*バルナバもまた第2グループの使徒である(使14:14)。

*イエスの弟のヤコブも同じである(Ⅰコリ15:7、ガラ1:19)。

    (3)エペ2:20

「あなたがたは使徒と預言者という土台の上に建てられており、キリスト・イエスご

自身がその礎石です」

  ①キリストが礎石である。

  ②使徒と預言者が土台である。つまり、置き換えはできないということ。

  ③預言者とは、新約時代の預言者。使徒には預言者の賜物もあった。

  ④使徒と預言者が土台であるとは、神の啓示が完了したということである。

(4)現在この資格を有する人はいない。

  ①使徒たちの教えを信じ、それを守ることが、私たちの使命である。

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