60分でわかる新約聖書(13)テサロニケ人への手紙第一

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テサロニケ人への手紙第一について学ぶ。

60分でわかる新約聖書(13)「テサロニケ人への手紙第一」

1.はじめに

(1)テサロニケ人への手紙第一の位置づけ

①著者はパウロである。このことを疑う学者はほとんどいない。

②パウロは、第二次伝道旅行でテサロニケを訪問し、そこに教会を設立した。

③ユダヤ人による迫害のために、そこを急に去ることになった。

④相当な量の教理を教えたが、まだ完了したわけではなかった。

⑤若い教会を励まし、教育するために、2通の手紙を書いた。

⑥テサロニケ人への手紙第一は、携挙と再臨を体系的に扱っている。

*中世の時代、携挙と再臨が語られることはほとんどなかった。

*19世紀初頭、英国のブレザレンが終末論を発展させた。

*その際使用したのが、2つのテサロニケ人への手紙である。

*この2つがなければ、携挙と再臨を理解することが出来なかった。

(2)テサロニケという町

①マケドニア州の首都である。

②交通の要衝の町で、当時の人口は、約20万人。

③タルソやアテネと同じように「自由都市」であった。

*自治権が与えられている。選挙で選ばれた代表による議会政治。

*自分の貨幣を鋳造することができた。

*ローマ兵の部隊が駐留していなかった。

④テサロニケのユダヤ人の会堂は、大きな力を持っていた。

*「神を敬う(神を恐れる)異邦人」も多くいた。

⑤偶像礼拝がもたらす道徳的堕落が蔓延していた。

*ユダヤ教の自制心のある教えに感動する異邦人もいた。

(3)テサロニケ人への手紙第一のアウトライン

①あいさつ(1:1)

②個人的な内容(1:2~3:13)

*どのようにして教会が誕生したか。

*どのようにして教会が成長したか。

*どのようにして教会が確立されたか。

③実践的教え(4:1~5:24)

*クリスチャン生活

*携挙

*再臨への備え

*教会生活

*個人的生活

④結論(5:25~28)

テサロニケ人への手紙第一の中の実践的教えについて学ぶ。

Ⅰ.クリスチャン生活(4:1~12)

1.日々の歩み(4:1~2)

1Th 4:1
最後に兄弟たち。主イエスにあってお願いし、また勧めます。あなたがたは、神に喜ばれるためにどのように歩むべきかを私たちから学び、現にそう歩んでいるのですから、ますますそうしてください。

1Th 4:2 私たちが主イエスによって、どのような命令をあなたがたに与えたか、あなたがたは知っています。

(1)パウロは、教理上の誤解、また実際生活の誤解を正そうとしている。

①行動の動機は、神への愛(神を喜ばせること)である。

②学びの目的は、すでに実行していることをさらに進めることである。

③パウロは、主イエスの権威によって語ったし、今も語っている。

2.性的純潔(4:3~8)

1Th 4:3 神のみこころは、あなたがたが聖なる者となることです。あなたがたが淫らな行いを避け、

1Th 4:4 一人ひとりがわきまえて、自分のからだを聖なる尊いものとして保ち、

1Th 4:5 神を知らない異邦人のように情欲におぼれず、

(1)テサロニケは、ギリシア・ローマの異教的文化に浸かった町。

①町には、娼婦たちもいた。

②そういう町に住んでいると、次第に罪が罪として認識されなくなる。

③パウロは、神の聖さの基準を教えている。

(2)神がクリスチャンを召されたのは、聖潔を得させるためである。

①イエスを救い主と信じた者はみな、「聖化の歩み」へと召された。

②この教えを拒む人は、聖霊を与えてくださる神を拒んだことになる。

3.兄弟愛(4:9~12)

1Th 4:9 兄弟愛については、あなたがたに書き送る必要がありません。あなたがたこそ、互いに愛し合うことを神から教えられた人たちで、

1Th 4:10
マケドニア全土のすべての兄弟たちに対して、それを実行しているからです。兄弟たち、あなたがたに勧めます。ますます豊かにそれを行いなさい。

(1)パウロは、彼らが愛を実践していることをほめている。

①彼らをほめる目的は、彼らを傲慢にするためではない。

②逆に、彼らが愛においてますます成長するためである。

(2)テサロニケ教会には、労働を軽視する人たちがいた。

①それは、主イエスの再臨について誤解があったからである。

②パウロは、「落ち着いた生活をするように」と命じた。

③パウロは、過剰な再臨信仰や他者へのお節介に対して警告を発した。

④喜びに満ちた状態と、過熱した状態とは、別ものである。

⑤信者は、働くことで生活の糧を得、神に栄光を帰す。

⑥これ自体が、教会外の人たちへの証しとなる。

Ⅱ.携挙(4:13~18)

1.テーマの紹介(4:13)

1Th 4:13
眠っている人たちについては、兄弟たち、あなたがたに知らずにいてほしくありません。あなたがたが、望みのない他の人々のように悲しまないためです。

(1)テサロニケの信者の教理的弱点:携挙のテーマが紹介される。

①パウロがテサロニケを去ってから、死んだ者たちが何人か出てきた。

②「眠っている人たち」とは、死の婉曲的な表現である(信者にのみ使用する)。

*肉体の眠りであって、魂の眠りではない。

③死んだ者たちは、携挙の際にはその祝福に与ることができないのか。

④携挙(空中再臨)とは、信者が生きたまま天に挙げられることを指す。

2.復活の希望(4:14~15)

1Th 4:14
イエスが死んで復活された、と私たちが信じているなら、神はまた同じように、イエスにあって眠った人たちを、イエスとともに連れて来られるはずです。

1Th 4:15
私たちは主のことばによって、あなたがたに伝えます。生きている私たちは、主の来臨まで残っているなら、眠った人たちより先になることは決してありません。

(1)信者は、望みのない不信者のように悲しむ必要はない。

①イエスは死んで復活された。

②イエスにあって死んだ者には、復活の希望が与えられている。

③携挙の時には、死んだ者は甦り、天に挙げられる。

④生きている者が、死んだ者に優先するようなことは決してない。

3.携挙の預言(4:16~18)

1Th 4:16
すなわち、号令と御使いのかしらの声と神のラッパの響きとともに、主ご自身が天から下って来られます。そしてまず、キリストにある死者がよみがえり、

1Th 4:17
それから、生き残っている私たちが、彼らと一緒に雲に包まれて引き上げられ、空中で主と会うのです。こうして私たちは、いつまでも主とともにいることになります。

1Th 4:18 ですから、これらのことばをもって互いに励まし合いなさい。

(1)主イエスご自身が天から下って来られる。

①主イエスは、今は父なる神の右の座に座しておられる。

(2)携挙の様子

①号令がかかる。これは、軍隊用語で、サタンとの最後の戦いを暗示させる。

②御使いのかしらの声が響く。これは、天使ミカエルのことである。

③神のラッパが鳴り響く。

④キリストにある死者が先ず甦る。

*「キリストにある死者」とは、教会時代の聖徒たちである。

*旧約時代の聖徒たちは、患難期の終わりに甦る(ダニ12:2)。

⑤次に、生き残っている者が、瞬時に携挙される。

(3)私たちは、いつまでも主とともにいることになる。

①パウロは、自分が生存している間に携挙がある可能性を排除していない。

②携挙された聖徒たちは、主イエスが整えた場所に行く(ヨハ14:2~3)。

③この教理の適用は、慰めである。

④携挙や再臨の希望を語らないキリスト教は、聖書的キリスト教ではない。

Ⅲ.再臨への備え(5:1~11)

1.主の日(5:1~5)

1Th 5:1 兄弟たち。その時と時期については、あなたがたに書き送る必要はありません。

1Th 5:2 主の日は、盗人が夜やって来るように来ることを、あなたがた自身よく知っているからです。

1Th 5:3
人々が「平和だ、安全だ」と言っているとき、妊婦に産みの苦しみが臨むように、突然の破滅が彼らを襲います。それを逃れることは決してできません。

(1)携挙について語ったパウロは、次に主の日について解説している。

①「主の日」とは、旧約聖書でよく使われる言葉で、神の裁きの日を指す。

②新約時代に生きる私たちはこれを、大患難時代(患難期)と呼んでいる。

③大患難時代がいつ来るかは誰にも分からない。

④世の終わりを予告する人がいるなら、その人の教えは聖書的とは言えない。

(2)パウロは、信者と未信者とを対比させている。

①信者は、大患難時代を通過しない。

②未信者は暗闇の中にいるので、主の日は盗人のように彼らを襲う。

③信者の希望は、大患難時代を通過しなくてもよいということにある。

2.慎み深い歩み(5:6~11)

1Th 5:6 ですから、ほかの者たちのように眠っていないで、目を覚まし、身を慎んでいましょう。

1Th 5:7 眠る者は夜眠り、酔う者は夜酔うのです。

(1)未信者は眠っている。

①霊的な目が開かれておらず、夢を見ているか、酔ったような状態にある。

(2)信者は「光の子ども」となった。

①この世の人たちのような生き方をしなくなった。

②眠っていないで、目を覚まして、慎み深くしているように。

*不道徳の中で生活しないように。

③信仰と愛を胸当てとして着けるように。

*これは、闇の力と戦うためである。

④救いの望みをかぶととしてかぶるように。

*文脈では、大患難時代から救われるという希望。

*その希望は、敵の攻撃や誘惑に勝利する力となる。

(3)「目を覚ましていても眠っていても、主とともに生きるようになるためです」

①目ざめているとは、霊的に健全な状態。

②眠っているとは、霊的に無関心な状態。

③つまり、霊的に無関心の人でも、真に救われているなら携挙される。

④ただし、信者としての報酬は両者で異なる。

⑤一度救われた人が、救いを失うことはない。

Ⅳ.教会生活(5:16~15)

1.指導者への態度(5:12~13)

1Th 5:12 兄弟たち、あなたがたにお願いします。あなたがたの間で労苦し、主にあってあなたがたを指導し、訓戒している人たちを重んじ、

1Th 5:13 その働きのゆえに、愛をもって、この上ない尊敬を払いなさい。また、お互いに平和を保ちなさい。

(1)パウロはテサロニケの信者に、指導者を尊敬するようにと願っている。

①その前提に、霊的指導者は忠実に主の働きをしているという理解がある。

②彼らの忠実な働きによって、再臨を待ち望む信仰が育まれる。

2.互いに対する責任(5:14~15)

1Th 5:14 兄弟たち、あなたがたに勧めます。怠惰な者を諭し、小心な者を励まし、弱い者の世話をし、すべての人に対して寛容でありなさい。

1Th 5:15 だれも、悪に対して悪を返さないように気をつけ、互いの間で、またすべての人に対して、いつも善を行うように努めなさい。

(1)教会生活は、お互いに責任を持ち合う共同体生活、家族生活である。

①責任を指導者に委ねるのではなく、互いに重荷を負い合うべきである。

②気ままな者を戒める。

*「気ままな者」とは、仕事にも就かずに、怠惰な生活を送っている者。

③小心な者を励ます。

*「小心な者」とは、愛する者を失くした悲しみから立ち直れない者。

*この世の迫害や誘惑に負けてしまう者など。

④弱い者を助ける。

*「弱い者」とは、信仰や聖書理解が弱い者。

⑤復讐するのではなく、いつも善を行なうように励むこと。

Ⅴ.個人的生活(5:16~24)

1.3つの勧告

1Th 5:16 いつも喜んでいなさい。

1Th 5:17 絶えず祈りなさい。

1Th 5:18 すべてのことにおいて感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることです。

(1)いつも喜んでいなさい。

①この喜びは、キリストにある喜び、御霊による喜びである。

②この喜びは、この世の人たちが味わう喜びとは根本的に異なる。

③罪赦されたという確信から来る喜び。

④永遠の命の希望があるという喜び。

⑤再臨の主イエスに会うことができるという喜び。

⑥一時的なものではなく、いつまでも続く喜び。

(2)絶えず祈りなさい。

①常に神に信頼する姿勢を教えたもの。

②何をするにも神の助けを求めるという習慣を育てるように、教えたもの。

③神の恵みがなければ、主の働きは何一つできないことを覚える。

(3)すべての事について、感謝しなさい。

①これは、不幸や悲劇をも感謝せよという意味ではない。

②感謝する対象は、神である。

③すべてを益に変えてくださると信じるがゆえに、感謝することができる。

2.共同体としての生活(5:19~22)

1Th 5:19 御霊を消してはいけません。

1Th 5:20 預言を軽んじてはいけません。

1Th 5:21 ただし、すべてを吟味し、良いものはしっかり保ちなさい。

1Th 5:22 あらゆる形の悪から離れなさい。

(1)御霊を消してはならない。

①御霊は、「火」としてイメージされている。

②御霊の働きは、肉的な思いや不信仰によって消されていく。

(2)預言をないがしろにしてはいけない。

①新約聖書が完結するまでは、預言の賜物の行使が必要であった。

②新約聖書の完成とともに、預言の賜物はなくなった。

③この書簡の時代は、預言の賜物が行使されていた。

④テサロニケの教会では、その重要性が認識されていなかった。

⑤現代でも、啓示されたみことば以上に、人間の教えが重視されることがある。

(3)すべてのことを見分ける。

①預言の賜物を行使する人が現われた場合、それを見分ける必要がある。

②見分けた結果、それが聖書の教えと合致するなら、それを堅く守る必要があ

る。

③御霊の賜物は、無視するのも、無批判に受け入れるのも間違いである。

(4)悪はどんな悪でも避ける。

①悪い預言だけでなく、すべての悪を避けるということ。

②ここには、誤った教理も含まれる。

3.超自然的助け(5:23~24)

1Th 5:23
平和の神ご自身が、あなたがたを完全に聖なるものとしてくださいますように。あなたがたの霊、たましい、からだのすべてが、私たちの主イエス・キリストの来臨のときに、責められるところのないものとして保たれていますように。

(1)パウロは、テサロニケのクリスチャンたちのために祈っている。

①彼らの聖化が完成するように。

②そのことを為してくださるのは、「平和の神ご自身」である。

③「あなたがたの霊、たましい、からだが完全に守られますように」

④人間が3つの構成要素から成っていることを教えているのではない。

⑤人間存在のすべてが守られるようにという祈りである。

(2)私たちをこの世から召し出された神は真実なお方である。

①約束されたこと(救いの完成、聖化の完成)を必ず成し遂げてくださる。

②私たちの救いの確かさは、真実な神にかかっている。

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