60分でわかる新約聖書(24)ヨハネの手紙第二

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ヨハネの手紙第二から教訓を学ぶ。

60分でわかる新約聖書(24) 「ヨハネの手紙第二」

1.はじめに

  (1)2ヨハの位置づけ

    ①短い書簡である。

  *通常サイズのパピルス1枚で足りる。

    ②著作年代に関する議論

*1ヨハと同じ議論が可能である。

*エルサレム崩壊の前(60年代)に、エルサレムで書かれた。

    (2)著者

      ①ヨハネの手紙第一、第二、第三は、伝統的に使徒ヨハネのものとされている。

②1ヨハには、著者名も宛名も記されていない。

③2ヨハと3ヨハでは、「長老」という呼称が出て来る。

*「長老」としてその存在が知られていた人物は、使徒ヨハネだけである。

      ④ヨハネの著作

        *福音書

          ・義認が中心テーマである。

          ・過去の歴史が描かれている。

          ・キリストは私たちの罪のために死なれた。

        *3つの書簡

          ・聖化が中心テーマである。

          ・信者の現在の体験が描かれている。

          ・キリストは私たちの内に住んでおられる。

        *黙示録

          ・栄化が中心テーマである。

          ・信者の将来の希望が描かれている。

          ・キリストは私たちのために再臨される。

    (3)執筆の背景と目的

      ①教会の中にグノーシス主義と呼ばれる異端的な教えが蔓延しつつあった。

②グノーシス主義は、霊を善とし、肉や物質を悪と見なす霊肉二元論である。

③その論を推し進めていけば、イエスの受肉の否定につながる。

④肉をどのように用いても霊に対する影響はないという教えにつながる。

⑤ヨハネは、異端に対して警告を発し、真理のために戦うように勧めている。

  2.アウトライン

    (1)あいさつ(1~3節)

    (2)真理の実践(4~6節)

    (3)真理のための戦い(7~11節)

    (4)結語(12~13節)

ヨハネの手紙第二から教訓を学ぶ。

Ⅰ.あいさつ(1~3節)

  1.1~2節

2Jn 1:1
長老から、選ばれた婦人とその子どもたちへ。私はあなたがたを本当に愛しています。私だけでなく、真理を知っている人々はみな、愛しています。

2Jn 1:2 真理は私たちのうちにとどまり、いつまでも私たちとともにあるからです。

    (1)著者は、「長老」である。

      ①この名前で知られていたのは、使徒ヨハネだけである。

(2)宛先は、「選ばれた婦人とその子どもたち」である。

①この言葉は、擬人法で、ある特定の教会を指していると考えることができる。

②婦人とは教会、その子どもたちとは、信者のことである。

③この教会は選ばれた教会であり、よく知られていた教会である。

(3)「私はあなたがたを本当に愛しています」

①「愛の使徒」「真理の使徒」と呼ばれたヨハネの特徴がよく表われている。

「真理を知っている人々はみな、愛しています」

③2つの言葉(愛と真理)は、この手紙のキーワードである。

    (4)この教会が愛されている理由は、真理に立っているからである。

      ①クリスチャンの愛は、単に感情的なものではない。

      ②真理が私たちのうちにとどまっているなら、私たちの間には愛が育つ。

      ③真理は愛が育つための土台である。

      ④それゆえ、真理を堅く守る必要がある。

  2.3節

2Jn 1:3
父なる神と、その御父の子イエス・キリストから、恵みとあわれみと平安が、真理と愛のうちに、私たちとともにありますように。

(1)パウロやペテロの書簡では、通常「恵みと平安」が用いられる。

      ①ヨハネは、「真理と愛のうちに」をつけ加えている。

      ②再度言うが、真理は愛が育つための土台である。

      ③真理と愛のうちに留まることが条件となって、父なる神とイエス・キリスト

から恵みとあわれみと平安が与えられる。

    (2)「父なる神と、その御父の子イエス・キリストから、」

      ①イエス・キリストの神性を表現している。

Ⅱ.真理の実践(4~6節)

1.4節

2Jn 1:4
御父から私たちが受けた命令のとおりに、真理のうちを歩んでいる人たちが、あなたの子どもたちの中にいるのを知って、私は大いに喜んでいます。

    (1)「真理のうちを歩んでいる人たちが、あなたがたの子どもたちの中にいるの

を知って」

      ①ヨハネは、この教会のメンバーとどこかで出会っている。

      ②ヨハネは、「私は大いに喜んでいます」と自らの感情を吐露している。

      ③喜びの理由は、真理のうちを歩んでいる人たちがたくさんいるからである。

④真理と愛は、相関関係にある。

    (2)啓示された命令に従うことが、真理のうちを歩むことである。

      ①その命令は、御父から使徒たちに啓示された。

      ②使徒たちは、それを信者に伝えた。

  2.5節

2Jn 1:5
そこで婦人よ、今あなたにお願いします。それは、新しい命令としてあなたに書くのではなく、私たちが初めから持っていた命令です。私たちは互いに愛し合いましょう。

(1)「婦人よ」という呼びかけ

      ①この教会は、擬人法で「婦人」と呼ばれている。

      ②ヨハネの親密な感情が表現されている。

    (2)ヨハネの命令

      ①新しい命令ではない。

      ②初めから持っていた命令である。

      ③「私たちは互いに愛し合いましょう」

  3.6節

2Jn 1:6
私たちが御父の命令にしたがって歩むこと、それが愛です。あなたがたが初めから聞いているように、愛のうちを歩むこと、それが命令です。

(1)互いに愛し合うとは、どういうことか。

①ヨハネは、循環論理を使って、クリスチャン生活のあるべき姿を説明する。

①御父の命令にしたがって歩むことが、愛である。

②愛のうちを歩むことが、命令である。

③神の命令に従った愛でなければ、兄弟姉妹を祝福することはできない。

④神の御心から外れた愛は、祝福をもたらすことができない。

(2)単純さのゆえにこの教えを軽視してはならない。

①愛こそクリスチャン生活のゴールである。

②愛は、具体的な形をとって表現されなければならない。

③それが、神の命令に従うということである。

④愛を忘れていたなら、今、初めの愛に立ち返ろうではないか。

Ⅲ.真理のための戦い(7~11節)

1.7節

2Jn 1:7
こう命じるのは、人を惑わす者たち、イエス・キリストが人となって来られたことを告白しない者たちが、大勢世に出て来たからです。こういう者は惑わす者であり、反キリストです。

(1)1ヨハ2:18

1Jn 2:18
幼子たち、今は終わりの時です。反キリストが来るとあなたがたが聞いていたとおり、今や多くの反キリストが現れています。それによって、今が終わりの時であると分かります。

    (2)ヨハネは、異端の教えに注意するようにとの警告を発している。

①当時の教会を脅かしていた異端は、グノーシス主義と呼ばれるものである。

②その特徴は、イエスの受肉を否定することにある。

③仮現論(ドケティズム)的キリスト論

*神の子は人間になったのではなく、仮の姿を取ったにすぎない。

④ケリントス主義的キリスト論

*神の子は、受洗と受難との間だけ人の形を取ったとする。

「イエス・キリストが人となって来られたことを告白しない者たち」

*彼らは、グノーシス主義者である。

      ⑥ヨハネは彼らを、「反キリスト」と呼んでいる。

        *これは、黙示録に登場する反キリストではない。

        *反キリストの特徴を備えた者たちである。

      ⑦使徒時代に異端がはびこったとするなら、今の時代はもっとそうである。

  2.8節

2Jn 1:8 気をつけて、私たちが労して得たものを失わないように、むしろ豊かな報いを受けられるようにしなさい。

    (1)偽のリーダーに従うことのないように、注意する必要がある。

      ①偽のリーダーに従っても、救いを失うわけではない。

      ②失うのは、忠実なしもべに与えられる豊かな報いである。

      ③神から与えられる報いは、地上生涯を忠実に生きるための動機となる。

  3.9節

2Jn 1:9
だれでも、「先を行って」キリストの教えにとどまらない者は、神を持っていません。その教えにとどまる者こそ、御父も御子も持っています。

(1)「先を行って」

      ①かつて真理を聞き、それを受け入れた。

      ②しかし、偽教師の教えに影響され、真理から逸脱した。

      ③その人は、神を後に残して先を行く人である。

      ④その人は、真理というバウンダリーを超える人である。

      ⑤クリスチャンが真理から逸脱することは、現実にあり得る。

      ⑥その人は、救いを失うことはないが、報いは失う。

    (2)キリストの教えにとどまらない者は、神を持っていない。

      ①その人は、神なしで自分の道を進んでいる。

    (3)キリストの教えにとどまる者は、御父も御子も持っている。

      ①神がその人とともに歩まれる。

  3.10~11節

2Jn 1:10
あなたがたのところに来る人で、この教えを携えていない者は、家に受け入れてはいけません。あいさつのことばをかけてもいけません。

2Jn 1:11 そういう人にあいさつすれば、その悪い行いをともにすることになります。

(1)この時代の信者たちは、寛容という言葉とは無縁であった。

      ①キリストの教えにとどまる人は、異端に対して毅然とした態度を取る。

      ②異端との戦いは、それほど熾烈なものである。

    (2)当時のローマ世界では、巡回教師が家々を巡っていた。

      ①教会の霊的リーダーたちも、同じように旅をしていた。

      ②ヨハネは、異端の教えを持ち込む人を家に迎え入れてはならないと命じた。

③あいさつをすることも控えるべきであると教えた。

④あいさつをすれば、悪い行いに荷担することになる。

Ⅳ.結語(12~13節)

1.12節

2Jn 1:12
あなたがたにはたくさん書くべきことがありますが、紙と墨ではしたくありません。私たちの喜びが満ちあふれるために、あなたがたのところに行って、直接話したいと思います。

    (1)ヨハネは、近い内にその教会を訪問することを願っている。

      ①手紙ではなく、直接話したい。

      ②直接会えば、もっと多くのことを教えることができる。

        *その内容は、ヨハネの手紙第一に記されたものに近いのであろう。

      ③直接会って話ができれば、私たちの喜びは満ち溢れる。

  2.13節

2Jn 1:13 選ばれたあなたの姉妹の子どもたちが、あなたによろしくと言っています。

    (1)「あなたの姉妹の子どもたち」

      ①姉妹教会のメンバーたち

      ②この教会も、「選ばれた」教会である。

      ③姉妹教会のメンバーが、よろしくと言っている。

      ④教会の合同性が表現されている。

  3.まとめ

    (1)互いに愛し合うということが、クリスチャン生活のゴールである。

    (2)愛し合うためには、キリストの真理にとどまり続ける必要がある。

    (3)キリストの真理の「先を行く」人は、自分勝手に歩む人である。

    (4)その人は、救いを失うことはないが、報いは失う。

    (5)異端の教えを持ち込む人とは、絶交すべきである。

    (6)真理に関しては、妥協も寛容もあってはならない。

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