メシアの生涯(198)—十字架上での最初の3時間(2)—

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十字架での最初の3時間の意味について考えてみよう。

「十字架上での最初の3時間(2)」

ヨハ19:18~27

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①イエスは、刑場(ゴルゴタ)に着いた。

②午前9時から正午までの3時間

*人の怒りを体験する時間

③正午から午後3時までの3時間

*神の怒りを体験する時間

      ④今回は、最初の3時間の後半について学ぶ。

    (2)A.T.ロバートソンの調和表

      §164 十字架上での最初の3時間

マコ15:24~32、マタ27:35~44、ルカ23:33~43、ヨハ19:18~27

2.アウトライン

  (1)あざけりを受けるイエス

  (2)信仰を告白する罪人

(3)第2のことば

  (4)第3のことば

  3.結論:

    (1)あざけりの深い意味

    (2)救いに至る信仰

(3)死後の命

十字架での最初の3時間の意味について考えてみよう。

Ⅰ.あざけりを受けるイエス

   1.マコ15:29~30

Mar 15:29 道を行く人々は、頭を振りながらイエスをののしって言った。「おお、神殿を打ちこわして三日で建てる人よ。

Mar 15:30 十字架から降りて来て、自分を救ってみろ。」

    (1)「道を行く人々」、つまり群衆がイエスをののしった。

①イエスが十字架に付けられた刑場は、門の近くに位置していた。

②祭りを祝うために、人々はこの門を通って町の中に入っていた。

③ののしりとは、言葉による暴力である。

④ののしりの際に頭を振るのは、当時の一般的な行為である。

  *詩22:7、109:25、エレ18:16、哀2:15

    (2)彼らは、イエスによるメシア性の主張をののしった。

      ①「神殿を打ちこわして三日で建てる人よ」

        *ヨハ2:20~22、マタ26:61参照

      ③彼らは、十字架から降りて来て、自分を救えと言った。

    (3)詩22:7の成就

Psa 22:7 私を見る者はみな、私をあざけります。/彼らは口をとがらせ、頭を振ります。

  2.マコ15:31~32a

Mar 15:31 また、祭司長たちも同じように、律法学者たちといっしょになって、イエスをあざけって言った。「他人は救ったが、自分は救えない。

Mar 15:32a キリスト、イスラエルの王さま。今、十字架から降りてもらおうか。われわれは、それを見たら信じるから。」

    (1)サドカイ人とパリサイ人がいっしょになって、イエスをあざけった。

      ①ルカ23:35には、「指導者たち」とある。

    (2)あざけりの内容は、イエスによるメシア性の主張である。

      ①「キリスト、イスラエルの王さま」

②「今、十字架から降りてもらおうか。われわれは、それを見たら信じるから」

  3.ルカ23:36~37

Luk 23:36 兵士たちもイエスをあざけり、そばに寄って来て、酸いぶどう酒を差し出し、

Luk 23:37 「ユダヤ人の王なら、自分を救え」と言った。

    (1)イエスが、罪の赦しを祈った者たちが、イエスをあざけった。

  4.マコ15:32b

Mar 15:32b また、イエスといっしょに十字架につけられた者たちもイエスをののしった。

    (1)イエスの両側で十字架につけられた犯罪人たちも、最初はイエスをののしった。

Ⅱ.信仰を告白する罪人

   1.ルカ23:39~41

Luk 23:39 十字架にかけられていた犯罪人のひとりはイエスに悪口を言い、「あなたはキリストではないか。自分と私たちを救え」と言った。

Luk 23:40 ところが、もうひとりのほうが答えて、彼をたしなめて言った。「おまえは神をも恐れないのか。おまえも同じ刑罰を受けているではないか。

Luk 23:41 われわれは、自分のしたことの報いを受けているのだからあたりまえだ。だがこの方は、悪いことは何もしなかったのだ。」

    (1)犯罪人のひとり

      ①イエスのメシア性の主張をあざけった。

      ②キリストなのだから、自分を救い、私たちを救えと言った。

    (2)もうひとりの犯罪人

      ①心の変化を体験した。

      ②悪口を言う仲間をたしなめ、神を恐れよと忠告した。

      ③彼は、自分たちは当然の報いを受けていることを認めた。

      ④そして、この方(イエス)はそうではないと言った。

  2.ルカ23:42

Luk 23:42 そして言った。「イエスさま。あなたの御国の位にお着きになるときには、私を思い出してください。」

     (1)彼は、イエスに信頼した。

      ①間もなく死のうとしているイエスが、いつか御国の位に着くと信じた。

      ②「御国」とは、キリストが地上に設立する王国である。

Ⅲ.第2のことば

   1.ルカ23:43

Luk 23:43 イエスは、彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」

    (1)イエスは、彼の信仰に応えた。

      ①「きょう」。長く待つ必要はない。すぐに祝福が与えられる。

      ②「わたしとともに」。素晴らしいお方が同行してくださる。

      ③「パラダイスにいます」。最高の場所が約束された。

Ⅳ.第3のことば

  1.ヨハ19:25~27

Joh 19:25 兵士たちはこのようなことをしたが、イエスの十字架のそばには、イエスの母と母の姉妹と、クロパの妻のマリヤとマグダラのマリヤが立っていた。

Joh 19:26 イエスは、母と、そばに立っている愛する弟子とを見て、母に「女の方。そこに、あなたの息子がいます」と言われた。

Joh 19:27 それからその弟子に「そこに、あなたの母がいます」と言われた。その時から、この弟子は彼女を自分の家に引き取った。

    (1)十字架のそばに4人の婦人が立っていた。

①イエスの母マリア

②母の姉妹(サロメ)

  *サロメは、ヤコブとヨハネの母である(マタ27:55)。

  *つまり、ヤコブとヨハネは、イエスの従弟である。

③クロパの妻マリア

*母マリアの義理の姉妹。伝承では、クロパはヨセフの兄弟

*クロパの妻マリアは、マコ15:40では小ヤコブとヨセの母である。

④マグダラのマリア

    (2)イエスは、母マリアの世話をヨハネに委ねた。

      ①母親の世話をすることは、長子の責務である。

      ②イエスの4人の弟たちは、まだ信者ではなかった。

        *イエスも家族伝道には苦労された。

      ③ヨハネは、その命令に忠実に従った。

    (3)このことばの霊的意味

      ①イエスは、マリアとの肉体的な親子関係を断ち切った。

      ②これ以降、マリアにとってイエスは、「主イエス・キリスト」となる。

      ③使1:14で120人の中にマリアが登場する。

        *これが最後で、それ以降は登場しない。

結論:

1.あざけりの深い意味

  (1)4つのグループは例外なしに、イエスのメシア性の主張をあざけった。

  (2)メシア性を証明するために、十字架から降りて来いと迫った。

  (3)これは、サタンの最後の誘惑である。イエスを十字架から下そうとしている。

  (4)イエスは、十字架にとどまることによってご自身のメシア性を証明された。

2.救いに至る信仰

  (1)ルカ23:39~42

Luk 23:39 十字架にかけられていた犯罪人のひとりはイエスに悪口を言い、「あなたはキリストではないか。自分と私たちを救え」と言った。

Luk 23:40 ところが、もうひとりのほうが答えて、彼をたしなめて言った。「おまえは神をも恐れないのか。おまえも同じ刑罰を受けているではないか。

Luk 23:41 われわれは、自分のしたことの報いを受けているのだからあたりまえだ。だがこの方は、悪いことは何もしなかったのだ。」

Luk 23:42 そして言った。「イエスさま。あなたの御国の位にお着きになるときには、私を思い出してください。」

    ①彼は、自分が罪人であることを認めた。

    ②彼は、イエスには罪がないことを認めた。

    ③彼は、イエスが自分を救えると信じた。

    ④彼は、イエスが死にかけているにもかかわらず、やがて王になると信じた。

    ⑤以上は、この時点で彼が知り得た信仰の内容である。

    ⑥彼は、信仰と恵みによって救われた。

  (2)1コリ15:3~5

1Co 15:3 私があなたがたに最もたいせつなこととして伝えたのは、私も受けたことであって、次のことです。キリストは、聖書の示すとおりに、私たちの罪のために死なれたこと、

1Co 15:4 また、葬られたこと、また、聖書の示すとおりに、三日目によみがえられたこと、

1Co 15:5 また、ケパに現れ、それから十二弟子に現れたことです。

      ①以上が、今の私たちが信じなければならない内容である。

3.死後の命

  (1)ルカ23:43

Luk 23:43 イエスは、彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」

      ①この犯罪人は、死ぬとパラダイス行く。

        *信仰によって救われたから。

      ②パラダイスとは、アブラハムのふところと呼ばれた場所である。

      ③そこは、ハデス(死者の魂が行く場所)の中の「慰めの場所」である。

      ④イエスが昇天して以降は、パラダイスは第3の天に移された。

    (2)十字架は、人の永遠の運命を決定するものである。

      ①救いは、普遍的なものではない。

      ②信仰を発揮するかどうかで、永遠の運命が決まる。

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