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メシアの生涯(74)—嵐を静めるイエス—
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嵐を静める奇跡の意味を理解する。
「嵐を静めるイエス」
§065 マコ4:35~41
1.はじめに
(1)文脈の確認
①ユダヤ人たちは、イエスを拒否した。
②つまり、イエスが提供するメシア的王国を拒否したのである。
③それ以来、奥義としての王国の時代に入った。
④イエスの教え方が変化した。イエスはたとえ話だけで教えるようになった。
⑤イエスの奇跡は、弟子訓練を目的としたものとなった。
⑥この箇所の奇跡は、弟子訓練という文脈の中で読まねばならない。
⑦イエスの行い(奇跡)が、イエスのことば(教え)の真実性を証明する。
(2)連続して起こる奇跡
①自然界の支配
②悪霊の追い出し
③不治の病の癒し
④死者の蘇生
(3)A.T.ロバートソンの調和表
「湖を渡る際に、イエスは嵐を静める」(§65)
マコ4:35~41、マタ8:18、23~27、ルカ8:22~25
2.アウトライン
(1)イエスの一日(35節)
(2)弟子たちを訓練する出来事(36~37節)
(3)弟子たちの反応(38節)
(4)イエスの対応(39~40節)
(5)弟子たちの驚き(41節)
3.結論:
(1)イエスの2面性
(2)人生の嵐に会った時
嵐を静める奇跡の意味を理解する。
Ⅰ.イエスの一日(35節)
1.生き生きとした描写
(1)目撃者の情報であろう。
①マルコは、ペテロから直接この話しを聞いたのであろう。
2.35節
「さて、その日のこと、夕方になって、イエスは弟子たちに、『さあ、向こう岸へ渡ろう』
と言われた」
(1)「その日のこと、夕方になって」とある。
①同じ日が続いている。実に長い日である。
(例話)聖地旅行の1日
(2)その日に何が起こったかを復習する。
①イスラエルの指導者たちがイエスを拒否したとき、イスラエルの民は赦されな
い罪を犯した。
②パリサイ人たちは「しるし」を要求したが、裁きの宣言を受けた。
③イエスは奥義としての王国について教え始めた。それが9つのたとえ話である。
④その教えの最中に、イエスの家族がイエスを連れ戻そうとしてやって来た。
⑤この一日で、イスラエルの2000年に及ぶ運命が決まった。
(3)これでイエスの肉体が疲れないはずがない。
①イエスが舟の中で眠ったのは、よく理解できる。
(4)イエスから弟子たちに、「さあ、向こう岸へ渡ろう」と提案された。
①事前の準備はない。
②恐らく、休息の場、静思の時を、必要とされたのであろう。
Ⅱ.弟子たちを訓練する出来事(36~37節)
1.36節
「そこで弟子たちは、群衆をあとに残し、舟に乗っておられるままで、イエスをお連れし
た。他の舟もイエスについて行った」
(1)舟を操ったのは、弟子たちであった。
①彼らの多くが、経験豊かな漁師たちであった。
(2)他の舟(複数形)
①イエスの教えを、湖上で小舟に乗って聴いていた人たちがいたということ。
②彼らは、イエスのそばにいたいので、イエスの舟について行った。
③次に起こる嵐は、弟子たちだけでなく、それらの小舟に乗っていた人たちも経
験した。
④イエスは、弟子たちだけでなく、それらの人たちも救ったのである。
2.37節
「すると、激しい突風が起こり、舟は波をかぶって、水でいっぱいになった」
(1)ガリラヤ湖の地形のゆえに、このような激しい突風が起こる。
①ガリラヤ湖は、すり鉢型になっている。
②ガリラヤ湖の上は、風の通り道になっている。
(2)並行箇所の比較
「すると、激しい突風が起こり、舟は波をかぶって、水でいっぱいになった」(マコ)
「すると、見よ、湖に大暴風が起こって、舟は大波をかぶった」(マタ)
「ところが突風が湖に吹きおろして来たので、弟子たちは水をかぶって危険になった」
(ルカ)
(3)これは、非常に危険な状態である。
①通常漁師たちは、突然の嵐に備えるために、カペナウム近辺で漁をしていた。
②この場面のように、沖合で嵐に会うと、大変危険である。
③夕刻の突風の場合、さらに危険である。
Ⅲ.弟子たちの反応(38節)
1.38節a
「ところがイエスだけは、とものほうで、枕をして眠っておられた」
(1)嵐の舟の中で眠るイエス
①肉体的に疲れ切っていた。メッセージを語ると、エネルギーを消耗する。
②向こう岸に着くまでの短い時間、休息しようと思われた。
③これは、イエスの人間性を示している。
(2)眠っている場所
①「とものほう」は、船の最後尾で、唯一水が溜まらない場所である。
②「枕」は、座るための低いベンチであり、頭を載せることもできた。
2.38節b
「弟子たちはイエスを起こして言った。『先生。私たちがおぼれて死にそうでも、何とも
思われないのですか』」
(1)この言葉は、イエスへの信頼を欠いた言葉である。
①イエスの介入を待ちきれない弟子たちがそこにいる。
(2)この言葉を言ったのは、誰か。
①弟子たちが言った。
②恐らくスポークスマンは、ペテロであろう。
③「何とも思われないのですか」という言葉は、マルコの福音書だけに出て来る。
④恐らくペテロは、忘れていなかったのであろう。それをマルコに伝えた。
3.ヨナ1:5~6との対比
「水夫たちは恐れ、彼らはそれぞれ、自分の神に向かって叫び、船を軽くしようと船の積
荷を海に投げ捨てた。しかし、ヨナは船底に降りて行って横になり、ぐっすり寝込んでい
た。船長が近づいて来て彼に言った。『いったいどうしたことか。寝込んだりして。起きて、
あなたの神にお願いしなさい。あるいは、神が私たちに心を留めてくださって、私たちは
滅びないですむかもしれない』」
Ⅳ.イエスの対応(39~40節)
1.39節
「イエスは起き上がって、風をしかりつけ、湖に『黙れ、静まれ』と言われた。すると風
はやみ、大なぎになった」
(1)「静まれ」という動詞
①ギリシア語で「フィモオウ」。
②英語で「muzzle」。
③意味は、口輪をはめる、口を封じる。
④マコ1:25では、悪霊の追い出しに使われている動詞である。
「イエスは彼をしかって、『黙れ。この人から出て行け』と言われた」
⑤ある学者は、この嵐の背後に悪霊の働きがあるとも考えられるという。
(2)「すると風はやみ、大なぎになった」
①ことばで天地を創造された方が、ことばで被造世界を支配される。
②この変化は、急激なものであった。
2.40節
「イエスは彼らに言われた。『どうしてそんなにこわがるのです。信仰がないのは、どう
したことです』」
(1)「どうしてそんなにこわがるのです」
①ギリシア語で「デイロス」。
②英語で「fearful」。
③日本語では、恐怖を感じること。
(2)訳文の比較
「どうしてそんなにこわがるのです。信仰がないのは、どうしたことです」(新改訳)
「なぜ怖がるのか。まだ信じないのか」(新共同訳)
「なぜ、そんなにこわがるのか。どうして信仰がないのか」(口語訳)
(3)イエスは弟子たちの信仰が成長していないことを嘆かれた。
①マコ4:11
「あなたがたには、神の国の奥義が知らされているが、ほかの人たちには、すべ
てがたとえで言われるのです」
②マコ4:34
「たとえによらないで話されることはなかった。ただ、ご自分の弟子たちにだけ
は、すべてのことを解き明かされた」
③神の権威と力はイエスの内に宿るのであるが、それを認めることは難しい。
Ⅴ.弟子たちの驚き(41節)
1.41節
「彼らは大きな恐怖に包まれて、互いに言った。『風や湖までが言うことをきくとは、い
ったいこの方はどういう方なのだろう』」
(1)「大きな恐怖に包まれて」
①ギリシア語では「フォベオウ」。
②英語では「awe」。
③日本語では、畏怖の念を抱く。恐怖と畏怖とは、別である。
(2)弟子たちが持っていた古い宝(旧約聖書の知識)
①詩89:8~9
「万軍の神、【主】。だれが、あなたのように力がありましょう。主よ。あなたの
真実はあなたを取り囲んでいます。あなたは海の高まりを治めておられます。そ
の波がさかまくとき、あなたはそれを静められます」
②詩107:29
「主があらしを静めると、波はないだ」
③弟子たちにとっては、神だけが嵐を静めることができる。
(3)新しい宝は、まだ身に付いていなかった(奥義としての王国の知識)。
①目の前にいるイエスというお方は、だれなのか。
②信仰の成長が見られる。
結論
1.イエスの2面性
(1)人としては、疲れて眠っておられら。
(2)神としては、眠ることなく弟子たちを見守っておられた。
「見よ。イスラエルを守る方は、まどろむこともなく、眠ることもない」(詩121:4)
2.人生の嵐に会った時
(1)嵐は、私たちが人生で会う苦難の象徴である。
(2)弟子たちの訓練
①イエスは弟子たちを守られた。
②弟子たちは、奥義としての王国でどのように行動すべきかを学んだ。
③パリサイ人たちのように、イエスの力を悪霊に帰すことをしてはならない。
(3)私たちの訓練
①イエスは私たちを理解してくださる(人間としてのイエス)。
②イエスは私たちを守ってくださる(神としてのイエス)。
③今の時は、奥義としての王国である。
*肉体の死に遭遇したとしても、霊的には最後まで守ってくださる。
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