60分でわかる新約聖書(26)ユダの手紙

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ユダの手紙から教訓を学ぶ。

60分でわかる新約聖書(26) 「ユダの手紙」

1.はじめに

  
(1)著者と宛先

    ①「イエス・キリストのしもべ、ヤコブの兄弟ユダ」と自己紹介をしている。

②ユダが誰であるかについては伝統的に2つの考え方がある。

*主イエスの弟のユダ

*12使徒の中のイスカリオテのユダでない方のユダ(別名タダイ)

③この手紙は極めてユダヤ的なものである。

  *比喩的表現がたくさん出て来る。

  *似たような言葉が3つ並ぶ。

  *旧約聖書への言及が多い。

      ④2ペテの内容との重複があるので、2ペテと同じ宛先だと判断される。

*彼らは、小アジアの各地に離散した信者たちである。

      ⑤2ペテは、64年~68年(殉教の死の年)の間に書かれたと思われる。

      ⑥ユダの手紙は、それ以降に執筆された。

      ⑦当時、グノーシス主義という異端が教会内に広がりつつあった。

(2)執筆目的

①この手紙が書かれた目的は、偽教師に対する注意を喚起すること。

②さらに、読者に自分たちが何者であるかを認識させること。

③パウロは、エペソの長老たちに警告していた(使20:29~30、1テモ4:1)。

④ペテロも、「偽教師が現われます」(2ペテ2:1)と預言していた。

  2.アウトライン

    
(1)あいさつ(1~2節)

    (2)偽教師の出現(3~16節)

    (3)信者の責務(17~23節)

    (4)頌栄(24~25節)

ユダの手紙から教訓を学ぶ。

Ⅰ.あいさつ(1~2節)

  
1.1~2節

Jud 1:1
イエス・キリストのしもべ、ヤコブの兄弟ユダから、父なる神にあって愛され、イエス・キリストによって守られている、召された方々へ。

Jud 1:2 あわれみと平安と愛が、あなたがたにますます豊かに与えられますように。

    
(1)ユダは、信者の立場を3つの角度から描写している。

①愛されている。私たちは父なる神から愛されているお互いである。

②召されている。私たちをこの世から召し出すのは、聖霊なる神の働きである。

③守られている。私たちはキリストにあって、キリストのために守られている。

Ⅱ.偽教師の出現(3~16節)

  
1.3~4節

Jud 1:3
愛する者たち。私たちがともにあずかっている救いについて、私はあなたがたに手紙を書こうと心から願っていましたが、 聖徒たちにひとたび伝えられた信仰のために戦う
よう、あなたがたに勧める手紙を書く必要が生じました。

Jud 1:4
それは、ある者たちが忍び込んできたからです。

彼らは不敬虔な者たちで、私たちの神の恵みを放縦に変え、唯一の支配者であり私たちの主であるイエス・キリストを否定しているので、以下のようなさばきにあうと昔から記されています。

    (1)ユダは、最初は救いに関する喜びの手紙を書こうとしていた。

①しかし、その前に別のテーマで手紙を書く必要に迫られた。

「聖徒たちにひとたび伝えられた信仰のために戦う」ということである。

③「使徒たちの教え」から逸脱する者は、偽教師である。

        *旧約のメシア預言は、イエスにあって成就した(ヘブ1:1~2)。

*キリストは、罪人を救うために人となり、十字架上で呪いの死を遂

げ、墓に葬られ、3日目に甦られた(1コリ15:3~8)。

    (2)偽教師の出現

      ①「それは、ある者たちが忍び込んできたからです」

        
*裏口からこっそりと入ってくるようなものである。

②ユダは彼らの特徴を3つ上げている。

*不敬虔な者たち。神の恵みを放縦な生活の口実に変える者たち

*イエス・キリストが神であり救い主であることを否定する人たち

*さばきにあうと昔から記されている人たち

  
2.5~7節

Jud 1:5
あなたがたはすべてのことをよく知っていますが、思い起こしてほしいのです。イエスは民をエジプトの地から救い出しましたが、その後、信じなかった者たちを滅ぼされました。

Jud 1:6
またイエスは、自分の領分を守らずに自分のいるべき所を捨てた御使いたちを、大いなる日のさばきのために、永遠の鎖につないで暗闇の下に閉じ込められました。

Jud 1:7
その御使いたちと同じように、ソドムやゴモラ、および周辺の町々も、淫行にふけって不自然な肉欲を追い求めたため、永遠の火の刑罰を受けて見せしめにされています。

    
(1)ユダは、旧約聖書の事例を3つ挙げている。

      ①荒野でのさばき

        *イスラエルの民は、荒野で一部の例外を除いて全員滅ぼされた。

*不信仰のゆえである(1コリ10:1~11、民14:26~38)。

②堕天使たちのさばき

*堕天使たちが、人間の姿を取って人の娘たちと結婚した(創6章)。

*創3:15に約束された「女の子孫」の到来を妨害するためである。

*堕天使たちは、今は暗闇の中に閉じ込められている。

      ③ソドムとゴモラのさばき

        *不自然な肉欲のために硫黄の火によって滅ぼされた(創19:1~28)。

*「不自然な肉欲」とは、同性愛のことである。

  
3.8~10節

Jud 1:8
それにもかかわらず、この人たちは同じように夢想にふけって、肉体を汚し、権威を認めず、栄光ある者たちをののしっています。

Jud 1:9
御使いのかしらミカエルは、モーセのからだについて悪魔と論じて言い争ったとき、ののしってさばきを宣言することはあえてせず、むしろ「主がおまえをとがめてくださるように」と言いました。

Jud 1:10
しかし、この人たちは自分が知りもしないことを悪く言い、わきまえのない動物のように、本能で知るような事柄によって滅びるのです。

    
(1)ユダは、偽教師たちの5つの行為を上げている。

①彼らは、肉体を汚している。

*預言的な夢を、性的放縦を許すための口実に用いる。

      ②彼らは、権威を軽んじている。

*使徒たちや長老たちの権威を拒み、それに反抗する。

      ③彼らは、栄光ある者たちをののしっている。

*御使いをののしることは、神を汚すことである。

*ユダは、旧約偽典「モーセの昇天」の内容を引用している。

*天使ミカエルは、悪魔をののしらなかった。

*ユダは、引用した箇所は正確に書かれていることを認めている。

      ④彼らは、自分には理解もできないことを悪く言っている。

*御霊を持っていないので、霊的真理を理解することができない。

      ⑤彼らは、動物のように本能だけで判断し、行動している。

  
4.11節

Jud 1:11 わざわいだ。彼らはカインの道を行き、利益のためにバラムの迷いに陥り、コラのように背いて滅びます。

    
(1)ユダは、旧約聖書の失敗者3人を例に出している。

①「カインの道を行き」とは、神に反抗する道を歩んでいるということである。

*カインは、弟のアベルを殺して最初の殺人者となった。

②「バラムの迷いに陥り」とは、利益のために仕えるということである。

*彼は、神の御心に背いてイスラエルの民を呪おうとした(民22~24章)。

      ③「コラのように背いて」とは、願いを達成するために権威に反抗すること。

*モーセとアロンに反抗し、家族とともに割れ目に落ちた(民16章)。

  
5.12~13節

Jud 1:12
この人たちは、あなたがたの愛餐のしみです。恐れる心もなく一緒に食事をしますが、自分を養っているだけです。彼らは、風に吹き流される雨無し雲、枯れに枯れて根こそぎにされた、実りなき秋の木、

Jud 1:13 自分の恥を泡立たせる海の荒波、真っ暗な闇が永遠に用意されている、さまよえる星です。

    
(1)ユダは、6つの象徴的表現によって偽教師の本質をあばき出している。

①愛餐のしみ

*「しみ」は隠れた小石である。「暗礁(かくれいわ)」(文語訳)

*知らないで食事をしていると、その小石によって歯がかけてしまう。

      ②偽の牧者

*彼らは羊を飼うことを忘れ、自分だけを養っている。

③水のない雲

*それは風が吹いてくると、消えてなくなる。

④根こそぎにされた秋の木

*春の収穫期にも、秋の収穫期にも実を結ぶことがない木

      ⑤自分の恥を泡立たせる海の荒波

*偽教師は落ち着きがなく、常に騒がしくしている。

      ⑥さまよえる星

*偽教師たちは、堕落した天使の道を歩んでいる。

  
6.14~15節

Jud 1:14 アダムから七代目のエノクも、彼らについてこう預言しました。「見よ、主は何万もの聖徒を引き連れて来られる。

Jud 1:15
すべての者にさばきを行い、不敬虔に生きる者たちのすべての不敬虔な行いと、不敬虔な罪人たちが主に逆らって語ったすべての暴言について、皆を罪に定めるためである。」

    (1)ユダは、旧約偽典の『エノク書』から引用している。

      ①エノクの預言が記されているその箇所だけは正しいと認めた。

②エノクの預言の内容は、メシアの再臨に関するものである。

③偽教師は、キリスト再臨の時に罪に定められる。

  
7.16節

Jud 1:16
彼らは、ぶつぶつ不満を並べる者たちで、自らの欲望のままに生きています。その口は大げさなことを語り、利益のために人にへつらいます。

    
(1)さらにユダは、偽教師の実態を3つ描写している。

①彼らは、荒野の民のように、つぶやき、不平を鳴らす者たちである。

②彼らは、自分の欲望を神として歩んでいる者たちである。

③彼らは、大きなことを言ったり、へつらったりしながら、自分の益になるこ

とだけを考えて生きている者たちである。

Ⅲ.信者の責務(17~23節)

  
1.17~19節

Jud 1:17 愛する者たち。あなたがたは、私たちの主イエス・キリストの使徒たちが前もって語ったことばを思い起こしなさい。

Jud 1:18 彼らはあなたがたにこう言いました。「終わりの時には、嘲る者たちが現れて、自分の不敬虔な欲望のままにふるまう。」

Jud 1:19 この人たちは、分裂を引き起こす、生まれつきのままの人間で、御霊を持っていません。

    
(1)思い起こす

      ①偽教師や嘲る者たちの出現は、あらかじめ警告されていたことである。

②2ペテ2章は偽教師を扱い、3章はあざける者どもを扱っている。

*あざける者どもとは、自分の欲望に従って生きる者たちである。

*彼らは、キリストの再臨の教理をあざけった。

③パウロも同じような警告を発している(使20:29、2テモ3:1~5)。

(2)ユダは彼らの性質を3つ上げている。

①彼らは、キリストの教会の中に分裂を起こす。

②彼らは生まれつきのままの人間である。

③彼らは、御霊を持っていない。

(3)偽教師やあざける者と戦うための武器は「啓示されたみことば」。

①つまり、旧約聖書と新約聖書である。

②それを常に思い出す必要がある。

  
2.20~21節

Jud 1:20
しかし、愛する者たち。あなたがたは自分たちの最も聖なる信仰の上に、自分自身を築き上げなさい。聖霊によって祈りなさい。

Jud 1:21 神の愛のうちに自分自身を保ち、永遠のいのちに導く、私たちの主イエス・キリストのあわれみを待ち望みなさい。

    
(1)「最も聖なる信仰」とは、使徒たちの教えを信じる信仰である。

      ①その信仰の上に、霊的成長を目指して自分自身を築き上げる。

②使徒たちの教えは、新約聖書の中に記録されている。

    (2)三位一体の神との関係

      ①聖霊によって祈る。

*聖霊の働きは、私たちに聖書を理解させることである。

      ②神の愛のうちに自分自身を保つ。

*父なる神の愛の内に留まるように、常に注意を払う。

      ③主イエス・キリストのあわれみを待ち望む。

*地上に患難時代が来る直前に、教会は空中に引き上げられる。

*携挙は、主イエス・キリストのあわれみによって起こることである。

  
3.22~23節

Jud 1:22 ある人々が疑いを抱くなら、その人たちをあわれみなさい。

Jud 1:23
ほかの人たちは、火の中からつかみ出して救いなさい。また、ほかの人たちは、肉によって汚された下着さえ忌み嫌い、神を恐れつつあわれみなさい。

    
(1)3種類の兄弟たちへの奉仕

      ①疑いを抱いている人々

*正当な疑問を抱き、真実に答えを求めている人々

*正しい教理を教え、信仰の成長に役立つような助言をすべきである。

      ②偽教師の影響を受け、誤った道に進みつつある人々

*「火の中からつかみ出して救いなさい」

*ここでの「救い」とは、誤った教理からの救いである。

      ③2番目よりも程度が進んだ人々

*偽教師の影響を受けて、自ら異端的な教えを言い広めている。

*自分自身も、彼らの影響を受ける可能性がある。

*キリストによって着せられた義の衣に汚れが付く恐れがある。

*「肉によって汚された下着さえ忌み嫌い」とは、比ゆ的言葉である。

*なんでもない会話(下着)さえも、注意する必要がある。

Ⅳ.頌栄(24~25節)

  
1.24~25節

Jud 1:24
あなたがたを、つまずかないように守ることができ、傷のない者として、大きな喜びとともに栄光の御前に立たせることができる方、

Jud 1:25
私たちの救い主である唯一の神に、私たちの主イエス・キリストを通して、栄光、威厳、支配、権威が、永遠の昔も今も、世々限りなくありますように。アーメン。

    (1)ユダは、神に可能な2つのことを上げている。

      ①神は、私たちがつまずかないように守ることのできるお方である。

*「守る」というのは軍隊用語である。

      ②神は、私たちを栄光の御前に立たせてくださるお方である。

*私たちは、完璧な姿で主の栄光の前に立つようになる。

    (2)ユダは、神の8つの性質を上げている。

      ①神は唯一のお方である。

*これは、多神教への回答である。

②この方は、唯一の救い主である。

*偽教師たちは、キリストの神性もメシア性も否定していた。

③救いはキリストを通して与えられる。

④神は栄光に富んだお方である。

⑤神は尊厳に満ちたお方である。

⑥神は支配する力を持ったお方である。

  *神の許しがなければ何一つ起こることはない。

⑦神は権威を持ったお方である。

*ご自信の計画を、必ず成就することができる。

⑧神は永遠に存在しているお方である。

(3)私たちが信じる神は、かくも偉大なお方である。

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