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メシアの生涯(3)—ヨハネによる序言(2)—
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ヨハネの福音書の序言を3回に分けて学ぶその2回目。
「ヨハネによる序言(2)」
ヨハ1:6~13
1.はじめに
(1)4つの福音書を並べ、時間順にメシアの生涯を追って行く。
①ルカによる献呈の辞、ヨハネによる序言(1)を終えた。
②今回は、ヨハネによる序言(2)である(ヨハ1:6~13)。
(2)文書の構造
①階段を一つずつ上るように、ゴールに向かっている。
②イエスの受肉がゴールである(14節)。
「ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。
父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに
満ちておられた」
2.アウトライン(6~13節)
(1)ヨハの登場(6~8節)
(2)光の登場(9~11節)
(3)神の子たちの誕生(12~13節)
3.メッセージのゴール
(1)ユダヤ人にとってのロゴス
(2)代理人(agent)の意味
(3)救いの方法
このメッセージは、ヨハネの序言からメシアについて学ぼうとするものである。
Ⅰ.ヨハネの登場(6~8節)
1.6節
「神から遣わされたヨハネという人が現れた」(新改訳)
「ここにひとりの人があって、神からつかわされていた。その名をヨハネと言った」(口語
訳)
「神から遣わされた一人の人がいた。その名はヨハネである」(新共同訳)
(1)ロゴスとヨハネの対比
①「初めに、ロゴスがおられた」(永遠の時間)
②「神から遣わされた一人の人がいた」(有限な時間)
(2)代理人(agent)としての役割
①神から派遣された。
②使命が与えられていた。
③旧約聖書の預言者たちと同じである。
④ヨハネには、ロゴスの代理人としての使命が与えられていた。
2.7~8節
「この人はあかしのために来た。光についてあかしするためであり、すべての人が彼によ
って信じるためである。彼は光ではなかった。ただ光についてあかしするために来たので
ある」
(1)ヨハネの使命は、証し人になることである。
①John the Baptist= John the Witness
②光について、証しすることが彼の使命である。
(2)証しの目的
①ユダヤ人も異邦人も、男性も女性も、彼の証しによって光を信じるためである。
②普遍的救いを教えているのではない。
(3)注意を喚起する言葉
①ヨハネは、光でなく、光について証しする人である。
②ヨハネを光だと誤解する人が出ないようにするため
Ⅱ.光の登場(9~11節)
1.9節
「すべての人を照らすそのまことの光が世に来ようとしていた」(新改訳)
「すべての人を照すまことの光があって、世にきた」(口語訳)
「その光は、まことの光で、世に来てすべての人を照らすのである」(新共同訳)
(1)「まことの光」
①英語で「true light」である。
②ヘブル語の「エメット」は、揺るがないこと、信頼できること、を指す。
③偽の光は信頼できないが、まことの光は信頼できる。
(2)すべての人が救われるわけではない。
①人は無知であり、霊的闇の中にいる。
②まことの光であるお方は、全人類に真理を啓示する。
2.10節
「この方はもとから世におられ、世はこの方によって造られたのに、世はこの方を知らな
かった」(新改訳)
「彼は世にいた。そして、世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた」(口
語訳)
「言は世にあった。世は言によって成ったが、世は言を認めなかった」(新共同訳)
(1)この方(ロゴス、まことの光)は、創造主でありながら、被造世界に来られた。
①この方は、被造世界の一部ではない。
②これは、ヨハネの福音書の中のクリスマス物語である。
(2)世という言葉の意味
①ギリシア語で「コスモス」である(神によって整えられた被造の世界)。
②ヨハネの使用法では、「人間が住む地上の世界」と「人間」の両方を指す。
③いずれの場合も、「人間」を抜きにしての「コスモス」ではない。
(3)悲劇は、「世はこの方を知らなかった」という点にある。
①知的認識のことではない。
②体験的知識のことである。
③特に、ヨハネの福音書では、命の交流、命の体験に強調点がある。
3.11節にさらなる悲劇がある。
「この方はご自分のくにに来られたのに、ご自分の民は受け入れなかった」(新改訳)
「彼は自分のところにきたのに、自分の民は彼を受けいれなかった」(口語訳)
「言は、自分の民のところへ来たが、民は受け入れなかった」(新共同訳)
(1)「ご自分のくに」とは、「His own things」である(中性代名詞)。
①アブラハムに約束された地、ユダヤ人の住む地、聖書の地である。
②メシアの誕生と公生涯を意識した言葉である。
(2)「ご自分の民」とは、「His own people」である(男性代名詞)。
①この方は、ユダヤ人のメシアとして来られた。
(3)ユダヤ人はメシアを受け入れなかった。
①聖書の中で最も悲しい聖句のひとつである。
②ユダヤ人は、メシアを拒否しただけでなく、メシアを信じる者も拒否した。
③ヨハネは、ユダヤ人の不信仰に驚いている。
④この状況は、今日でも続いている(イスラエルにおける反宣教団体の存在)。
⑤パウロは、ロマ書9~11章で、その不条理を論理的に解明している。
*ユダヤ人の不信仰
*異邦人の救い
*終末におけるユダヤ人の救い
Ⅲ.神の子たちの誕生(12~13節)
1.12節に希望がある。
「しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもと
される特権をお与えになった」(新改訳)
「しかし、彼を受けいれた者、すなわち、その名を信じた人々には、彼は神の子となる力
を与えたのである」(口語訳)
「しかし、言は、自分を受け入れた人、その名を信じる人々には神の子となる資格を与え
た」
(1)信仰による救いが教えられている。
①「その名」とは、メシアの実質である。
②「信じる」とは、知的理解ではなく、体験的決断(命の選択)である。
(2)「エクスーシア」というギリシア語
①特権、力、資格、すべて訳語としては間違っていない。
②ヨハネは、法的意味での救いではなく、命の体験について論じている。
③「力」が最もいいと思われる。
2.13節は、救いについての解説である。
「この人々は、血によってではなく、肉の欲求や人の意欲によってでもなく、ただ、神に
よって生まれたのである」
(1)この霊的誕生は、人間から出たものではない。
①3つの否定がある。
(2)神による(聖霊による)誕生である。
結論:
1 .ユダヤ人にとってのロゴス(アラム語のメムラ)
(1)メムラは、神とは別の存在であるが、神と同じお方でもある(1節)。
①三位一体の教理によって、初めて説明可能となる。
(2)メムラは、天地創造に参加されたお方である(3節)。
(3)メムラは、救いの代理人(agent)、仲介者である(12節)。
「しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子ど
もとされる特権をお与えになった」
2.代理人(agent)の意味
(1)ロゴス(メムラ)は、地上における神の代理人(agent)である。
(2)ヨハネは、ロゴスの代理人である。
①彼は光ではなく、証し人であることが強調されている(8節)。
②イエスが復活してから20年後でも、ヨハネの影響力はあった。
③使18:25
「この人は、主の道の教えを受け、霊に燃えて、イエスのことを正確に語り、ま
た教えていたが、ただヨハネのバプテスマしか知らなかった」
④使19:1~3
「アポロがコリントにいた間に、パウロは奥地を通ってエペソに来た。そして幾
人かの弟子に出会って、『信じたとき、聖霊を受けましたか』と尋ねると、彼ら
は、『いいえ、聖霊の与えられることは、聞きもしませんでした』と答えた。『で
は、どんなバプテスマを受けたのですか』と言うと、『ヨハネのバプテスマです』
と答えた」
(3)自分が光であるかのように振る舞うという誘惑
①説教者、音楽家、すべての奉仕者に、その危険性がある。
②教えを受ける側にも、同じ危険性がある。
③自分が光となろうとすることは、罪の本質である。
④そこから満足を得ている人は、必ず失望する。
3.救いの方法(12~13節)
「しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもと
される特権をお与えになった。この人々は、血によってではなく、肉の欲求や人の意欲に
よってでもなく、ただ、神によって生まれたのである」
(1)パウロが教える、「信仰と恵みによる救い」と同じである。
(2)信仰により神の子どもとされる。
①子どもは、「テクノン」(複数形はテクナ)である。
②別の言葉として、「ヒュイオス」がある。
③ヨハネはこの言葉を、イエス・キリストだけに適用している。
④異邦人の感覚では、人は誰でも「神の子」である。
⑤日本語の「神の子」の3種類の意味
*イエスは、「神の子」(ヒュイオス)である。
*クリスチャンは、「神の子」(テクノン)である。
*人類はすべて、神によって創造されたという意味で「神の子」である。
(3)3つの否定(人間が救いを得ようとする方法)
①血によってではなく
*先祖や両親の血によるのではない。
②肉の欲求によってではなく
*人間の努力や比較によるのではない。
③人の意欲によってではなく
*両親の願いによるのではない。
(4)福音の3つの要素と信仰
①メシア死
②メシアの埋葬
③メシアの復活
④メシアとの命の関係を強調する必要がある。
*信じるとは、知的承認ではなく、実存的信頼である。
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