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使徒の働き(79)―エペソの長老たちへのメッセージ(2)―
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第三次伝道旅行について学ぶ。
「エペソの長老たちへのメッセージ(2)」
使徒20:25~38
1.はじめに
(1)文脈の確認
①パウロは、エルサレムに行こうとしている。
②パウロは、トロアスからミレトに移動した(ルカは、航海日誌を残している)。
③ミレトでエペソの長老たちにメッセージが語られた。
(2)3つの重要なメッセージと5つの弁明
①第一次伝道旅行:ピシデヤのアンテオケでのメッセージ(使13:16~41)
②第二次伝道旅行:アテネでのメッセージ(使17:22~31)
③第三次伝道旅行:ミレトでのメッセージ(使20:22~31)
④5つの弁明(使22~26章)
(3)ミレトでのメッセージの特殊性と重要性
①これは、信者に向けて語られた唯一のメッセージである。
②これは、パウロ書簡のミニチュア版である。
(4)エペソの長老たちへのメッセージの構造
①エペソにおける過去の奉仕(18~21節)
②エルサレムを訪問しようとする現在の計画(22~24節)
③エペソ教会の長老たちの将来の責務(25~31節)
④結びの言葉(32~35節)
(5)アウトライン:エペソの長老たちへのメッセージ
①エペソ教会の長老たちの将来の責務(25~31節)
②結びの言葉(32~35節)
③別離の祈り(36~38節)
結論 :聖書的リーダーシップ
エペソの長老たちへのメッセージから霊的教訓を学ぶ 。
Ⅰ.エペソ教会の長老たちの将来の責務(25~31節)
1.25節
Act20:25 皆さん。御国を宣べ伝えてあなたがたの中を巡回した私の顔を、あなたがたはもう二度と見ることがないことを、いま私は知っています。
(1)「神の恵みの福音をあかしする任務を果たし終える」(24節)
①「御国を宣べ伝えて」(25節)
②異邦人もまた恵みと信仰によって救われ、千年王国に入る特権に与る。
③恵みの福音と御国とは相関関係にあることが分かる。
(2)「あなたがたはもう二度と見ることがないことを、いま私は知っています」
①パウロは、エルサレムでの死を予感していた。
②彼は、エペソの長老たちに再びメッセージを語ることはないと思っていた。
③幸いなことに、この予想は外れた。
*彼は、エルサレムでは死ななかった。
*彼は、後にエペソを訪問する機会に恵まれる(1テモ3:14、4:13参照)。
2.26~27節
Act20:26 ですから、私はきょうここで、あなたがたに宣言します。私は、すべての人たちが受けるさばきについて責任がありません。
Act20:27 私は、神のご計画の全体を、余すところなくあなたがたに知らせておいたからです。
(1)パウロは、自分には責任がないことを宣言する。
①彼は、キリストの教会を迫害した罪を否定しているのではない。
②また、最初の殉教者ステパノの死に関わった罪を否定しているのでもない。
③これは、忠実な働きをエペソで行ったという宣言である。
④コリントでの伝道
Act18:6 しかし、彼らが反抗して暴言を吐いたので、パウロは着物を振り払って、「あなたがたの血は、あなたがたの頭上にふりかかれ。私には責任がない。今から私は異邦人のほうに行く」と言った。
⑤エペソでの伝道
Act19:10これが二年の間続いたので、アジヤに住む者はみな、ユダヤ人もギリシヤ人も主のことばを聞いた。
(2)パウロは、預言者エゼキエルに倣って、無罪宣言を行っている。
①エゼ33:1~9(特に8~9節)
Eze33:8 わたしが悪者に、『悪者よ。あなたは必ず死ぬ』と言うとき、もし、あなたがその悪者にその道から離れるように語って警告しないなら、その悪者は自分の咎のために死ぬ。そしてわたしは彼の血の責任をあなたに問う。
Eze33:9 あなたが、悪者にその道から立ち返るよう警告しても、彼がその道から立ち返らないなら、彼は自分の咎のために死ななければならない。しかし、あなたは自分のいのちを救うことになる。
②預言者の使命は、神のことばを忠実に伝えることである。
③結果に関しては、神が責任を負ってくださる。
(3)「神のご計画の全体を、余すところなくあなたがたに知らせておいた」
①聖句をすべて教えたということではない。
②天地創造から終末論に至るまで、神のご計画の全貌を教えたということである。
③それゆえ、神の招きにどういう態度を取るかは、聴く側の責任である。
④神のご計画の全貌を教えることは、牧師・伝道者にとって最優先課題である。
⑤神のご計画の全体像を理解することは、健全なクリスチャン生活を送るための
必須条件である。
3.28~30節
Act20:28 あなたがたは自分自身と群れの全体とに気を配りなさい。聖霊は、神がご自身の血をもって買い取られた神の教会を牧させるために、あなたがたを群れの監督にお立てになったのです。
(1)「自分自身と群れの全体とに気を配りなさい」
①群れの世話をするために、先ず自分自身を整える必要がある。
(2)「神がご自身の血をもって買い取られた神の教会」
①教会は、神の所有物である。
②この聖句は、イエス・キリストの神性を教えている。
(3)長老たちは、聖霊によって立てられた群れの監督たちである。
①ギリシア語で「エピスコポス」である。
②彼らの使命は、神の教会を牧することである。
③同じ人たちが3つの用語で呼ばれている。
*長老(プレスビューテロス)(使20:17):尊厳ある地位
*監督(エピスコポス)(使20:28):導くという職責
*牧師(ポイメイン)(使20:28):霊的に養うという職責
4.29~31節
Act20:29 私が出発したあと、狂暴な狼があなたがたの中に入り込んで来て、群れを荒らし回ることを、私は知っています。
Act20:30 あなたがた自身の中からも、いろいろな曲がったことを語って、弟子たちを自分のほうに引き込もうとする者たちが起こるでしょう。
Act20:31 ですから、目をさましていなさい。私が三年の間、夜も昼も、涙とともにあなたがたひとりひとりを訓戒し続けて来たことを、思い出してください。
(1)「自分自身と群れの全体とに気を配りなさい」と命じる理由
①凶暴な狼が教会に入り込んで来る。
*狼(複数形)とは、偽教師たちのことである。
*彼らは、群れを荒らし回る。
②教会の中からも偽教師たちが現れる
*彼らは、キリストの弟子たちを自分のほうに引き込もうとする。
(2)問題への対処法
①目をさましている。
*霊的に注意深くしている。
②パウロが教えてきたことを思い出す。
*「私が三年の間、夜も昼も、涙とともにあなたがたひとりひとりを訓戒し
続けて来たこと」
*パウロの奉仕には、感情的な要素が深く関わっていた。
Ⅱ.結びの言葉(32~35節)
1.32節
Act20:32 いま私は、あなたがたを神とその恵みのみことばとにゆだねます。みことばは、あなたがたを育成し、すべての聖なるものとされた人々の中にあって御国を継がせることができるのです。
(1)パウロは、エペソの長老たちを神とその恵みのことばとに委ねた。
①救いを完成させてくださるのは、神である。
*聖徒たちに、千年王国を継がせてくださる。
②救いの完成のために用いられるのが、神のことばである。
*神への信仰は、みことばの実行によって証明される。
2.33~34節
Act20:33 私は、人の金銀や衣服をむさぼったことはありません。
Act20:34 あなたがた自身が知っているとおり、この両手は、私の必要のためにも、私とともにいる人たちのためにも、働いて来ました。
(1)メッセージの締めくくりに、再度、自らの手本を示す。
①パウロは、自給伝道を行った。
②その結果、同労者や弱い者たちを助けることができた。
3.35節
Act20:35 このように労苦して弱い者を助けなければならないこと、また、主イエスご自身が、『受けるよりも与えるほうが幸いである』と言われたみことばを思い出すべきことを、私は、万事につけ、あなたがたに示して来たのです。」
(1)自らの手本によって教えたことは、労苦して弱い者を助けるということである。
(2)「受けるよりも与えるほうが幸いである」
①このことばは、福音書には出て来ないが、イエスの教えの要約にはなっている。
②パウロは、主イエスのことばの伝承を用いている可能性がある。
Ⅲ.別離の祈り(36~38節)
1.36節
Act20:36 こう言い終わって、パウロはひざまずき、みなの者とともに祈った。
(1)通常は、立ったままの祈りであるが、ここでの祈りは特別である。
①ルカ22:41ゲツセマネの園でのイエス
②使9:40タビタを甦らせるためのペテロの祈り
③使21:5ツロの兄弟たちの別離の祈り
2.37~38節
Act20:37 みなは声をあげて泣き、パウロの首を抱いて幾度も口づけし、
Act20:38 彼が、「もう二度と私の顔を見ることがないでしょう」と言ったことばによって、特に心を痛めた。それから、彼らはパウロを船まで見送った。
(1)エペソの長老たちは、深い愛と悲しみを表現した。
①パウロの首を抱いて幾度も口づけした。
②心を痛めた。
*「もう二度と私の顔を見ることがないでしょう」と言ったことば
(2)エルサレムへの旅(使21:1~25)
①訪問地の信徒たちは、同様の態度を示す。
②それを詳細に記録している理由は、異邦人信者とエルサレムのユダヤ人の対比
*異邦人は福音に応答したが、ユダヤ人は拒否した。
結論: 聖書的リーダーシップ
1.謙遜な態度
2.忠実な奉仕
3.聖霊の導き
4.教会は神の所有物という認識
Act20:28 あなたがたは自分自身と群れの全体とに気を配りなさい。聖霊は、神がご自身の血をもって買い取られた神の教会を牧させるために、あなたがたを群れの監督にお立てになったのです。
(1)霊的指導者には、群れ全体に気を配る責任がある。
(2)霊的指導者には、神のことばで群れを養う責任がある。
(3)霊的指導者は、責任を負い過ぎてはならない。
(4)責任を負うことについて、バランスが必要である。
(5)イエスの教え(マタ23:8)
Mat23:8 しかし、あなたがたは先生と呼ばれてはいけません。あなたがたの教師はただひとりしかなく、あなたがたはみな兄弟だからです。
①これは、「教師と生徒の関係」についての教えである。
②ラビは、生徒に対して不当とも思えるほどの権威を行使した。
③彼らは、自分の生徒の職業や結婚にまで決定権を行使していた。
④このような考え方をそのまま推し進めていけば、カルト的な集団が出来上がる。
⑤イエスが禁止したのは、ある人が別の人に絶対的な権威を振るうことである。
5.偽教師と戦う能力
Act20:29 私が出発したあと、狂暴な狼があなたがたの中に入り込んで来て、群れを荒らし回ることを、私は知っています。
Act20:30 あなたがた自身の中からも、いろいろな曲がったことを語って、弟子たちを自分のほうに引き込もうとする者たちが起こるでしょう。
(1)パウロのテモテへの教え(2テモ4:1~4)
2Ti4:1 神の御前で、また、生きている人と死んだ人とをさばかれるキリスト・イエスの御前で、その現れとその御国を思って、私はおごそかに命じます。
2Ti4:2 みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。寛容を尽くし、絶えず教えながら、責め、戒め、また勧めなさい。
2Ti4:3 というのは、人々が健全な教えに耳を貸そうとせず、自分につごうの良いことを言ってもらうために、気ままな願いをもって、次々に教師たちを自分たちのために寄せ集め、
2Ti4:4 真理から耳をそむけ、空想話にそれて行くような時代になるからです。
(2)エペソ教会への褒め言葉(黙2:6)
Rev2:6 しかし、あなたにはこのことがある。あなたはニコライ派の人々の行いを憎んでいる。わたしもそれを憎んでいる。
①「ニコライ派」とは「人々の支配者」という意味である。
②聖職者と一般信徒とを区別し、聖職者による教会支配を意図する人々が出現し
つつあった。
③エペソ教会は、そのような傾向を憎んだ。
④主イエスは、その姿勢をよしとされた。
6.神に委ねる信仰
Act20:32 いま私は、あなたがたを神とその恵みのみことばとにゆだねます。みことばは、あなたがたを育成し、すべての聖なるものとされた人々の中にあって御国を継がせることができるのです。
(1)パウロは、後任の誰かにエペソの長老たちを委ねたのではない。
①神に委ねた。
②恵みのことばに委ねた。
(2)パウロの聖書観が明確に表現されている。
①みことばには、信徒を育成する力がある。
②みことばには、御国を継がせる力がある。
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