使徒の働き(53)―エルサレム会議(3)―

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エルサレム会議について学ぶ。

「エルサレム会議(3)
使徒15:13~21

 

1.はじめに
(1)エルサレム会議が開催された。
①異邦人は、先ずユダヤ教に改宗する必要があるのか。
②あるいは、信仰と恵みによって異邦人のままで救われるのか。
(2)これまでの会議の議事進行
①双方が意見を述べ、議論を重ねた。
②ペテロが、コルネリオの救いに関して証言した。
③パウロとバルナバが第一次伝道旅行について証言した。
(3)最後に、ヤコブが発言する。

 

2.アウトライン
(1)ペテロの説明への言及(13~14節)
(2)預言書からの引用(15~19節)
(3)4つの禁止令の提案(20~21節)
結論:アモ9:11~12の解釈(使15:16~18)

 

エルサレム会議について学ぶ。
Ⅰ.ペテロの説明への言及(13~14節)
1.13節
Act 15:13 ふたりが話し終えると、ヤコブがこう言った。「兄弟たち。私の言うことを聞いてください。
(1)この論争に関係した人たちがすべて意見を述べ、これ以上言うことがなくなった。
①結論を出す段階になった。
②議長であるヤコブがまとめの発言をする番になった。

 

(2)ヤコブとは誰か。
①彼は、イエスの異父弟である。母親が同じ(マリア)。
*なんの説明もなしにヤコブという名が出て来る。
*誰もがヤコブのことをよく知っていた。説明の必要がない。
②彼は、イエスの公生涯の間は不信者であった。
③復活のイエスに出会って、信者になった(1コリ15:7)。
1Co 15:7 その後、キリストはヤコブに現れ、それから使徒たち全部に現れました。
④ヤコブは、18年間エルサレム教会の監督を務めた(44~62年)。
*使徒たちはそれぞれ宣教地に散って行ったので、ヤコブが重責を負った。
⑤教会史の伝承では、彼は「義人ヤコブ」と呼ばれている。
⑥また、彼の膝はラクダの膝のように堅くなっていた(祈りのために)とされる。
⑦彼は、ヤコブの手紙の著者である。
*トーラーを大切にした。
*信仰には行動が伴うということを強調した。
*ヤコブの手紙は、イエスの「山上の垂訓」を思い出させる(マタ5~7章)。
⑧ヤコブが用いているギリシア語は、洗練されている。
*ガリラヤの労働者の一般的な教育水準以上のものを感じさせる。
*ギリシア・ローマ風文化のガリラヤ地方への影響が見直されている。
⑨彼は、人々から非常に信頼されていた。
⑩ヤコブは、聴衆が耳を傾けてくれるように要請した。

 

2.14節
Act 15:14 神が初めに、どのように異邦人を顧みて、その中から御名をもって呼ばれる民をお召しになったかは、シメオンが説明したとおりです。
(1)ヤコブは、ペテロが先程行った説明に言及する。
①ヤコブはペテロを「シメオン」というアラム語(ヘブル名はシモン)で呼んだ。
*ペテロのユダヤ性を強調している。
*親愛の情を表現している。
②「初めに」という言葉は重要である。
*バルナバとパウロが最初に異邦人伝道を行ったわけではない。
*神が異邦人を救われた。そのために、ペテロが用いられた。
③第一次伝道旅行の前から、異邦人の救いの問題は解決されていた。

 

(2)訳文の比較
「その中から御名をもって呼ばれる民をお召しになったかは」(新改訳)
「彼らの中から御名のために民をお召しになったかについては」(新改訳2017)
「異邦人の中から御自分の名を信じる民を選び出そうとなさった次第については」
(新共同訳)
「その中から御名を負う民を選び出された次第は」(口語訳)
「その中より御名を負ふべき民を取り給ひしことを」(文語訳)
「to take out of them a people for his name.」(KJV、ASV)
①「a people for his name」とは、かつてはイスラエルの民だけを指した。
②神が主導権を取って、異邦人伝道を行われた。
③神は、ユダヤ人だけでなく、異邦人の中からも、残れる者を呼び出された。
*これが、新約聖書が教える教会の姿である(エペ2:11~22、3:6)。
*ユダヤ人信者と異邦人信者は、キリストにあって対等な関係にある。
(3)人間の体験は、聖書に照らしてその正当性を吟味する必要がある。
①エルサレム会議は、聖書的裏付けを必要とした。
②そこでヤコブは、旧約聖書の預言を引用し、結論を出す。

 

Ⅱ.預言書からの引用(15~19節)
1.15節
Act 15:15 預言者たちのことばもこれと一致しており、それにはこう書いてあります。
(1)旧約預言は、異邦人がユダヤ教とは無関係に救われることを預言している。
①「預言者たちのことば」と複数形になっている。
②アモス書がその代表例として引用されている。
③12の小預言書のどこにも、異邦人はユダヤ人にならないと救われないとは書か
れていない。

 

2.16~18節
Act 15:16 『この後、わたしは帰って来て、/倒れたダビデの幕屋を建て直す。/すなわち、廃墟と化した幕屋を建て直し、/それを元どおりにする。
Act 15:17 それは、残った人々、すなわち、/わたしの名で呼ばれる異邦人がみな、/主を求めるようになるためである。
Act 15:18 大昔からこれらのことを知らせておられる主が、/こう言われる。』
(1)これは、アモ9:11~12からの引用である。
①ヤコブのアモス書からの引用はかなり恣意的であるという批判がある。
*彼は、七十人訳聖書から引用している。しかも、言葉を微妙に変えている。
*「エドムの残りの者」が「残った人々」になっている。
②しかし、ヤコブはヘブル語聖書から正確に引用している可能性が高い。
*ヘブル語では、エドムとアダムは同一の言葉(子音3文字)である。
*エドムという読みは、後代に母音(ニクダー)を付けて決まったもの。
*死海写本の中に、全く同じ引用文が出て来る(ロングネッカーの指摘)。
③引用法を問題にするよりも、アモ9:11~12の本来の意味を考えた方がよい。

 

(2)アモ9:11~12の意味
Amo 9:11 その日、わたしは/ダビデの倒れている仮庵を起こし、/その破れを繕い、その廃墟を復興し、/昔の日のようにこれを建て直す。
Amo 9:12 これは彼らが、エドムの残りの者と、/わたしの名がつけられた/すべての国々を手に入れるためだ。/──これをなされる【主】の御告げ──
①「この後」(その日)とは、大患難時代の後の時代である。
②「倒れたダビデの幕屋」は、誤訳である。「幕屋」ではなく「仮庵」である。
③「ダビデの仮庵」とは、ダビデ王国を意味する比喩的表現である。
*2列25:7で、ダビデの仮庵は倒れた。
2Ki 25:7 彼らはゼデキヤの子らを彼の目の前で虐殺した。王はゼデキヤの目をつぶし、彼を青銅の足かせにつないで、バビロンへ連れて行った。
④「幕屋を建て直し、それを元どおりにする」は、ダビデ王国の回復を意味する。
⑤ダビデ王国が回復されるのは、メシア的王国においてである。
⑥メシア的王国においては、主を求める異邦人が多く存在する。

 

(3)ヤコブの論点の整理
①最初にペテロが経験した異邦人の救いは、聖書で預言されていたことである。
②アモス書は、メシア的王国におけるダビデ王国の回復を預言している。
③メシア的王国が地上に成就した時、異邦人の信者が多く存在することになる。
④アモスは、異邦人は異邦人のままで救われると預言している。
⑤それなら、メシア的王国が成就する前から異邦人が救われてもおかしくはない。
⑥異邦人も救われることは、昔からの神の計画である。

 

3.19節
Act 15:19 そこで、私の判断では、神に立ち返る異邦人を悩ませてはいけません。
(1)ユダヤ人信者は、異邦人信者に割礼を要求してはならない。
①異邦人もまた、恵みと信仰によって救われる。
②これは、ペテロの体験であり、聖書の教えでもある。
(2)これで教理的な問題は解決した。
①ユダヤ人信者と異邦人信者の関係をどうするかという現実問題が残っている。

 

Ⅲ.4つの禁止令の提案(20~21節)
1.20節
Act 15:20 ただ、偶像に供えて汚れた物と不品行と絞め殺した物と血とを避けるように書き送るべきだと思います。
(1)4つの禁止令
①非常に現実的な内容の禁止令である。
②4つの内、3つまでが食物に関することである。
*食事の席でのユダヤ人と異邦人の交わりを想定している。
③これらの禁止令は、普遍的な命令ではない。
*ユダヤ人信者と交流がある場合に、実行すべき禁止令である。
④背景にあるのは、在留異国人に対する命令である(レビ記17~18章)。

 

(2)1番目の禁止令:「偶像に供えて汚れた物」
①ユダヤ人信者のことを配慮し、偶像に供えられた肉は避ける。
②パウロが教えるキリスト者の自由は、この禁止令とは調和しない。
*ロマ14:20
Rom 14:20
食べ物のことで神のみわざを破壊してはいけません。すべての物はきよいのです。しかし、それを食べて人につまずきを与えるような人の場合は、悪いのです。
③この禁止令は、特定の状況下で実行すべきものである。

 

(2)2番目の禁止令:「不品行」
①唯一、食物に関係のない禁止令である。
②不品行とは「ポルネイア」であり、幅広い言葉である。
*これは、性的罪のことではない。
*性的罪が常に悪であることは、改めて言うまでもない。
*ここでの不品行とは、レビ18:6〜18にある近親婚のことであろう。

 

(3)3番目の禁止令:「絞め殺した物」
①絞め殺した物とは、血抜きをしていない物である(レビ17:13)。

 

(4)4番目の禁止令:「血」
①血を飲むこともユダヤ人にとっては忌むべきことである(レビ17:10~11)。
②これもまた、彼らに不快感を与えないようにするために、避けるべきである。

 

(5)ヤコブは、本質的な点では妥協しなかった。
①そうでない部分においては、相手の立場を尊重するように勧めた。
②教会の中に分裂が起こらないようにした。
③4つの禁止令は、使徒の働きの中で3回も出て来る(15:20、15:29、21:25)。
2.21節
Act 15:21 昔から、町ごとにモーセの律法を宣べる者がいて、それが安息日ごとに諸会堂で読まれているからです。」
(1)多くの町には、会堂があり、そこでモーセの律法が教えられていた。
①ユダヤ人たちは、モーセの律法の内容をよく知っていた。
②教会の中にユダヤ人信者がいる場合は、彼らの感じ方に配慮すべきである。

 

結論:
1.アモ9:11~12の解釈(使15:16~18)
Act 15:16 『この後、わたしは帰って来て、/倒れたダビデの幕屋を建て直す。/すなわち、廃墟と化した幕屋を建て直し、/それを元どおりにする。
Act 15:17 それは、残った人々、すなわち、/わたしの名で呼ばれる異邦人がみな、/主を求めるようになるためである。
Act 15:18 大昔からこれらのことを知らせておられる主が、/こう言われる。』
(1)これは、ダビデの礼拝の回復の預言ではない。
①そう解釈する人たちは、礼拝における踊りと賛美を強調する。
②踊りも賛美も重要ではあるが、この預言とは無関係である。
③「ダビデの幕屋」が誤訳であることに注意しよう。
④正しくは「ダビデの仮庵」であり、ダビデ王国の比喩的表現である。

 

(2)これは、教会の誕生の預言ではない。
①無千年王国説では、これを教会誕生の預言と解釈する。
②しかし教会は、奥義である(旧約聖書には預言されていない)。
③アモス書は、イスラエルの民に関する預言である。
④ヤコブは、アモ9:11~12が今教会において成就したとは言っていない。

 

(3)これは、ダビデ王国の回復の預言である。
①ダビデ王国の回復は、ダビデ契約の成就である(2サム7:12~16)。
②この預言が成就するのは、千年王国においてである。
③その時、救われた異邦人たちもそこにいる。
④彼らは、ユダヤ教とは無関係に救われる。

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