60分でわかる新約聖書(25)ヨハネの手紙第三

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ヨハネの手紙第三から教訓を学ぶ。

60分でわかる新約聖書(25) 「ヨハネの手紙第三」

1.はじめに

  (1)3ヨハの位置づけ

    ①ガイオという人物に宛てられた個人的手紙である。

    ②新約聖書の中では、個人的手紙は2つだけである。

*ピレモンへの手紙(著者パウロ)

*ヨハネの手紙第三(著者ヨハネ)

      ③テモテへの手紙第一と第二、テトスへの手紙

        *この3つは、牧会書簡と呼ばれる。

        *教会全体で朗読されたと思われる。

      ④ヨハネの手紙第三は、初期の信者たちの交流について情報を与えてくれる。

        *内容は、極めて霊的なものである。

    ⑤著作年代に関する議論

*1ヨハや2ヨハと同じ議論が可能である。

*エルサレム崩壊の前(60年代)に、エルサレムで書かれた。

    (2)著者

      ①ヨハネの手紙第一、第二、第三は、伝統的に使徒ヨハネのものとされている。

②1ヨハには、著者名も宛名も記されていない。

③2ヨハと3ヨハでは、「長老」という呼称が出て来る。

*「長老」としてその存在が知られていた人物は、使徒ヨハネだけである。

      ④書簡のスタイルは、1ヨハや2ヨハと同じである。

    (3)執筆の背景と目的

      ①ヨハネは、ガイオが所属する教会の霊的状態について心配している。

      ②恐らく、アジアのどこかにあった教会であろう。

③ひとりの人物が権力を握り、教会を支配している。

      ④3人の名前が出て来る。

        *ガイオ(信頼できる指導者)

        *ディオテレペス(支配的指導者)

        *デメテリオ(信頼できる巡回教師)

  2.アウトライン

    (1)あいさつ(1~4節)

    (2)本文

①ガイオ(5~8節)

      ②ディオテレペス(9~11節)

      ③デメテリオ(12節)

    (3)結語(13~15節)

ヨハネの手紙第三から教訓を学ぶ。

Ⅰ.あいさつ(1~4節)

1.1節

3Jn 1:1 長老から、愛するガイオへ。私はあなたを本当に愛しています。

    
(1)「長老から」

      ①著者は、ヨハネである。

    (2)「愛するガイオへ。私はあなたを本当に愛しています」

      ①受取人は、ガイオである。

      ②これは、ガイオに対する愛に溢れた手紙である。

      ③新約聖書の書簡にある通常の挨拶とは異なる。

        *恵みと平安という言葉がない。

        *結語(15節)は、「平安があなたにありますように」となっている。

      ④「愛する者よ」という呼びかけが、3度も出てくる(2節、5節、11節)。

      ⑤ヨハネがガイオに示しているのは、クリスチャンの愛である。

      ⑥ガイオもまた、そのような愛を巡回教師に示している。

  2.2節

3Jn 1:2 愛する者よ。あなたのたましいが幸いを得ているように、あなたがすべての点で幸いを得、また健康であるように祈ります。

    
(1)「あなたのたましいが幸いを得ているように、」

①ヨハネは、ガイオが霊的に祝福されていると確信している。

    (2)「あなたがすべての点で幸いを得、また健康であるように祈ります」

      ①ヨハネは、肉体の健康を含めた地上的な祝福も大切だと認識している。

      ②聖書的人間観では、霊肉は不可分の関係にある。

      ③ヨハネは、地上的な祝福の重要性を主イエスから学んだのであろう。

      ④ヨハネの福音書には、人々の最善を願う主イエスの姿が描かれている。

      ⑤私たちも、お互いのためにヨハネのこの祈りを献げようではないか。

3.3~4節

3Jn 1:3
兄弟たちがやって来ては、あなたが真理に歩んでいることを証ししてくれるので、
私は大いに喜んでいます。実際、あなたは真理のうちに歩んでいます。

3Jn 1:4 私にとって、自分の子どもたちが真理のうちに歩んでいることを聞くこと以上の大きな喜びはありません。

    
(1)「兄弟たちがやって来ては、」

①兄弟たちとは、ガイオのもてなしを受けた巡回教師たちであろう。

②彼らは、ガイオが真理に歩んでいることをヨハネに向かって証言している。

③真理に歩むとは、正しい教理に留まり、愛を実践することである。

④ヨハネにとっては、真理と愛は不可分の関係にある。

⑤真理は、愛を行う際の土台である。

    (2)ヨハネは、ガイオが真理に歩んでいることを大いに喜んでいる。

      ①2ヨハ1:4

2Jn 1:4 御父から私たちが受けた命令のとおりに、真理のうちを歩んでいる人たちが、あなたの子どもたちの中にいるのを知って、私は大いに喜んでいます。

      ②ガイオは、ヨハネから見て「自分の子どもたち」のひとりである。

        *ヨハネがガイオを救いに導いたのであろう。

        *あるいは、霊的権威を持つ者として書いているだけかもしれない。

      ③パウロも、同じ言葉を使っている(1コリ4:14)。

1Co 4:14 私がこれらのことを書くのは、あなたがたに恥ずかしい思いをさせるためではなく、私の愛する子どもとして諭すためです。

Ⅱ.本文

1.ガイオ(5~8節)

1.5節

3Jn 1:5 愛する者よ。あなたは、兄弟たちのための、それもよそから来た人たちのための働きを忠実に行っています。

    
(1)巡回教師たちを受け入れることが、真理に歩む信者の愛の行為である。

      ①前の手紙では、偽教師は拒否すべきだと教えられていた(2ヨハ1:10~11)。

2Jn 1:10 あなたがたのところに来る人で、この教えを携えていない者は、家に受け入れてはいけません。あいさつのことばをかけてもいけません。

2Jn 1:11 そういう人にあいさつすれば、その悪い行いをともにすることになります。

      ②真の教師を受け入れることは、信者の責務である。

    (2)ガイオは、忠実に巡回教師たちを受け入れ、もてなしていた。

      ①ガイオは真理に歩み、信者の愛を実践していた。

      ②ヨハネとガイオは、同じ愛を共有していた。

      ③それは、キリストから学んだ愛である。

2.6~7節

3Jn 1:6
彼らは教会の集まりで、あなたの愛について証ししました。あなたが彼らを、神にふさわしい仕方で送り出してくれるなら、それは立派な行いです。

3Jn 1:7 彼らは御名のために、異邦人からは何も受けずに出て行ったのです。

    
(1)ガイオのもてなしを受けた者たちが、その体験を教会の集まりで証しした。

      ①この書簡は、エルサレム崩壊の前(60年代)に書かれたと考えられる。

      ②「教会の集まり」とは、エルサレム教会であろう。

      ③今ヨハネは、エルサレム教会で奉仕をしている。

      ④ガイオは、この教会に自分が知られていることを知って、喜んだはずである。

    (2)ヨハネは、愛の実践を継続して行うようにガイオを励ましている。

      ①「神にふさわしい仕方で送り出してくれるなら、」

②滞在中だけでなく、旅立つ際には必要なものを十分に与えるということ。

      ③神から無代価で恵みを受けたので、無代価で恵みを分かち合うべきである。

    (3)「彼らは御名のために、異邦人からは何も受けずに出て行ったのです」

      ①「御名のために」とは、イエス・キリストのためにということである。

      ②ピリ2:9~11

Php 2:9 それゆえ神は、この方を高く上げて、/すべての名にまさる名を与えられました。

Php 2:10 それは、イエスの名によって、/天にあるもの、地にあるもの、/地の下にあるもののすべてが膝をかがめ、

Php 2:11 すべての舌が/「イエス・キリストは主です」と告白して、/父なる神に栄光を帰するためです。

      ③主イエスの代理人として出て行くのは、大いなる特権である。

      ④御名のために苦しむことさえも、特権である(使5:41)。

      ⑤御名のために奉仕する人は、不信者から支援を受けるべきではない。

        *不信者に誤解を与える可能性がある。

3.8節

3Jn 1:8 私たちはこのような人々を受け入れるべきです。そうすれば、私たちは真理のために働く同労者となれます。

    
(1)巡回教師を支援するのは、信者の責務である。

      ①この愛の行為を行うなら、「真理のために働く同労者」となれる。

      ②今も伝道者や伝道団体を支援する人は、「真理のために働く同労者」である。

  2.ディオテレペス(9~11節)

1.9節

3Jn 1:9 私は教会に少しばかり書き送りましたが、彼らの中でかしらになりたがっているディオテレペスが、私たちを受け入れません。

    
(1)「私は教会に少しばかり書き送りましたが、」

①この教会は、ガイオが所属している教会である。

      ②この教会には、ガイオのような指導者ばかりがいたわけではない。

      ③ディオテレペスは、問題のある指導者である。

      ④ヨハネは、この教会にすでに手紙を書き送った(今は失われている)。

      ⑤ディオテレペスが妨害したのか、それが教会に知らされることはなかった。

    (2)ディオテレペスの問題点

      ①彼のゴールは、真理に歩み、愛を実践することではない。

      ②彼は、教会の中でナンバーワンになりたがっている。

      ③今も、教会での地位や役割を、自分の栄光のために利用する人がいる。

      ④ディオテレペスは真理に立っていないので、ヨハネの教えと対立する。

      ⑤ディオテレペスは、巡回教師たちを受け入れない。

      ⑥それは、彼らを推薦するヨハネを受け入れないのと同じことである。

2.10節

3Jn 1:10
ですから、私が行ったなら、彼のしている行為を指摘するつもりです。彼は意地悪なことばで私たちをののしっています。それでも満足せず、兄弟たちを受け入れないばかりか、受け入れたいと思う人たちの邪魔をし、教会から追い出しています。

    
(1)ヨハネは、教会を訪問し、ディオテレペスの問題に対処するつもりでいる。

      ①単にその行為を指摘するだけでなく、厳格に対処するということ。

      ②これは、ガイオに対する励ましの言葉でもある。

    (2)ディオテレペスは、3つの罪を犯している。

      ①意地悪なことばで、真理に歩む人たちをののしっている。

        *これは、偽りの告発である。

      ②意地悪な言葉でののしるだけでなく、語った内容を実行している。

        *巡回教師受け入れたいと思う人たちの邪魔をしている。

      ③巡回教師たちを受け入れる人たちを、教会から追い出している。

*ディオテレペスは、自分に与えられている権威を悪用している。

*ガイオは、ディオテレペスに対抗して愛を実践している。

3.11節

3Jn 1:11
愛する者よ。悪を見習わないで、善を見習いなさい。善を行う者は神から出た者であり、悪を行う者は神を見たことがない者です。

    
(1)ヨハネは、ガイオに対する励ましの言葉を語る。

      ①ディオテレペスが行っていることの真似をしてはならない。

      ②むしろ、善を見習うべきである。

    (2)信者の行為は、神との関係の反映である。

      ①善を行う者は、神と親密な関係にある。

      ②悪を行う者は、神を知らない者である。

      ③1ヨハ3:6

1Jn 3:6 キリストにとどまる者はだれも、罪を犯しません。罪を犯す者はだれも、キリストを見たこともなく、知ってもいません。

      ④ヨハネは、ディオテレペスの救いを疑っているのではない。

      ⑤彼の行為は、霊的な盲目状態を明らかにしていると言っているのである。

  3.デメテリオ(12節)

1.12節

3Jn 1:12
デメテリオについては、すべての人たちが、また真理そのものが証ししています。私たちも証しします。私たちの証しが真実であることは、あなたも知っています。

    
(1)ガイオに対して、デメテリオを受け入れるように勧めている。

      ①このデメテリオは、エペソの銀細工人のデメテリオではない(使19:24)。

②デメテリオを受け入れることは、善を見習うことである。

    (2)デメテリオが真理に歩んでいることは、3つの証拠が示している(申19:15)。

      ①彼を知っているすべての信者が、彼を高く評価している。

      ②真理そのものが証ししている。

        *これは、真理の擬人化である。

        *デメテリオの行為は、真理の実践である。

      ③ヨハネが個人的に証言する。

        *ヨハネの証言は、真実である。

    (3)以上の理由で、他の巡回教師と同様にデメテリオを受け入れるべきである。

Ⅲ.結語(13~15節)

1.13~14節

3Jn 1:13 あなたに書き送るべきことがたくさんありますが、墨と筆で書きたくありません。

3Jn 1:14 近いうちにあなたに会いたいと思います。そうしたら、直接話し合いましょう。

    
(1)ヨハネには、他にも書きたいことがたくさんあった。

      ①しかし彼は、手紙での交流よりも、直接訪問することを願った。

      ②そうすれば、面と向かって話し合うことができる。

  2.15節

3Jn 1:15
平安があなたにありますように。友人たちが、あなたによろしくと言っています。そちらの友人たち一人ひとりによろしく伝えてください。

    
(1)最後に、「平安」という言葉が出て来る。

    (2)「友人たち」という言葉が2度出てくる。

      ①ヨハネとともにいる友人たち

      ②そちらの友人たち

      ③普遍的教会とは、友人たちのネットワークである。

      ④同じ真理と信仰を持つなら、初対面の人でも友人である。

      ⑤真理に立って愛を実践することが、クリスチャン生活の神髄である。

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