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使徒の働き(92)―アグリッパ王の前に立つパウロ(1)―
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アグリッパ王の前での聴聞について学ぶ。
「アグリッパ王の前に立つパウロ(1)」
使徒25:13~27
1.はじめに
(1)文脈の確認
①ペリクスの後任として、ポルキオ・フェストがユダヤ総督として赴任して来た。
②フェストは、カイザリヤに到着した3日後に、エルサレムを訪問した。
③ユダヤ人の指導者たちは、パウロをエルサレムで裁くことを要請した。
*エルサレムに上る途中でパウロを暗殺するためであった。
④フェストは、ユダヤ人たちがカイザリヤに下ってくれば裁判をすると応答した。
⑤カイザリヤでの裁判でも、パウロが無罪であることは明らかであった。
⑥フェストはパウロに、エルサレムに上って裁判を受けることを願うかと尋ねた。
⑦パウロは、「私はカイザルに上訴します」と答えた。
⑧使25:12
Act 25:12 そのとき、フェストは陪席の者たちと協議したうえで、こう答えた。「あなたはカイザルに上訴したのだから、カイザルのもとへ行きなさい。」
(2)アウトライン
①アグリッパ王とベルニケの来訪(13~14節a)
②フェストによる問題の分かち合い(14b~22節)
③聴聞の前説(23~27節)
結論:
(1)ルカの執筆目的は何か。
(2)中心人物は誰か。
(3)中心テーマは何か。
アグリッパ王の前での聴聞について学ぶ。
Ⅰ.アグリッパ王とベルニケの来訪(13~14節a)
1.13節
Act 25:13 数日たってから、アグリッパ王とベルニケが、フェストに敬意を表するためにカイザリヤに来た。
(1)アグリッパ王と妹のベルニケが、フェストを表敬訪問するためにやって来た。
①アグリッパはローマによって任命された王である。
②近隣の総督の着任を歓迎するのは、当然のことである。
(2)アグリッパ王について
①彼は、ヘロデ・アグリッパⅡ世である。
②彼の父は、ヘロデ・アグリッパⅠ世である。
*彼は、ヤコブを殺し、ペテロも殺そうとしたが失敗した(使12章)。
*カイザリヤに下り、そこで演説している間に「虫にかまれて」死んだ。
③大叔父(父の叔父)は、ヘロデ・アンティパスである。
*彼は、バプテスマのヨハネの首をはねた(マタ14章)。
*彼は、イエスを裁いた(ルカ23章)。
④曾祖父は、ヘロデ大王である。
*彼は、ベツレヘムの2歳以下の男の子を殺した。
⑤父が死んだ時、ヘロデ・アグリッパⅡ世は17歳であった。
*妹のベルニケは16歳、ペリクスの妻ドルシラは6歳であった。
⑥彼は、ローマで教育を受け、皇帝クラウデオから好感を抱かれていた。
*また、ユダヤ人史家ヨセフスとの親交もあった。
⑦アグリッパは、当時30歳前後で、ガリラヤ地方の王であった。
*エルサレムの神殿の管理者であり、大祭司の任命権も持っていた。
*ユダヤ人たちにとっては、彼はローマの操り人形に過ぎなかった。
⑧ヘロデ王朝の中では、最も評判の良い人物である(ヘロデ王朝の最後の人物)。
(3)ベルニケについて
①初婚は、叔父との結婚であったが、若くして夫と死別した。
②その後、兄アグリッパと同棲した(近親結婚の様相を呈していた)。
③最後は、エルサレムを滅ぼした将軍ティトスの妻となった。
④ペリクスの妻ドルシラは、アグリッパとベルニケの妹である。
2.14節a
Act 25:14a ふたりがそこに長く滞在していたので、フェストはパウロの一件を王に持ち出してこう言った。
(1)フェストが抱えていた問題
①パウロをカイザルの元に送る際に、どのような法的理由を付けるか分からない。
②ユダヤ人たちが告発する理由は、すべて宗教的なものである。
(2)アグリッパ王に相談する理由
①彼は、ローマ法に精通している。
②ローマによって任命された王である。
③ユダヤ人(イドマヤ人)なので、ユダヤ教にも詳しい。
④また、神殿の管理者であり、大祭司の任命権者でもある。
Ⅱ.フェストによる問題の分かち合い(14b~22節)
1.14b~16
Act 25:14b 「ペリクスが囚人として残して行ったひとりの男がおります。
Act 25:15 私がエルサレムに行ったとき、祭司たちとユダヤ人の長老たちとが、その男のことを私に訴え出て、罪に定めるように要求しました。
Act 25:16
そのとき私は、『被告が、彼を訴えた者の面前で訴えに対して弁明する機会を与えられないで、そのまま引き渡されるということはローマの慣例ではない』と答えておきました。
そのとき私は、『被告が、彼を訴えた者の面前で訴えに対して弁明する機会を与えられないで、そのまま引き渡されるということはローマの慣例ではない』と答えておきました。
(1)これまでの出来事の要約
①ペリクスが囚人として残して行ったひとりの男がいる。
②ユダヤ人たちは、正当な手続きを経ないで、彼を有罪にするように要求した。
③フェストは、自分のことを「ローマ法の擁護者」として印象づけた。
2.17~19節
Act 25:17 そういうわけで、訴える者たちがここに集まったとき、私は時を移さず、その翌日、裁判の席に着いて、その男を出廷させました。
Act 25:18 訴えた者たちは立ち上がりましたが、私が予期していたような犯罪についての訴えは何一つ申し立てませんでした。
Act 25:19
ただ、彼と言い争っている点は、彼ら自身の宗教に関することであり、また、死んでしまったイエスという者のことで、そのイエスが生きているとパウロは主張しているのでした。
ただ、彼と言い争っている点は、彼ら自身の宗教に関することであり、また、死んでしまったイエスという者のことで、そのイエスが生きているとパウロは主張しているのでした。
(1)裁判では、その男を有罪にする証拠がなにも出て来なかった。
①ローマに対する反逆の罪は、見つからなかった。
②争点は、彼ら自身の宗教に関することである。
(2)パウロが神殿を汚しているという最初の訴えは、後退した。
①死者の復活のテーマが全面に出て来た。
②パウロは、イエスが死者の中から復活したと主張している。
*サドカイ派は、死者の復活を否定していた。
*パリサイ派は、終わりの時にすべての死者が復活すると教えていた。
3.20~21節
Act 25:20
このような問題をどう取り調べたらよいか、私には見当がつかないので、彼に『エルサレムに上り、そこで、この事件について裁判を受けたいのか』と尋ねたところが、
このような問題をどう取り調べたらよいか、私には見当がつかないので、彼に『エルサレムに上り、そこで、この事件について裁判を受けたいのか』と尋ねたところが、
Act 25:21 パウロは、皇帝の判決を受けるまで保護してほしいと願い出たので、彼をカイザルのもとに送る時まで守っておくように、命じておきました。」
(1)フェストは、自らの無知を率直に認めた。
①アグリッパ王の助言が必要である。
(2)自分はパウロに、エルサレムで裁判を受けたいかと尋ねた。
①ユダヤ人の気持ちを配慮したという点は、隠した。
②自分はユダヤの律法に無知であるということを理由にした。
4.22節
Act 25:22
すると、アグリッパがフェストに、「私も、その男の話を聞きたいものです」と言ったので、フェストは、「では、明日お聞きください」と言った。
すると、アグリッパがフェストに、「私も、その男の話を聞きたいものです」と言ったので、フェストは、「では、明日お聞きください」と言った。
(1)アグリッパは、キリスト教に関してパウロから直接情報を得たいと願った。
①大叔父のヘロデ・アグリッパも、イエスから直接話を聞きたいと願った。
Ⅲ.聴聞の開始(23~27節)
1.23節
Act 25:23
こういうわけで、翌日、アグリッパとベルニケは、大いに威儀を整えて到着し、千人隊長たちや市の首脳者たちにつき添われて講堂に入った。そのとき、フェストの命令によってパウロが連れて来られた。
こういうわけで、翌日、アグリッパとベルニケは、大いに威儀を整えて到着し、千人隊長たちや市の首脳者たちにつき添われて講堂に入った。そのとき、フェストの命令によってパウロが連れて来られた。
(1)フェストは、この聴聞をアグリッパとベルニケを祭り上げるための機会とした。
①アグリッパとベルニケは、大いに威儀を整えて(盛装で)到着した。
②カイザリヤに駐留していた5人の千人隊長たちが付き添っていた。
③市の首脳たちも付き添っていた(大半が異邦人)。
④彼らは、総督の宮廷内にある講堂に入って来た。
⑤最後に、パウロが鎖につながれて連れて来られた。
(2)ルカは招待客ではなかったが、そこにいたと思われる。
①パウロの友人たちが、パウロの世話をすることは許可されていた。
②ルカは、カイザリヤでの裁判の記録を直接収集することができた。
2.24~25節
Act 25:24
そこで、フェストはこう言った。「アグリッパ王、ならびに、ここに同席の方々。ご覧ください。ユダヤ人がこぞって、一刻も生かしてはおけないと呼ばわり、エルサレムでも、ここでも、私に訴えて来たのは、この人のことです。
そこで、フェストはこう言った。「アグリッパ王、ならびに、ここに同席の方々。ご覧ください。ユダヤ人がこぞって、一刻も生かしてはおけないと呼ばわり、エルサレムでも、ここでも、私に訴えて来たのは、この人のことです。
Act 25:25
私としては、彼は死に当たることは何一つしていないと思います。しかし、彼自身が皇帝に上訴しましたので、彼をそちらに送ることに決めました。
私としては、彼は死に当たることは何一つしていないと思います。しかし、彼自身が皇帝に上訴しましたので、彼をそちらに送ることに決めました。
(1)フェストの前説
①ユダヤ人たちが訴えて来たのは、この人である。
②自分としては、彼は無罪だと思う。
*これは、重要な情報である。フェストもパウロが無罪であることを認めた。
③しかし、彼が皇帝に上訴したので、彼をローマに送ることにした。
3.26~27節
Act 25:26
ところが、彼について、わが君に書き送るべき確かな事がらが一つもないのです。それで皆さんの前に、わけてもアグリッパ王よ、あなたの前に、彼を連れてまいりました。取り調べをしてみたら、何か書き送るべきことが得られましょう。
ところが、彼について、わが君に書き送るべき確かな事がらが一つもないのです。それで皆さんの前に、わけてもアグリッパ王よ、あなたの前に、彼を連れてまいりました。取り調べをしてみたら、何か書き送るべきことが得られましょう。
Act 25:27 囚人を送るのに、その訴えの個条を示さないのは、理に合わないと思うのです。」
(1)フェストの前説(続き)
①その場合、訴えの内容を書いて皇帝に送る必要がある。
*当時の皇帝は、ネロである。
②アグリッパなら、具体的な罪状を上げてくれるに違いない。
③訴えの箇条を示さないなら、総督としての能力が疑われる。
結論
1.ルカの執筆目的は何か。
(1)パウロが無罪であることを、3方向から証明した。
①ユダヤ総督たちが、パウロは無罪であると判断した。
②ローマによって任命された王が、パウロは無罪であると判断した。
③5人の千人隊長と市の重鎮たちの前で、パウロが無罪であることが示された。
2.中心人物は誰か。
(1)フェストが中心人物ではない。
(2)千人隊長たちや市の首脳者たちでもない。
(3)アグリッパとベルニケでもない。
①彼らは、虚飾と虚栄を身にまとってこの場に登場した。
(4)パウロは、鎖につながれた囚人として登場した。
①ルカは、アグリッパとベルニケの2人とパウロを対比させている。
②歴史を動かすのは、鎖につながれた囚人である。
③パウロは、イエス・キリストの福音のために囚人となっている。
④パウロは、真理のために囚人となっている。
3.中心テーマは何か。
(1)ローマの高官を指す2つの言葉
①使25:21
Act 25:21 パウロは、皇帝の判決を受けるまで保護してほしいと願い出たので、彼をカイザルのもとに送る時まで守っておくように、命じておきました。」
*皇帝=セバストス=アウグストス
②使25:25
Act 25:25
私としては、彼は死に当たることは何一つしていないと思います。しかし、彼自身が皇帝に上訴しましたので、彼をそちらに送ることに決めました。
私としては、彼は死に当たることは何一つしていないと思います。しかし、彼自身が皇帝に上訴しましたので、彼をそちらに送ることに決めました。
*皇帝=キュリオス=主
*アウグストとテベリオは、「キュリオス」を称号とすることを拒否した。
*自分を神の位に引き上げることだと感じたからである。
*ネロは、この称号を受け入れた。当時は、善良な皇帝であった。
(2)パウロは、総督や王たちに向かって、彼の主を宣べ伝えた。
①使25:19
Act 25:19
ただ、彼と言い争っている点は、彼ら自身の宗教に関することであり、また、死んでしまったイエスという者のことで、そのイエスが生きているとパウロは主張しているのでした。
ただ、彼と言い争っている点は、彼ら自身の宗教に関することであり、また、死んでしまったイエスという者のことで、そのイエスが生きているとパウロは主張しているのでした。
*フェストは、「イエスという者」と言った。ここに彼の悲劇がある。
*これは、イエスとパウロに対する軽蔑の言葉である。
②パウロが歴史を動かした理由は、彼が語ったメッセージの内容にある。
③イエスは死者の中から甦り、今も生きておられる。
④1コリ12:3
1Co 12:3
ですから、私は、あなたがたに次のことを教えておきます。神の御霊によって語る者はだれも、「イエスはのろわれよ」と言わず、また、聖霊によるのでなければ、だれも、「イエスは主です」と言うことはできません。
ですから、私は、あなたがたに次のことを教えておきます。神の御霊によって語る者はだれも、「イエスはのろわれよ」と言わず、また、聖霊によるのでなければ、だれも、「イエスは主です」と言うことはできません。
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