60分でわかる新約聖書(23)ヨハネの手紙第一

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ヨハネの手紙第一から教訓を学ぶ。

60分でわかる新約聖書(23) 「ヨハネの手紙第一」

1.はじめに

  (1)1ヨハの位置づけ

    ①簡単な言葉で、深い霊的真理が教えられている。

  *簡単に説明できないなら、本質を理解しているとは言えない。

    ②著作年代に関する議論

*エルサレム崩壊の前(60年代)に、エルサレムで書かれた。

*紀元1世紀の終わり頃(80~95年)に、書かれた。

    (2)著者

      ①ヨハネの手紙第一、第二、第三は、伝統的に使徒ヨハネのものとされている。

②1ヨハには、著者名も宛名も記されていない。

*恐らく、アジヤの諸教会宛てに送られた回覧書簡であろう。

③2ヨハと3ヨハでは、「長老」という呼称が出て来る。

*「長老」としてその存在が知られていた人物は、使徒ヨハネだけである。

      ④ヨハネは、福音書、3つの書簡、黙示録を書くように聖霊によって導かれた。

        *福音書

          ・救い(義認)が強調されている。

          ・過去の歴史が描かれている。

          ・キリストは私たちのために十字架上で死なれた。

        *3つの書簡

          ・聖化が強調されている。

          ・信者の現在の体験が描かれている。

          ・キリストは私たちの内に住んでおられる。

        *黙示録

          ・栄化が強調されている。

          ・信者の将来の希望が描かれている。

          ・キリストは私たちのために再臨される。

    (3)執筆の背景と目的

      ①教会の中にグノーシス主義と呼ばれる異端的な教えが蔓延しつつあった。

*「イエスがキリストであることを否定する者」(2:22)

*「反キリスト」(2:22、4:3)

*「偽預言者」(4:1)

②グノーシス主義は、霊を善とし、肉や物質を悪と見なす霊肉二元論である。

*その論を推し進めていけば、イエスの受肉の否定につながる。

*悪である肉をどのように用いても、霊に対する影響はない。

*これは、放縦な生活を容認する教えとなる。

      ③グノーシス主義によく似た異端:キリスト仮現論(ドケティズム)

*主唱者の名を取ってケリントス主義とも呼ばれていた。

*イエスが洗礼を受けた時にキリストが鳩の形をして彼の上に下り、十

字架上の死の前にキリストは彼から去った。

*苦しんだのはイエスという人物であって、キリストは受難とは無関係。

④ヨハネは、異端的な教えに対して警告を発し、真の信仰とは何かを説明した。

⑤ヨハネは、教理面と実践面の両面からこの書簡を書いている。

⑥3つのテーマが繰り返されている(ヘブル的文学手法)。

*光vs.闇

*愛vs.憎しみ

*真理vs.偽りの教え

      ⑦ヨハネは、5つの目的をもってヨハネの手紙第一を書いている。

  2.アウトライン

(1)交わりを持つようになるため(1:3)

    (2)喜びが満ち溢れるため(1:4)

    (3)罪を犯さないようになるため(2:1~2)

    (4)偽りの教えに勝つため(2:26~27)

    (5)永遠のいのちの確信を持つため(5:13)

ヨハネの手紙第一から教訓を学ぶ。

Ⅰ.交わりを持つようになるため(1:3)

  1.3節

1Jn 1:3
私たちが見たこと、聞いたことを、あなたがたにも伝えます。あなたがたも私たちと交わりを持つようになるためです。私たちの交わりとは、御父また御子イエス・キリストとの交わりです。

    (1)最初の2章のテーマは、「交わり」である。

        *「交わり」は「コイノニア」である。

      ①神の子としての身分は変わらない。

      ②神との交わりは、日々変化する。

      ③神との交わりの変化は、信者同志の交わりにも影響を与える。

    (2)「私たちが見たこと、聞いたことを、あなたがたにも伝えます」

      ①これは、グノーシス主義の否定である。

      ②「私たち」とは、使徒たちのことである。

      ③グノーシス主義者は、使徒たちとの交わりから離れて行った。

      ④使徒たちは、聖霊による新生を体験し、御父と御子との交わりに入った。

⑤同じ信仰で使徒たちとの交わりに入る者は、御父と御子との交わりに入る。

⑥使徒たちの死後、その教えを守ることが「使徒たちとの交わりに入ること」。

Ⅱ.喜びが満ち溢れるため(1:4)

  1.4節

1Jn 1:4 これらのことを書き送るのは、私たちの喜びが満ちあふれるためです。

    (1)古い写本の中には「あなたがたの喜び」となっているものがある。

①「私たちの喜び」:読者が御父と御子との交わりの中に導かれるなら、それ

が使徒たちの喜びとなるという意味である。

②「あなたがたの喜び」:真の喜びは御父と御子との交わりの結果与えられる

ものだという意味である。

③この聖句は、どちらの意味も含んでいるように思える。

(2)イエスをメシアと信じる人には、この世で味わえない喜びが与えられる。

①その喜びは、御父と御子との交わりに参加することによって与えられる。

②ヨハ15:11

Joh 15:11
わたしの喜びがあなたがたのうちにあり、あなたがたが喜びで満ちあふれるようになるために、わたしはこれらのことをあなたがたに話しました。

    (3)交わりを回復する方法

      ①1ヨハ1:7~9

1Jn 1:7
もし私たちが、神が光の中におられるように、光の中を歩んでいるなら、互いに交わりを持ち、御子イエスの血がすべての罪から私たちをきよめてくださいます。

1Jn 1:8 もし自分には罪がないと言うなら、私たちは自分自身を欺いており、私たちのうちに真理はありません。

1Jn 1:9 もし私たちが自分の罪を告白するなら、神は真実で正しい方ですから、その罪を赦し、私たちをすべての不義からきよめてくださいます。

Ⅲ.罪を犯さないようになるため(2:1~2)

  
1.1~2節

1Jn 2:1
私の子どもたち。私がこれらのことを書き送るのは、あなたがたが罪を犯さないようになるためです。しかし、もしだれかが罪を犯したなら、私たちには、御父の前でとりなしてくださる方、義なるイエス・キリストがおられます。

1Jn 2:2 この方こそ、私たちの罪のための、いや、私たちの罪だけでなく、世全体の罪のための宥めのささげ物です。

    (1)「これらのことを書き送る」

      ①父なる神は光である。

②神との交わりを持つ人は、光の中を歩み他の信者との交わりを持つ。

③神との交わりを維持するためには、日々の罪の告白が必要である。

    (2)「罪を犯さないようになるため」

      ①絶対に罪を犯さなくなるという意味ではない。

②習慣的な罪から解放されるということである。

③イエスを信じた時から、聖霊が私たちの心に宿ってくださる。

④聖霊は私たちの内面を変え、私たちを主の似姿に作り上げてくださる。

⑤しかし、だれでも、信者になってからも罪を犯す可能性を持っている。

⑥もし罪を犯した場合はどうなるのか。

*父なる神の前で弁護してくださる方がおられる。

*それゆえ、直ちにその罪を告白すればよい。

*その弁護士とは「義なるイエス・キリスト」である。

*キリストは律法の要求を満たし、罪人の身代わりとして死なれた。

*復活は、父なる神がその贖罪の死を受け入れたことを示している。

*今キリストは、私たちのために執りなしをしていてくださる。

    (3)ロマ8:34~35

Rom 8:34
だれが、私たちを罪ありとするのですか。死んでくださった方、いや、よみがえられた方であるキリスト・イエスが、神の右の座に着き、しかも私たちのために、とりなしていてくださるのです。

Rom 8:35 だれが、私たちをキリストの愛から引き離すのですか。苦難ですか、苦悩ですか、迫害ですか、飢えですか、裸ですか、危険ですか、剣ですか。

Ⅳ.偽りの教えに勝つため(2:26~27)

  
1.26~27節

1Jn 2:26 私はあなたがたを惑わす者たちについて、以上のことを書いてきました。

1Jn 2:27
しかし、あなたがたのうちには、御子から受けた注ぎの油がとどまっているので、だれかに教えてもらう必要はありません。その注ぎの油が、すべてについてあなたがたに教えてくれます。それは真理であって偽りではありませんから、あなたがたは教えられたとおり、御子のうちにとどまりなさい。

    (1)ヨハネは、狼から羊を守るために労している。

      ①使20:29

Act 20:29 私は知っています。私が去った後、狂暴な狼があなたがたの中に入り込んで来て、容赦なく群れを荒らし回ります。

      ②「以上のことを書いてきた」

        *信者は、父なる神とキリストとの交わりを持っている。

        *信者は、神の真理を知っている。

        *それゆえ、新しい教えに振り回されてはいけない。

        *初めから聞いたこと(福音のことば)を心に留めることが大切である。

*そうすれば、私たちは御子と御父のうちに留まるのである。

    (2)ヨハネは、再度聖霊の働きについて書いている。

①「御子から受けた注ぎの油がとどまっている」

②「だれからも教えを受ける必要がありません」

*全く教えてもらう必要がないという意味ではない。

*偽教師から教えてもらう必要がないという意味。

*あるいは、信仰の基本について教えてもらう必要がないという意味。

③キリストの福音は、私たちに永遠のいのちを与えるものである。

④初めから聞いた福音のことばにとどまり続けようではないか。

Ⅴ.永遠のいのちの確信を持つため(5:13)

  
1.13節

1Jn 5:13
神の御子の名を信じているあなたがたに、これらのことを書いたのは、永遠のいのちを持っていることを、あなたがたに分からせるためです。

    (1)ヨハネはその福音書でも、最後に執筆目的を記している。

①ヨハ20:31

Joh 20:31
これらのことが書かれたのは、イエスが神の子キリストであることを、あなたがたが信じるためであり、また信じて、イエスの名によっていのちを得るためである。

      ②ヨハネの福音書は、どうすれば永遠のいのちを得ることができるのかにつ

いて記している(イエスの御名によっていのちを得る)。

(2)1ヨハの執筆目的は、イエスを信じた者に永遠のいのちを確信させること。

      ①その方法は、神の命令を守ることである。

      ②それによって、私たちは神を知っているということが分かる。

③神の命令に対する従順こそ、キリストを知っており、キリストに属している

ことの明らかな証明である。

④もしキリストに従っていないなら、その人はキリストに属していないし、キ

リストを愛してもいない。

⑤「神を知っている」と言っているのは、グノーシス主義者たちである。

⑥彼らはそう主張しながら、神の命令を守っていない。

⑦神の命令を守っていることと、神を知っていることはイコールである。

⑧さらに、神を愛するとは、みことばを守ることである。これが真理である。

⑨律法的にならないで神の命令を守る方法は、一つしかない。

*愛で応答すること

*愛でみことばを実践すること

⑩みことばを守れば守るほど、神に対する愛と、神に関する知識が増えて来る。

⑪やがてその人は、キリストにある成人として立てるようになる。

⑫グノーシス主義者ではなく、神の命令を守る人こそ、真の「知識」を持つ

ようになる。

  結論

    (1)交わりを持つようになるため(1:3)

    (2)喜びが満ち溢れるため(1:4)

    (3)罪を犯さないようになるため(2:1~2)

    (4)偽りの教えに勝つため(2:26~27)

    (5)永遠のいのちの確信を持つため(5:13)

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