60分でわかる新約聖書(3)ルカの福音書

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ルカの福音書について学ぶ。

60分でわかる新約聖書(3)「ルカの福音書」

1.はじめに
(1)ルカの福音書の位置づけ

①ルカの福音書と使徒の働きで、新約聖書の28%を占めている。
②共観福音書のひとつではあるが、他の福音書にはない箇所が多く出て来る。
*20の奇跡物語が出て来るが、その内の6つはルカだけのもの。
*23のたとえ話が出て来るが、その内の18はルカだけのもの。
・放蕩息子のたとえ
・良きサマリヤ人のたとえ
*ヨハネとイエスの誕生物語が詳細に語られている。
*12歳のイエスの物語はルカだけのものである。
*9:51~19:27は、ルカ独特の箇所である。
③福音書は、単なるイエス・キリストの伝記ではない。
④4人の著者たちは、ある読者を想定し、その必要に答えるために執筆した。
⑤ルカは、理想的な人間イエスを描写している。
*ギリシア人(異邦人)読者を想定して執筆している。

(2)著者

①ルカの福音書にも使徒の働きにも、ルカという名称は出て来ない。
②使徒の働きは、ルカの福音書の続編である。
③使徒の働きには、「we」セクションが出て来る。
*使16:10~17、20:5~21:18、27:1~28:16
*ルカがパウロに同行している箇所である。
④使徒の働きの著者はルカである。
*それゆえ、ルカの福音書の著者もルカである。
⑤ルカという名前は、新約聖書の中に3回出ている。

*コロ4:14
Col 4:14 愛する医者ルカ、それにデマスが、あなたがたによろしくと言っています。
*2テモ4:11
2Ti 4:11 ルカだけは私とともにおります。マルコを伴って、いっしょに来てください。彼は私の務めのために役に立つからです。
*ピレ1:24
Phm 1:24 私の同労者たちであるマルコ、アリスタルコ、デマス、ルカからもよろしくと言っています。

⑥ルカは異邦人であったとするのが通説である。
*根拠は、コロ4:14でルカが異邦人たちの中に置かれていること。
⑦ルカはユダヤ人であったとする節もある(フルクテンバウム師)。
*ユダヤ人の習慣を知悉している。
*エルサレムに対する愛が顕著である。
*ロマ3:1~2

Rom 3:1 では、ユダヤ人のすぐれたところは、いったい何ですか。割礼にどんな益があるのですか。
Rom 3:2 それは、あらゆる点から見て、大いにあります。第一に、彼らは神のいろいろなおことばをゆだねられています。

(3)執筆年代

①使徒の働きは、パウロがローマの獄中にいる時点で終わっている。
*これは、ネロによる迫害(紀元64年)以前のことである。
②紀元64年の前に使徒の働きが完成していたと見るべきである。
③ルカの福音書はそれよりも数年前、58年~60年頃に書かれたと思われる。

2.アウトライン:ルカの福音書の特徴
Ⅰ.2つの執筆目的
Ⅱ.異邦人読者
Ⅲ.福音の普遍性の強調
Ⅳ.祈りの強調
Ⅴ.パウロの影響
結論

ルカの福音書について学ぶ。
Ⅰ.2つの執筆目的
1.テオピロの信仰を励ますため
(1)ルカの福音書も使徒の働きも、テオピロに献上された。

①キリストに対する信仰は、歴史的事実の上に築かれている。

(2)ルカは歴史家である。

①ルカ1:3

Luk 1:3 私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。

②目撃者たちから情報を得た。
③ヘロデの王宮とも接触があった。
*国主ヘロデの乳兄弟マナエン(使13:1)
④当時流布していた諸資料を吟味した。
⑤聖霊の導きによって、それらの出来事を時間順にまとめた。

2.イエスを「人の子」として示すため
(1)ギリシア人たちは、理想的な人間像を求めていた。

①ルカはイエスを、力強いが、憐れみに富んだ方として描いた。

(2)ユダヤ人たちは、「人の子」を拒絶した。

①その結果、異邦人に福音が伝えられるようになった。
②異邦人もまた、神の国のプログラムを知り、救われるように招かれた。

Ⅱ.異邦人読者
1.メシアの系図が、ヨセフから始まり、アダムにまで遡っている。
(1)マタ1:1
Mat 1:1 アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図。
(2)ルカ3:38
Luk 3:38 エノスの子、セツの子、アダムの子、このアダムは神の子である。

2.ユダヤの地名に解説を入れている。
(1)「ガリラヤの町カペナウム」(4:31)
(2)「ガリラヤの向こう側のゲラサ人の地方」(8:26)
(3)「さてイエスは、昼は宮で教え、夜はいつも外に出てオリーブという山で過
ごされた」(21:37)
(4)「アリマタヤというユダヤ人の町の人」(23:51)

3.ユダヤ的概念や用語を避けている。
(1)ラビの代わりに、「didaskalos」(先生)というギリシア語を使用している。
(2)メシア預言の成就にさほど触れていない。

①メシア預言の成就という表現が5度出てくる。
②その内の4回までは、イエスのイスラエルに対する教えの中で出て来る。

Ⅲ.福音の普遍性の強調
1.ユダヤ人社会の底辺にいる人たちへの愛
(1)罪人たち、取税人たち、村八分になった人たち
(2)婦人たち、子どもたち
(3)イエスは、人間が経験する痛みや悲しみをよく知っておられた。

2.異邦人たちやサマリヤ人たちへの愛
(1)異邦人たちも、メシアの祝福に与った。
(2)サマリヤ人たちは、メシアを信じる信仰へと導かれた。

Ⅳ.祈りの強調
1.重要な局面でのイエスの祈り
(1)ルカ3:21
Luk 3:21 さて、民衆がみなバプテスマを受けていたころ、イエスもバプテスマをお受けになり、そして祈っておられると、天が開け、
(2)ルカ5:16
Luk 5:16 しかし、イエスご自身は、よく荒野に退いて祈っておられた。
(3)ルカ6:12
Luk 6:12 このころ、イエスは祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされた。
(4)ルカ22:32
Luk 22:32 しかし、わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りました。だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」
(5)ルカ22:40~41
Luk 22:40 いつもの場所に着いたとき、イエスは彼らに、「誘惑に陥らないように祈っていなさい」と言われた。
Luk 22:41 そしてご自分は、弟子たちから石を投げて届くほどの所に離れて、ひざまずいて、こう祈られた。

Ⅴ.パウロの影響
1.ルカはパウロの伝道旅行に参加し、パウロの教えの影響を受けたはずである。
(1)信仰
(2)悔い改め
(3)憐れみ

2.赦しの強調
(1)ルカ3:3
Luk 3:3 そこでヨハネは、ヨルダン川のほとりのすべての地方に行って、罪が赦されるための悔い改めに基づくバプテスマを説いた。
(2)ルカ5:18~26

①屋根からつり降ろされた病人へのことば
②「「友よ。あなたの罪は赦されました」

(3)ルカ6:37
Luk 6:37 さばいてはいけません。そうすれば、自分もさばかれません。人を罪に定めてはいけません。そうすれば、自分も罪に定められません。赦しなさい。そうすれば、自分も赦されます。
(4)ルカ7:36~50

①イエスの足に香油を注いだ罪の女
②「だから、わたしは『この女の多くの罪は赦されている』と言います。それ
は彼女がよけい愛したからです。しかし少ししか赦されない者は、少ししか愛
しません」

(5)ルカ17:3~4
Luk 17:3 気をつけていなさい。もし兄弟が罪を犯したなら、彼を戒めなさい。そして悔い改めれば、赦しなさい。
Luk 17:4 かりに、あなたに対して一日に七度罪を犯しても、『悔い改めます』と言って七度あなたのところに来るなら、赦してやりなさい。」
(6)ルカ23:34
Luk 23:34 そのとき、イエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」彼らは、くじを引いて、イエスの着物を分けた。
(7)ルカ24:47
Luk 24:47 その名によって、罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる。

結論
1.1コリ15:45~47
1Co 15:45 聖書に「最初の人アダムは生きた者となった」と書いてありますが、最後のアダムは、生かす御霊となりました。
1Co 15:46 最初にあったのは血肉のものであり、御霊のものではありません。御霊のものはあとに来るのです。
1Co 15:47 第一の人は地から出て、土で造られた者ですが、第二の人は天から出た者です。
(1)イエスは、最後のアダムである。

①アダムとは、人類の代表である。
②最初のアダムは血肉のものであり、堕落した。
③最後のアダムは、御霊のものであり、生かす御霊となった。
④イエスの後に、人類の代表となるアダムは登場しない。

(2)イエスは、第2の人である。

①イエスに続く第3の人、第4の人、第1000の人が出て来る。
②ヘブ2:17

Heb 2:17 そういうわけで、神のことについて、あわれみ深い、忠実な大祭司となるため、主はすべての点で兄弟たちと同じようにならなければなりませんでした。それは民の罪のために、なだめがなされるためなのです。

③救いの完成は、イエスのようになることである。

(3)イエスは、栄光の体に復活された。

①ルカ24:15~16

Luk 24:15 話し合ったり、論じ合ったりしているうちに、イエスご自身が近づいて、彼らとともに道を歩いておられた。
Luk 24:16 しかしふたりの目はさえぎられていて、イエスだとはわからなかった。

(4)ルカの福音書の要約

①神が人となられた。
②このお方は、完璧な人であった。
③このお方は、罪人の罪を贖うために死なれた。
④そして、栄光の体に復活された。
⑤ユダヤ人がイエスを拒否したので、福音は異邦人に伝えられるようになった。
⑥イエスは、栄光の体を持ちながら今も生きておられる。
⑦最後のアダムであるイエスにつながるなら、その人は、「理想の人」として完成
される。

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