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ルカの福音書(11)2人の証人2:25~38
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2人の証人の証言について学ぶ。
ルカの福音書 11回
2人の証人
ルカ2:25~38
1.はじめに
(1)文脈の確認
①イエス誕生後の40日間の出来事
②8日目のイエスの割礼
③40日目のマリアの清め
④敬虔な人シメオンの預言
⑤女預言者アンナの伝道
(2)この箇所では、イエスがメシアであることを証言する2人の証人が登場する。
①シメオンは、「正しい、敬虔な人」であり、預言者である。
②アンナ(ハンナ)は、女預言者である。
③この2人はイエスのメシア性を証言し、その生涯がどうなるかを予告している。
2.アウトライン
(1)シメオンの預言(25~35節)
(2)アンナの伝道(36~38節)
3.結論
(1)福音のユダヤ性
(2)福音の普遍性
2人の証人の証言について学ぶ。
Ⅰ.シメオンの預言(25~35節)
1.25~26節
Luk 2:25
そのとき、エルサレムにシメオンという人がいた。この人は正しい、敬虔な人で、イスラエルが慰められるのを待ち望んでいた。また、聖霊が彼の上におられた。
Luk 2:26
そして、主のキリストを見るまでは決して死を見ることはないと、聖霊によって告げられていた。
(1)ヨハネとイエスの対比に注目しよう。
①ヨハネの場合は、割礼と命名の後、ザカリヤによる賛美と預言があった。
②イエスの場合は、シメオンによる賛美と預言がある。
(2)シメオンが誰なのかよりも、彼が果たしている役割の方が重要である。
①彼は、旧約的な意味での義人である。「正しい、敬虔な人」
*彼は、信仰によって義とされている。
②彼は、「イスラエルが慰められるのを待ち望んでいた」
*つまり、メシアの到来がもたらす慰めを待ち望んでいたのである。
*「エルサレムの贖い」(38節)を待ち望んでいたのと同じである。
*シメオンは、律法学者たちとは違っていた。
*彼は、イスラエルの残れる者の1人であった。
③「聖霊が彼の上におられた」
*これは、旧約的な意味での聖霊の支配を意味している。
*彼は、旧約時代の預言者の系譜に属する人物である。
(3)シメオンには、生きている間にメシアが誕生するという啓示が与えられていた。
①「主のキリスト」とは、「ヤハウェによって油注がれたお方」という意味である。
②あるいは、「主が遣わすキリスト」という意味である。
③彼は、神との親密な関係を維持することによって、神の声を聞いていた。
2.27~28節
Luk 2:27
シメオンが御霊に導かれて宮に入ると、律法の慣習を守るために、両親が幼子イエスを連れて入って来た。
Luk 2:28
シメオンは幼子を腕に抱き、神をほめたたえて言った。
(1)彼は、聖霊の導きによって宮(神殿)に入った。
①「神殿の境内」(新共同訳)は正確な訳であるが、意訳である。
②聖所ではなく、婦人の庭であろう。
(2)ちょうどその時、イエスの両親がイエスを連れて入って来た。
①宮に来た目的は、「律法の慣習を守るため」である。
②マリアの清めも目的のひとつであるが、関心はイエスに向けられている。
③この出会いの背後に、御霊の摂理的導きがあった。
④シメオンは、超自然的な啓示により、幼子がメシアであることを知った。
⑤シメオンは幼子を抱き、神に向かってほめ歌を歌った。
3.29~32節
Luk 2:29
「主よ。今こそあなたは、おことばどおり、/しもべを安らかに去らせてくださいます。
Luk 2:30
私の目があなたの御救いを見たからです。
Luk 2:31
あなたが万民の前に備えられた救いを。
Luk 2:32
異邦人を照らす啓示の光、/御民イスラエルの栄光を。」
(1)シメオンの歌は、「ヌンク・ディミティス」である。
①「今こそ、私を去らせてくださいます」という意味
②これは、ルカが紹介する5番目の賛歌である。
③「今こそ」に強調点がある。
④彼は、もう死んでもよいと感じた理由を述べる。
(2)「私の目があなたの御救いを見たからです」
①彼は歴史の目撃者となった。
②「御救いを見た」には、ヘブル語のことば遊びがある。
*イェシュア(イエス)とイェシュアー(救い)
(3)「あなたが万民の前に備えられた救いを」
①彼は、万民の前に備えられた救いを見た。
②イザ52:10
Isa 52:10
【主】はすべての国々の目の前に/聖なる御腕を現された。/地の果てのすべての者が/私たちの神の救いを見る。
(4)「異邦人を照らす啓示の光、御民イスラエルの栄光を」
①幼子は、異邦人に救いをもたらす。
*初臨のメシアの働き
*ルカの福音書の強調点は、異邦人の救いにある。
②イザ42:6
Isa 42:6
「わたし、【主】は、義をもってあなたを召し、/あなたの手を握る。/あなたを見守り、/あなたを民の契約として、国々の光とする。
③幼子は、御民イスラエルの栄光となる。
*再臨のメシアは、イスラエルの上に栄光を輝かせる。
4.33~35節
Luk 2:33
父と母は、幼子について語られる様々なことに驚いた。
Luk 2:34
シメオンは両親を祝福し、母マリアに言った。「ご覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人が倒れたり立ち上がったりするために定められ、また、人々の反対にあうしるしとして定められています。
Luk 2:35
あなた自身の心さえも、剣が刺し貫くことになります。それは多くの人の心のうちの思いが、あらわになるためです。」
(1)両親の驚きの理由
①シメオンを通して、天使の告知以上の内容が啓示された。
②イエスの働きは、イスラエルの民だけでなく全人類に祝福をもたらす。
③初対面のシメオンがこれほどまでに幼子の将来を預言することができた。
(2)シメオンは両親を祝福し、母マリアに預言的ことばを語った(4つの部分から成る)。
①イエスは、イスラエルの民を二分する。
*傲慢な者は倒れ、謙遜でメシアを信じる者は立ち上がる。
②イエスは罪を暴くので、この世の人々はイエスに反対する。
③マリアの心を剣が刺し貫くことになる。
*これは、十字架刑を目撃したときのマリアの悲しみの預言である。
④イエスにどういう態度を取るかによって、人の心の思いは明らかになる。
Ⅱ.アンナの伝道(36~38節)
1.36~37節
Luk 2:36
また、アシェル族のペヌエルの娘で、アンナという女預言者がいた。この人は非常に年をとっていた。処女の時代の後、七年間夫とともに暮らしたが、
Luk 2:37
やもめとなり、八十四歳になっていた。彼女は宮を離れず、断食と祈りをもって、夜も昼も神に仕えていた。
(1)アンナという女預言者
①女預言者ということばは、新約聖書ではここと黙示2:20にしか出てこない。
*「女預言者イゼベル」(黙2:20)
②彼女は、アシェル族のペヌエルの娘である。
*アシェル族という名が出ているのは、彼女のユダヤ性を強調するためであろう。
*失われた北の十部族論は成立しない。
③非常に年をとっていた(84歳)。
*結婚後7年間夫とともに暮らしたが、やもめとなった。
④宮を離れず、断食と祈りをもって、夜も昼も神に仕えていた。
*「夜も昼も」は、ヘブル的表現で、「いつも」という意味である。
*つまり、神殿での礼拝にいつも参加していたという意味である。
*彼女もまた、イスラエルの残れる者の1人である。
2.38節
Luk 2:38
ちょうどそのとき彼女も近寄って来て、神に感謝をささげ、エルサレムの贖いを待ち望んでいたすべての人に、この幼子のことを語った。
(1)アンナもまた聖霊に導かれて、その場に近寄って来た。
①イエスの一家とシメオンがいた場所である。
*小さな集まりであるが、ここから世界の歴史を変える動きが始まる。
②イエスを見て、彼女は神に感謝を献げた。
③彼女の預言は、省略されている。
④シメオンと同じような預言があったと思われる。
(2)彼女は、メシアの到来を待ち望んでいたすべての人に、幼子のことを言い広めた。
①「エルサレムの贖いを待ち望んでいたすべての人」
*エルサレムとは比ゆ的にイスラエルを指す。
②イエスはこの段階から、広く知られるようになった。
③シメオンとアンナという2人の証人が預言を語った。
*彼女の預言は、信じる人にも、信じない人にも、衝撃を与えた。
結論
1.福音のユダヤ性
(1)ルカの福音書1章と2章は、旧約時代から新約時代への移行の記録である。
(2)ルカの福音書の中の4つの歌(詩篇)
①エリサベツの歌(1:42~45)
②マリアの歌(1:46~55)
③ザカリヤの歌(1:68~79)
④シメオンの歌(2:28~32)
(3)これらの歌の特徴
①詩篇の形式を保持している。
②旧約聖書への言及が多い。
③神の約束の成就を歌っている。
④ユダヤ的内容から普遍的内容への移行が見られる。
(4)ユダヤ性から切り離されたキリスト教は、根無し草になる。
①メシアは割礼を受けたユダヤであった。
②メシアは律法の下にある者とされた。
③メシアは100%、モーセの律法に従われた。
④メシアは、律法の下にある者を救うために、ユダヤ人となられた。
2.福音の普遍性
(1)シメオンの預言の中にあるメシア預言の引用
①イザ42:6
Isa 42:6
「わたし、【主】は、義をもってあなたを召し、/あなたの手を握る。/あなたを見守り、/あなたを民の契約として、国々の光とする。
*「民の契約」とは、イスラエルの民と契約を結ぶ仲介者の意味。
*「国々の光」とは、異邦人のためのメシアという意味。
②イザ49:6
Isa 49:6
主は言われる。/「あなたがわたしのしもべであるのは、/ヤコブの諸部族を立たせ、/イスラエルのうちの残されている者たちを/帰らせるという、小さなことのためだけではない。/わたしはあなたを国々の光とし、/地の果てにまでわたしの救いを/もたらす者とする。」
*メシアは、イスラエルを救うだけではない。
*異邦人の救い、福音の普遍性が預言されている。
(2)福音は、エルサレムから地の果てまでも拡がっていく。
①神は、全人類を救うためにイスラエルを選ばれた。
②本来のキリスト教は、普遍的ユダヤ教である。
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