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ガラテヤ人への手紙(9)キリストにあって一つ ー論理に基づく議論ー
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論理に基づく議論について学ぶ。
ガラテヤ 9 回
「キリストにあって一つ」
-論理に基づく議論-
ガラ 3 : 15 ~ 29
1.はじめに
(1)ガラテヤ人への手紙の位置づけ
①ガラテヤ地方の諸教会は、律法主義者の教えの影響を受けた。
②パウロは、律法主義者の教えに反論する必要を感じ、この書簡を書いた。
(2)ガラテヤ人への手紙のアウトライン
①個人的弁明:パウロの使徒職(1:1~2:21)
②教理的教え:信仰義認(3:1~4:31)
③実践的教え:キリスト者の自由(5:1~6:18)
(3)文脈の確認
①3章から、ガラテヤ人たちに対する教理的教えが始まる。
*パウロは、旧約聖書から論じる。これが4章の最後まで続く。
*律法主義者たちは、旧約聖書の教えに従っていると自負していた。
*パウロは、彼らが誇りとしていた旧約聖書を用いて彼らを論駁する。
②3章の内容
*体験に基づく議論(1~5節)
*聖書に基づく議論(6~14節)
*論理に基づく議論(15~29節)
③今回は、論理に基づく議論(15~29節)を取り上げる。
2.メッセージのアウトライン
(1)契約の普遍性(15~18節)
(2)律法の目的(19~25節)
(3)信者の地位(26~29節)
3.結論
(1)アブラハム契約の内容
(2)アブラハムの子孫の意味
論理に基づく議論について学ぶ。
Ⅰ.契約の普遍性( 15 ~ 18 節)
1.15~16節
Gal 3:15 兄弟たちよ、人間の例で説明しましょう。人間の契約でも、いったん結ばれたら、だれもそれを無効にしたり、それにつけ加えたりはしません。
Gal 3:16 約束は、アブラハムとその子孫に告げられました。神は、「子孫たちに」と言って多数を指すことなく、一人を指して「あなたの子孫に」と言っておられます。それはキリストのことです。
(1)パウロは、律法主義者たちの反論を想定し、それに対する回答を用意する。
①彼らはこう反論するであろう。
*アブラハムが恵みと信仰によって義とされたことは、認める。
*しかし、その後与えられた律法により、義とされる方法は変更された。
②そこでパウロは、「人間の例」を用いて説明する。
③「人間の例」とは、ローマ法の慣習のことである。
(2)ローマ法では、一度結ばれた契約は、無効にしたり、何かを付け加えたりは
できない。
①人間の契約が不変だと言うなら、神の契約はもっとそうである。
②アブラハムとその子孫に与えられた約束は、律法が与えられる前に成就し
たわけではない。
③律法が与えられた時点で、その約束は依然として有効であった。
④つまり、律法によって神の約束が変更されることはないのである。
(3)アブラハムとその子孫に与えられた約束は、キリストにあって成就した。
①「あなたの子孫に」は単数形であり、キリストのことである。
②「子孫」はギリシア語で「スペルマ」、ヘブル語で「ゼラ」である。
*この言葉は、文字通りには「種」であり、比喩的には「子孫」である。
*この言葉は単数形であるが、集合名詞として「子孫」を指す場合もある。
*この言葉が単数形であることを基に、パウロはそれをキリストに適用。
③マタイ1:1は、キリストがアブラハムの子孫であることを記している。
Mat 1:1 アブラハムの子、ダビデの子、イエス・キリストの系図。
④キリストは永遠のお方なので、キリストにあって成就した約束も永遠である。
*つまり、信仰によって義とされることは、永遠の約束である。
2.17~18節
Gal 3:17 私の言おうとしていることは、こうです。先に神によって結ばれた契約を、その後四百三十年たってできた律法が無効にし、その約束を破棄することはありません。
Gal 3:18 相続がもし律法によるなら、もはやそれは約束によるのではありません。しかし、神は約束を通して、アブラハムに相続の恵みを下さったのです。
(1)神がアブラハムと結んだ契約は、430年後にできた律法の影響を受けない。
①430年は、ヤコブとの契約の更新から数えてのことであろう(創46:1~4)。
②出12:40
Exo 12:40 イスラエルの子らがエジプトに滞在していた期間は、四百三十年であった。
(2)相続は、約束によるか、律法によるかのいずれかである。
①神が与えた相続の恵みは、約束による。
②相続の恵みとは、恵みと信仰による救いのことである。
Ⅱ.律法の目的( 19 ~ 25 節)
1.19~20節
Gal 3:19 それでは、律法とは何でしょうか。それは、約束を受けたこの子孫が来られるときまで、違反を示すためにつけ加えられたもので、御使いたちを通して仲介者の手で定められたものです。
Gal 3:20 仲介者は、当事者が一人であれば、いりません。しかし約束をお与えになった神は唯一の方です。
(1)ここでもパウロは、律法主義者たちの質問を想定して回答を提供している。
①律法が救いを提供しないなら、シナイ契約でなぜ律法が与えられたのか。
(2)パウロは、律法の目的と性質を説明する。
①律法は、違反を示すためにつけ加えられた。
*律法は、罪を指摘する。
*罪を犯した者の上に、神の怒りが留まる。
②律法は一時的であり、メシアが来られるまでの間だけ機能するものである。
③律法は、約束よりも劣っている。
*約束は、神が直接アブラハムに与えたものである。
*律法は、仲介者(モーセ)を通して制定されたものである。
*実際は、2種類の仲介者がいた。
・天使たちは神を代表し、モーセはイスラエルの民を代表した。
(3)20節の訳は、新共同訳が分かりやすい。
Gal 3:20 仲介者というものは、一人で事を行う場合には要りません。約束の場合、神はひとりで事を運ばれたのです。 (新共同訳)
①アブラハム契約は片務契約である。
②神だけが責任を負う。
③それゆえ、仲介者は不要である。
2.21~22節
Gal 3:21 それでは、律法は神の約束に反するのでしょうか。決してそんなことはありません。もし、いのちを与えることができる律法が与えられたのであれば、義は確かに律法によるものだったでしょう。
Gal 3:22 しかし聖書は、すべてのものを罪の下に閉じ込めました。それは約束が、イエス・キリストに対する信仰によって、信じる人たちに与えられるためでした。
(1)次に想定されている質問は、律法と神の約束は矛盾するのか、である。
①パウロは、「決してそんなことはありません」と答える。
②ギリシア語の「メイ・ゲノイト」は、強意の否定である。
③約束と律法には、それぞれ異なった目的がある。
(2)律法の目的は、いのちを与えることではない。
①理論的には、律法を完全に守れるなら、律法による救いは可能である。
②しかし、律法を完璧に守れる人はいない。
③ロマ8:3~4
Rom 8:3 肉によって弱くなったため、律法にできなくなったことを、神はしてくださいました。神はご自分の御子を、罪深い肉と同じような形で、罪のきよめのために遣わし、肉において罪を処罰されたのです。
Rom 8:4 それは、肉に従わず御霊に従って歩む私たちのうちに、律法の要求が満たされるためなのです。
④申命8:1は、律法を守ろうと努力する人に地上生活の祝福を約束している。
Deu 8:1 私が今日あなたに命じるすべての命令を、あなたがたは守り行わなければならない。そうすれば、あなたがたは生きて数を増やし、【主】があなたがたの父祖たちに誓われた地に入って、それを所有することができる。
(3)律法は、福音への道を用意した。
①律法によって罪を示された人は、呪いの下に置かれる(ロマ3:23~24)。
Rom 3:23 すべての人は罪を犯して、神の栄光を受けることができず、
Rom 3:24 神の恵みにより、キリスト・イエスによる贖いを通して、価なしに義と認められるからです。
3.23~25節
Gal 3:23 信仰が現れる前、私たちは律法の下で監視され、来たるべき信仰が啓示されるまで閉じ込められていました。
Gal 3:24 こうして、律法は私たちをキリストに導く養育係となりました。それは、私たちが信仰によって義と認められるためです。
Gal 3:25 しかし、信仰が現れたので、私たちはもはや養育係の下にはいません。
(1)次にパウロは、2つの例を用いて律法の役割を解説する。
①牢獄の例
*キリストの到来まで、私たちは律法に監視され、閉じ込められていた。
*ここでの「私たち」とは、ユダヤ人たちである。
②養育係の例
*律法は、私たちをキリストに導く養育係となった。
*信仰による義を獲得するためである。
*キリストが現れたので、私たちは養育係の下にはいない。
Ⅲ.信者の地位( 26 ~ 29 節)
1.26~27節
Gal 3:26 あなたがたはみな、信仰により、キリスト・イエスにあって神の子どもです。
Gal 3:27 キリストにつくバプテスマを受けたあなたがたはみな、キリストを着たのです。
(1)主語が、「あなたがた」に変化している。ガラテヤの信徒たちのことである。
①信仰義認の説明が、ここでクライマックスを迎える。
②信仰は、3つの変化をもたらす。
(2)第1の変化:信者はみな、神の子どもとなった。
①信者は、「キリスト・イエスにあって」神の子どもとなった。
*「子ども」はギリシア語で「ヒュイオス」(複数形ヒュイオイ)である。
*キリストにある成人、息子・娘である。
*律法が養育係であったときは、未成年であった。
②キリストを信じた人は、聖霊によりバプテスマされた(キリストと一体化)。
③「キリストを着た」とは、キリストが与える義の衣を着たということである。
*ローマ社会では、15歳になるとトーガの着用を許された。
*トーガは、その家の息子としての特権を引き継いだことを示すしるし。
2.28節
Gal 3:28 ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由人もなく、男と女もありません。あなたがたはみな、キリスト・イエスにあって一つだからです。
(1)第2の変化:信者はみなキリスト・イエスにあって一つとされた。
①ユダヤ人は、こう祈っていた。
*「私は、異邦人でもなく、奴隷でもなく、女でもないことを感謝します」
②パウロは、この祈りを前提に、キリストにある一致を教えている。
③信者の間に、霊的格差はなくなった。
*ユダヤ人信者と異邦人信者の区別はない。
*奴隷の信者と自由人の信者の区別もない。
*男性の信者と女性の信者の間の区別もない。
④信者はすべて同じ霊的特権と地位に与っている。」
3.29節
Gal 3:29 あなたがたがキリストのものであれば、アブラハムの子孫であり、約束による相続人なのです。
(1)第3の変化:信者は、アブラハムの子孫であり、約束による相続人となった。
①パウロは、アブラハムの子孫とはキリストのことだと論じた(16、19節)。
②信者はキリストと一体化した(キリストを着た)。
③それゆえ、信者はアブラハムの子孫の一部となった。
④信者は、アブラハムとその子孫に与えられた約束の相続人となった。
結論:
1 .アブラハム契約の内容
( 1 )創 12 : 1 ~ 3
Gen 12:1 【主】はアブラムに言われた。
「あなたは、あなたの土地、
あなたの親族、あなたの父の家を離れて、
わたしが示す地へ行きなさい。
Gen 12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、
あなたを祝福し、
あなたの名を大いなるものとする。
あなたは祝福となりなさい。
Gen 12:3 わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、
あなたを呪う者をのろう。
地のすべての部族は、
あなたによって祝福される。」
①土地の約束
②子孫の約束
③祝福の約束
*この約束だけが、異邦人にも与えられる。
( 2 )創 15 章で、正式な契約締結の儀式が行われた。
①アブラハムは、深い眠りに襲われた。
②切り裂かれた物の間を、煙の立つかまどと燃えているたいまつが、通り過
ぎた。
③神だけが責任を持つ片務契約である。
④人間の側の失敗によって、無効になる契約ではない。
⑤ これを無条件契約と言う。
2 .アブラハムの子孫の意味
( 1 )ガラ 3 : 29
Gal 3:29 あなたがたがキリストのものであれば、アブラハムの子孫であり、約束による相続人なのです。
①この聖句を根拠に、教会は霊的イスラエルであると主張する人がいる。
②この立場を、置換神学を呼ぶ。
③しかしこれは、ここでの文脈を無視した自分勝手な解釈である。
( 2 )アブラハムの肉の子孫は、ヤコブから出たイスラエルの 12 部族である。
①この肉の子孫の中に、少数の真の信仰者(レムナント)がいる。
②彼らは、肉のイスラエルの中にいる霊的イスラエルである。
③彼らは、アブラハムの霊的子孫である。
( 3 )アブラハムの肉の子孫でない者たち(異邦人)の中から、信仰者が出る。
①彼らもまた、アブラハムの霊的子孫となる。
②彼らは、信仰による義認を受け、 3 つの変化を体験する。
( 4 )イスラエルと教会は、別のグループである。
①神は、それぞれのために計画を持っておられる。
②教会が携挙されると、イスラエルに対する計画が成就に向けて動き始める。
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