ルカの福音書(56)ベルゼブル論争11:14~26

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ベルゼブル論争について学ぶ。

ルカの福音書 56回

ベルゼブル論争

ルカ11:14~26

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①ルカ9:51からエルサレムへの旅が始まった(ルカ9:51~19:27)。

  ②ルカは、エルサレムへの旅という枠組みの中に、種々の教えを配置している。

(2)直近の文脈

  ①派遣された70人が帰還した。

  ②イエスは、弟子としていかに生きるべきかを語った。

  ③今後の展開

    *イエスとイエスのメッセージに対する拒否がクライマックスを迎える。

    *拒否という現実の中で、弟子としていかに生きるべきかが教えられる。

(3)ルカ11:14~54の内容

  ①ベルゼブル論争(14~26節)

  ②神のことばを守ることの重要性(27~28節)

  ③ヨナのしるし(29~32節)

  ④光に応答することの重要性(33~36節)

  ⑤パリサイ人たちの敵意(37~54節)

2.アウトライン

(1)イエスによる悪霊の追い出し(14節)

(2)群衆の否定的な反応(15~16節)

(3)イエスの反論(17~23節)

(4)掃除された家(24~26節)

3.結論

(1)悪魔の国の存在

(2)掃除された家

(3)私たちへの適用

ベルゼブル論争について学ぶ。

Ⅰ.イエスによる悪霊の追い出し(14節)

1.14節

Luk 11:14

さて、イエスは悪霊を追い出しておられた。それは口をきけなくする悪霊であった。悪霊が出て行くと、口がきけなかった人がものを言い始めたので、群衆は驚いた。

(1)マタ12:22~37とマコ3:20~30にベルゼブル論争の記事がある。

  ①マタイの記事では、イエスに敵対しているのはパリサイ人たちである。

  ②マルコの記事では、イエスに敵対しているのは律法学者たちである。

    *マタイとマルコの記事では、イスラエルは国家的にイエスを拒否した。

    *これによって、イスラエルは回帰不能点を超えた。

  ③ルカの記事では、イエスに敵対しているのは群衆である。

    *これは、マタイとマルコの記事とは別の出来事である。

    *これは、宗教的指導者の判断が民衆に広がっていることを示している。

(2)ベルゼブル論争が出てくる理由は、「聖霊」というテーマにある。

  ①ルカ11:13

Luk 11:13
ですから、あなたがたは悪い者であっても、自分の子どもたちには良いものを与えることを知っています。それならなおのこと、天の父はご自分に求める者たちに聖霊を与えてくださいます。」

  ②ルカは、イエスの公生涯における聖霊の働きを強調してきた。

  ③特に、悪霊の追い出しに関しては、聖霊の働きが顕著に現れる。

  ④パリサイ人たちはそれを否定し、サタンがイエスに力を与えているとした。

(3)ここでルカは、ベルゼブル論争の舞台設定をする。

  ①イエスは口をきけなくする悪霊を追い出しておられた。

  ②この種の悪霊の追い出しは、メシアだけができることである。

  ③それを見て、群衆は驚いた。

Ⅱ.群衆の否定的な反応(15~16節)

1.15節

Luk 11:15
しかし、彼らのうちのある者たちは、「悪霊どものかしらベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ」と言った。

(1)ある者たちは、イエスはベルゼブルによってこれを行っていると言った。

  ①ベルゼブルとは、「悪霊どのもかしら」、つまりサタンのことである。

  ②ベルゼブルは、「バアル・ゼブル」(バアルの王子)から派生したことば。

  ③バアルは、カナン人たちの主神である。

  ④パリサイ人たちの判断が、民衆レベルにまで浸透している。

2.16節

Luk 11:16
また、ほかの者たちはイエスを試みようとして、天からのしるしを要求した。

(1)ほかの者たちは、口をきけなくする悪霊の追い出しだけでは満足しなかった。

  ①彼らは、イエスのメシア性を証明するより強力なしるしを求めた。

  ②これは、イエスを試みるための要求である。

  ③これは、イエスを挑発するための要求である。

(2)パリサイ人たちの結論が民衆レベルにまで影響を与えているのが分かる。

  ①ルカ7:29~30

Luk 7:29 ヨハネの教えを聞いた民はみな、取税人たちでさえ彼からバプテスマを受けて、神が正しいことを認めました。

Luk 7:30 ところが、パリサイ人たちや律法の専門家たちは、彼からバプテスマを受けず、自分たちに対する神のみこころを拒みました。

  ②初期の頃に民衆とパリサイ人たちの間にあった差異が、なくなってしまった。

Ⅲ.イエスの反論(17~23節)

1.17~18節

Luk 11:17
しかし、イエスは彼らの心を見抜いて言われた。「どんな国でも内輪もめしたら荒れすたれ、家も内輪で争えば倒れます。

Luk 11:18

あなたがたは、わたしがベルゼブルによって悪霊どもを追い出していると言いますが、サタンが仲間割れしたのなら、どうしてサタンの国は立ち行くことができるでしょう。

(1)イエスは彼らの心を見抜かれた。

  ①彼らが「しるし」を求めたので、イエスは彼らの心の中を見抜くことができた。

  ②ルカは、イエスが人の心を見抜くお方であることを強調している。

  ③これ以降、イエスの論理を6つ紹介する。

(2)イエスの論理(1)

  ①どの軍隊でも、将軍が自軍の兵士を攻撃することはない。

  ②もしそれを行ったなら、その軍隊は崩壊する。

  ③サタンの国もそれと同じで、もし仲間割れしたなら、立ち行くことはできない。

2.19節

Luk 11:19

もし、わたしがベルゼブルによって悪霊どもを追い出しているとしたら、あなたがたの子らが悪霊どもを追い出しているのは、だれによってなのですか。そういうわけで、あなたがたの子らがあなたがたをさばく者となります。

(1)イエスの論理(2)

  ①もし悪霊追い出しがサタンの力によるなら、ユダヤ人の祈祷師はどうなるのか。

  ②ユダヤ人の中には、悪霊追い出しの祈祷師たちがいた。

  ③ユダヤ人の祈祷師の背後にサタンがいると言うなら、大変な反発を食うだろう。

  ④パリサイ人たちは、二重基準を採用していることになる。

    *イエスの場合は、サタンの力を利用している。

    *ユダヤ人の場合は、神の力を利用している。

3.20節

Luk 11:20
しかし、わたしが神の指によって悪霊どもを追い出しているのなら、もう神の国はあなたがたのところに来ているのです。

(1)イエスの論理(3)

  ①イエスは、神の指によって悪霊どもを追い出している。

  ②出8:19

Exo 8:19
呪法師たちはファラオに「これは神の指です」と言った。しかし、ファラオの心は頑なになり、彼らの言うことを聞き入れなかった。【主】が言われたとおりであった。

    *彼らは、奇跡の再現が不可能になると、「神の指」ということばを使った。

  ③イエスは、モーセの奇跡の場合と同じ力が働いていると主張した。

  ④この奇跡は、イエスにあって神の国が到来したことを示している。

  ⑤イエスは、メシアであり、神の国の王である。

4.21~22節

Luk 11:21
強い者が十分に武装して自分の屋敷を守っているときは、その財産は無事です。

Luk 11:22
しかし、もっと強い人が襲って来て彼に打ち勝つと、彼が頼みにしていた武具を奪い、分捕り品を分けます。

(1)イエスの論理(4)

  ①「強い者」とは、サタンのことである。

  ②「もっと強い人」とは、イエスのことである。

  ③サタンは武装して、自分の屋敷を守っているので、その財産は無事である。

    *財産とは、サタンが支配している囚われ人たちである。

  ④イエスはサタンの武具(悪霊ども)を奪い、囚われ人たちを解放される。

    *それが、悪霊の追い出しである。

5.23節

Luk 11:23
わたしに味方しない者はわたしに敵対し、わたしとともに集めない者は散らしているのです。

(1)イエスの論理(5)

  ①イエスに味方しない者は、イエスに敵対する者である。

  ②ここで農業における収穫と、牧畜における家畜集めのたとえが採用される。

    *イエスとともに集めない者は、散らしているのである。

  ③イエスに付くか、イエスに敵対するかのいずれかであって、中立はあり得ない。

Ⅳ.掃除された家(24~26節)

1.24~26節

Luk 11:24

汚れた霊は人から出て行くと、水のない地をさまよって休み場を探します。でも見つからず、『出て来た自分の家に帰ろう』と言います。

Luk 11:25
帰って見ると、家は掃除されてきちんと片付いています。

Luk 11:26

そこで出かけて行って、自分よりも悪い、七つのほかの霊を連れて来て、入り込んでそこに住みつきます。そうなると、その人の最後の状態は、初めよりも悪くなるのです。」

(1)イエスの論理(6)

  ①これは、イエスとともに集めない群衆への警告である。

  ②これは、イエスの議論のクライマックスである。

  ③悪霊を追い出しても、空白を別のもので埋めないと、より危険な状態に陥る。

  ④出て行った悪霊は、掃除された家に7つのほかの霊を連れて戻って来る。

  ⑤悪霊の追い出しを受けても、イエスを信じないなら、より危険な状態に陥る。

結論

1.悪魔の国の存在

(1)イエスは、悪魔や悪魔の国を現実に存在するものと見なされた。

(2)聖書は、「神の国と悪魔の国の葛藤」という視点で読み解くことができる。

(3)エペ2:1~3

Eph 2:1
さて、あなたがたは自分の背きと罪の中に死んでいた者であり、

Eph 2:2

かつては、それらの罪の中にあってこの世の流れに従い、空中の権威を持つ支配者、すなわち、不従順の子らの中に今も働いている霊に従って歩んでいました。

Eph 2:3

私たちもみな、不従順の子らの中にあって、かつては自分の肉の欲のままに生き、肉と心の望むことを行い、ほかの人たちと同じように、生まれながら御怒りを受けるべき子らでした。

(4)私たちは、恵みと信仰によって救われた。

(5)私たちは、神の国の市民とされた。

(6)エペ6:10~12

Eph 6:10
終わりに言います。主にあって、その大能の力によって強められなさい。

Eph 6:11
悪魔の策略に対して堅く立つことができるように、神のすべての武具を身に着けなさい。

Eph 6:12

私たちの格闘は血肉に対するものではなく、支配、力、この暗闇の世界の支配者たち、また天上にいるもろもろの悪霊に対するものです。

2.掃除された家

(1)このたとえは、イスラエルの民に適用されるものである。

(2)捕囚期前の時代、イスラエルの民は偶像礼拝という悪霊の支配下にあった。

(3)捕囚は、その悪霊をイスラエルの民から追い出した。

(4)捕囚期後の時代、イスラエルの民は偶像礼拝から解放された。

(5)家は綺麗になったが、彼らはその家にイエスを迎えようとしなかった。

(6)イスラエルの民の将来は、より悲惨なものとなる。

(7)患難期において、彼らは反キリストを神として受け入れるようになる。

(8)ヨハ5:43

Joh 5:43

わたしは、わたしの父の名によって来たのに、あなたがたはわたしを受け入れません。もしほかの人がその人自身の名で来れば、あなたがたはその人を受け入れます。

3.私たちへの適用

(1)善人になる(reformation)だけでは、不十分である。

(2)人生の変革(transformation)が必要である。

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