申命記(10)約束の地に入れないモーセ

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人間の懇願と神の拒否について学ぶ。

申命記10回
「約束の地に入れないモーセ」
申命記3:23~29

 

1.はじめに
(1)イスラエルの民は、正しい世界観と人生観を持つ必要があった。
①自分たちは、どこから来たのか。
②自分たちにカナンの地を与えると約束してくれたのは、誰か。
③カナンの地で生きる目的は何か。

 

(2)申命記のアウトライン(宗主権契約の形式)
①第1の説教:歴史の回顧(1:5~4:43)
②第2の説教:契約に基づく義務(4:44~26:19)
③第3の説教:祝福と呪いの宣言(27:1~29:1)
④第4の説教:契約条項のまとめ(29:2~30:20)

 

(3)3章のアウトライン
①バシャンの王オグに対する勝利(3:1~11)
②征服した土地の分割(3:12~22)
③約束の地に入れないモーセ(3:23~29)
*この箇所は、モーセの人生において最も悲しい場面である。

 

(4)カナンの地征服のための準備が始まった。
*征服した土地の分割
*カナンの地征服戦争への備え
*リーダーシップの移行

 

2.メッセージのアウトライン
(1)モーセの懇願(3:23~25)
(2)神の拒否(3:26)
(3)恵みの要素(3:27~29)

 

3.結論:新約聖書における「懇願」の例
(1)パウロの懇願
(2)イエスの懇願

 

人間の懇願と神の拒否について学ぶ
Ⅰ.モーセの懇願(3:23~25)
1.23節
私はそのとき、【主】に懇願して言った。
(1)懇願のタイミングはいつか。
①約束の地に入る直前である。
②エジプトを出てからの40年間の労苦が報われようとしている時である。

 

(2)懇願する人物は誰か。
①忠実な【主】のしもべモーセである。
②彼は、偉大な預言者である。
③彼は、神の栄光が現れることだけを願っている聖徒である。
④彼は、民の指導者である。
⑤彼は、律法の付与者である。
⑥彼は、120歳になっていた。

 

(3)懇願の理由は何か。
①モーセはメリバの水事件(岩を2度打った)で、カナン入国を禁じられた。
②民20:12
しかし、【主】はモーセとアロンに言われた。「あなたがたはわたしを信頼せず、イスラエルの子らの見ている前でわたしが聖であることを現さなかった。それゆえ、あなたがたはこの集会を、わたしが彼らに与えた地に導き入れることはできない。」
③これは、モーセにとっては大変辛いことであった。
④生涯かけて、民を約束の地に導こうとしてきたのに、自分はそこに入れない。

 

2.24節
「【神】、主よ。あなたは、あなたの偉大さとあなたの力強い御手を、このしもべに示し始められました。あなたのわざ、あなたの力あるわざのようなことができる神が、天あるいは地にいるでしょうか。
(1)「あなたの偉大さとあなたの力強い御手」
①これは、出エジプトのことではない。
②ヘシュボンの王シホンとバシャンの王オグに対する勝利のことである。

 

(2)「このしもべに示し始められました」
①モーセは、これらの戦いに参加し、勝利を目撃することができた。
②約束の地に入れないと言われた自分が、その前哨戦への参加を許された。
③このことの中に、【主】の御心の変化が見て取れるのではないか。
④そこで彼は、約束の地に入ることを許可してほしいと懇願し始める。

 

(3)「あなたの力あるわざのようなことができる神が、天あるいは地にいるでしょ
うか。」
①これは修辞的疑問文である。
②他の神々が存在するという意味ではない。
③【主】だけが偉大な、真の神であるという告白である。

 

3.25節
どうか私が渡って行って、ヨルダン川の向こう側にある良い地、あの良い山地、またレバノンを見られるようにしてください。」
(1)ヨルダン川の東の地は征服され、領土の分割も終えた。
①次に願うのは、ヨルダン川の西の地を征服することである。

 

(2)カナンの地は、全体が石灰石の山地である。
①そこは良い地である。
②そこは良い山地である。
③北の端にはレバノン山脈がある。

 

(3)申8:7~8にある約束の地の描写
あなたの神、【主】があなたを良い地に導き入れようとしておられるからである。そこは、谷間と山に湧き出る水の流れや、泉と深い淵のある地、
小麦、大麦、ぶどう、いちじく、ざくろのある地、オリーブ油と蜜のある地である。
①地形を見ると、谷間と山に湧き出る水の川があるのが分かる。
②泉と深い淵があるのが分かる。
③豊かな農業生産が約束されている地であることが分かる。
④乾燥した荒野とは、正反対の特徴を持った土地である。

 

Ⅱ.神の拒否(3:26)
1.26節
しかし【主】はあなたがたのゆえに私に激しく怒り、私の願いを聞き入れてくださらなかった。【主】は私に言われた。「もう十分だ。このことについて二度とわたしに語ってはならない。
(1)【主】は、モーセの懇願を断固としてはねのけた。
①「あなたがたのゆえに私に激しく怒り、」
②これは責任転嫁ではない。
③民のつぶやきが原因で、自分は罪を犯したという告白である。

 

(2)「もう十分だ。このことについて二度とわたしに語ってはならない」
①【主】とモーセの親密な関係が示唆されている。
②モーセが何度も同じ願いを繰り返していたことが示唆されている。
③【主】の忍耐が限界を超えたことが示唆されている。
④モーセは、【主】から与えられたもので満足しなければならない。

 

(3)罪の大きさと罰の大きさがアンバランスのように感じる人がいる。
①多く与えられた者には、多くのことが要求される。
②モーセは、多くの人のために執りなしをしてきた。
③しかし、モーセのために執りなしができる人はいない。
④律法の付与者であるモーセは、ひとつの罪のために厳しく罰せられた。

 

Ⅲ.恵みの要素(3:27~29)
1.27節
ピスガの頂に登り、目を上げて西、北、南、東を見よ。あなたのその目でよく見よ。あなたがこのヨルダン川を渡ることはないからだ。
(1)【主】は、モーセの労苦に対する報いを用意された。
①ヨルダン川が渡ることはないが、約束の地を見ることは許可された。

 

(2)地形
①ネボ山(標高1000メートル)には2つの峰がある。
*北の峰がピスガの頂。
*南の峰がネボ山。
②ピスガの頂はネボ山よりも120mほど低いが、より北と西にある。
③そこからは、約束の地がよく見える。
④160キロ北にヘルモン山が見える。
⑤北西にはタボル山とギルボア山が見える(イズレエルの谷を横切っている)。
⑥中央山地には、エバル山とゲリジム山が見える。
⑦南西の方角には、エン・ゲディが見える。

 

2.28節
ヨシュアに命じ、彼を力づけ、彼を励ませ。彼がこの民の先頭に立って渡って行き、あなたが見るあの地を彼らに受け継がせるからだ。」
(1)ヨシュアへの権限委譲は、申命記の重要なテーマである。
①1章~3章で、このテーマが出て来るのは3度目である。
*申1:38、3:21、3:28

 

(2)ヨシュアを励ます最高の方法は、【主】の命令を民に伝えることである。
①ヨシュアは、民の先頭に立ってヨルダン川を渡って行く。
②ヨシュアは、約束の地をイスラエルの民に受け継がせる。

 

3.29節
こうして私たちは、ベテ・ペオルの前にある谷にとどまった。
(1)ここで、歴史の回顧が語られている場所が特定される。
①モアブの地である。
②ベテ・ペオルの前にある谷である。
*ベテ・ペオル(バアル神)は、「偶像の宮」という意味である。

 

(2)モーセは、ここで葬られることになる。
①申34:6
主は彼を、ベテ・ペオルの向かいにあるモアブの地の谷に葬られたが、今日に至るまで、その墓を知る者はいない。

 

結論:新約聖書における「懇願」の例
1.パウロの懇願
(1)2コリ12:7~9
その啓示のすばらしさのため高慢にならないように、私は肉体に一つのとげを与えられました。それは私が高慢にならないように、私を打つためのサタンの使いです。
この使いについて、私から去らせてくださるようにと、私は三度、主に願いました。
しかし主は、「わたしの恵みはあなたに十分である。わたしの力は弱さのうちに完全に現れるからである」と言われました。ですから私は、キリストの力が私をおおうために、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。
(2)パウロは、3度願った。
(3)しかし、その願いは拒否された。
(4)パウロの長所は、自立心である。
(5)しかし、願いが拒否されことで、彼はより素晴らしい器とされた。
①キリストの力により頼るようになった。
②キリストが彼の人生を導いておられることが、より明らかになった。
③弱い人への思いやりの心が、より深くなった。

 

2.イエスの懇願
(1)ルカ22:42
「父よ、みこころなら、この杯をわたしから取り去ってください。しかし、わたしの願いではなく、みこころがなりますように。」
(2)「杯」とは、神の怒り、神の裁きのことである。
(3)イエスは、神の怒りの杯を受ける必要のない方であった。
(4)しかし、父なる神は、イエスの懇願を聞き入れなかった。
(5)イエスは、罪人の身代わりとして、神の怒りの杯を受けてくださった。
(6)1ヨハ4:10
私たちが神を愛したのではなく、
神が私たちを愛し、
私たちの罪のために、
宥めのささげ物としての御子を遣わされました。
ここに愛があるのです。

 

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