60分でわかる旧約聖書(29)ヨエル書

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ヨエル書の内容について学ぶ。

60 分でわかる旧約聖書( 29 )「ヨエル書」

1.はじめに

(1)ヨエル書の位置づけ

①大預言書(the Major Prophets)

*イザヤ書、エレミヤ書、哀歌、エゼキエル書、ダニエル書

②小預言書(the Minor Prophets)

*ホセア書からマラキ書までの12書。

③ヨエル書は、捕囚期前預言書(12)のひとつである。

 

(2)ヨエル書の著者

Joe 1:1 ペトエルの子ヨエルにあった【主】のことば。

①ヨエルという名は、「【主】(ヤハウェ)は神」という意味である。

②彼に関しては、父の名がペトエルであるということ以外に情報がない。

③彼は、自分が語る内容は、【主】から与えられたものであると言っている。

 

(3)ヨエル書の時代背景

①ヨエルは南王国ユダの預言者である。

②時代的には、オバデヤに続く預言者である。

*オバデヤ書のテーマである「【主】の日」が取り上げられている。

③アモス書に2度引用されているので、アモス以前の預言者だと分かる。

*ヨエル3:16とアモス1:2、ヨエル3:18とアモス9:13

④ヨエル書では偶像礼拝の罪はほとんど問題にはなっていない。

*南王国が比較的安定していた時期に活動していたということであろう。

*恐らく、ヨアシュ王の時代(前835年頃)に活動した預言者であろう。

*ヨアシュは、南王国の善王のひとりであった。

 

(4)ヨエル書の特徴

①「【主】の日」が中心テーマである。

*オバデヤが取り上げていた「【主】の日」というテーマを発展させた。

*1:15、2:1、11、31、3:14など。

*「【主】の日」とは、【主】の裁きの日、究極的には大患難時代のこと。

 

2.アウトライン

Ⅰ.いなごの害( 1章)

Ⅱ.悔い改めの呼びかけ(2:1~17)

Ⅲ.赦しと回復(2:18~27)

Ⅳ.栄光の未来(2:28~3:21)

 

ヨエル書の内容について学ぶ。

Ⅰ.いなごの害( 1 章)

1.いなごによる大災害

Joe 1:4 かみつくいなごが残した物は、いなごが食い、/いなごが残した物は、ばったが食い、/ばったが残した物は、/食い荒らすいなごが食った。

(1)ユダの地をいなごの大群が襲った。

①その害は、今まで聞いたこともないほど激しく絶望的なものであった。

(ILL)今でも、いなごの害は深刻なものである。

 

(2)4種類のいなご

①「かみつくいなご」、「いなご」、「ばった」、「食い荒らすいなご」

②4種類のいなごのことではなく、4回にわたるいなごの災害のことであろう。

③4回目のいなごの襲来の後には、何も残されていない。

④旧約聖書では、4という数字は破滅の激しさを象徴的に表す数字である。

*エレ15:3、エゼ14:21参照

 

(3)4種類の嘆き

①酔っ払いは、ぶどう酒が断たれたので嘆いている。

②一般民衆は、若い妻が夫を亡くした時のように泣き悲しんでいる。

③祭司たちは、喪に服している。

*穀物のささげ物と注ぎのぶどう酒が断たれた。

*ささげ物の一部は、祭司の収入になるが、それが断たれた。

④農夫たちも恥を感じ、泣きわめいている。

*収穫がなくなった。

 

2.断食の布告

Joe 1:13 祭司たちよ。荒布をまとっていたみ悲しめ。/祭壇に仕える者たちよ。泣きわめけ。/神に仕える者たちよ。宮に行き、/荒布をまとって夜を過ごせ。/穀物のささげ物も注ぎのぶどう酒も/あなたがたの神の宮から退けられたからだ。

(1)ヨエルは祭司たちに、断食の布告と、きよめの集会の開催を呼びかけた。

①荒布をまとったまま寝るのは、事態がいかに深刻であるかを表している。

 

(2)いなごの大災害は、ユダの民にとっては神の前に悔い改める機会となった。

①ヨエルは、この大災害を下敷きにして、預言を語る。

②それは、将来起ころうとしてるより悲惨な裁き(大患難時代)の預言である。

 

3.【主】の日が来るという警告

Joe 1:15 ああ、その日よ。【主】の日は近い。/全能者からの破壊のように、その日が来る。

①ヨエルは、この書で5回「【主】の日」という言葉を使用している。

*ここが、その最初のものである。

②その日は、全能者からの破壊のように来る。

③【主】の日は、耐え難いほどの苦難の日(大患難時代)である。

 

Ⅱ.悔い改めの呼びかけ( 2 1 17

1.【主】の日の描写

Joe 2:1 シオンで角笛を吹き鳴らし、/わたしの聖なる山でときの声をあげよ。/この地に住むすべての者は、わななけ。/【主】の日が来るからだ。その日は近い。

(1)第1の災害はいなごの侵入であったが、次に来る災害は敵軍の侵入である。

①旧約時代には、さまざまな理由で角笛を吹き鳴らした。

②ここでは、敵軍の侵入を告げるために角笛が吹かれる(民10:9参照)。

③第2の侵入が、「【主】の日が来るからだ。その日は近い」と表現される。

 

(2)メシア的王国が地上に出現する前に、最終的な神の怒りが地上に下る。

①【主】の日は、「やみと、暗黒の日」「雲と、暗やみの日」である。

②【主】の日が暗黒の日であることは、他の預言者たちも預言している。

*イザ8:22、60:2

*アモ5:18〜20

*ゼパニヤ1:14〜16

③地上を破壊する方法は、火と炎である。

④かつてエデンの園のように美しかった所が、荒れ果てた荒野に変貌する。

⑤侵入して来るのは、人間ではなく、悪霊どもである。

⑥彼らは、徹底的に破壊行為を遂行し、国々の民はその前でもだえ苦しみむ。

 

2.断食ときよめの集会

Joe 2:12 「しかし、今、──【主】の御告げ──/心を尽くし、断食と、涙と、嘆きとをもって、/わたしに立ち返れ。」

Joe 2:13 あなたがたの着物ではなく、/あなたがたの心を引き裂け。/あなたがたの神、【主】に立ち返れ。/主は情け深く、あわれみ深く、/怒るのにおそく、恵み豊かで、/わざわいを思い直してくださるからだ。

(1)迫り来る【主】の日を前に、【主】からの呼びかけがなされる。

①外面の悔い改めではなく、内面の悔い改め(心を引き裂く)が必要である。

「主は情け深く、あわれみ深く、怒るのにおそく、恵み豊かで、わざわいを

思い直してくださるからだ」

③これは、出34:6の原則の再述である。

 

(2)「シオンで角笛を吹き鳴らせ」

①敵の侵入を告げるためではなく、断食ときよめの集会を召集するため。

*民10:10参照

②断食ときよめの集会を召集する理由は、迫り来る神の怒りから逃れるため。

③この集会には、老若男女の全員が招かれている。

④通常は出席を免除される新婚の男女も、ここでは例外ではない。

⑤祭司たちは、泣きながら祈りをささげなければならない。

*「選びの民であるイスラエルを滅ぼさず、あわれんでください」

*「神を知らない者たちが、神の御名をあざけることがないようにしてく

ださい」

*これは、詩篇79:10と同じ祈りである。

 

Ⅲ.赦しと回復の約束( 2 18 27

1.神は、イスラエルをねたむほど愛しておられる。

Joe 2:18 【主】はご自分の地をねたむほど愛し、/ご自分の民をあわれまれた。

(1)【主】は、イスラエルの地、特にエルサレムを愛しておられる。

①その愛は、ねたむほどのものである。

*出34:14

②イスラエルの地をねたむほどに愛される神は、イスラエルの民をもあわれ

まれる。

③イスラエルの民の多くが殺されても、全滅することは決してない。

 

(2)ハルマゲドンの戦いへの言及

Joe 2:20 わたしは北から来るものを、/あなたがたから遠ざけ、/それを荒廃した砂漠の地へ追いやり、/その前衛を東の海に、/その後衛を西の海に追いやる。/その悪臭が立ち上り、/その腐ったにおいが立ち上る。/主が大いなることをしたからだ。」

①北からの軍勢がイスラエルの地に向かって攻めて来ると、最後の戦いであ

るハルマゲドンの戦いが始まる。

②しかし、神の力によってイスラエルは滅亡を免れる。

③北から攻めて来た敵の軍勢は、滅ぼされる。

 

(3)神の「ねたむほどの愛」は、キリストにある私たちにも向けられている。

Jas 4:5 それとも、「神は、私たちのうちに住まわせた御霊を、ねたむほどに慕っておられる」という聖書のことばが、無意味だと思うのですか。

 

2.勝利の喜び

(1)3つのものが喜ぶ。

①全地が喜ぶ。

*【主】が大いなることをされるから。

②動物界も喜ぶ。

*不毛の地である荒野に牧草が生え、豊かな食物が約束されるから。

③イスラエルの民(シオンの子ら)も、【主】にあって楽しみ喜ぶ。

(2)以上の喜びは、すべてメシア的王国(千年王国)に関係したものである。

①メシアの再臨によって、被造世界は栄光を回復するようになる。

 

(3)イスラエルの民が喜ぶ理由

Joe 2:23 シオンの子らよ。/あなたがたの神、【主】にあって、楽しみ喜べ。/主は、あなたがたを義とするために、/初めの雨を賜り、大雨を降らせ、/前のように、初めの雨と後の雨とを/降らせてくださるからだ。

①イスラエルの地には、季節ごとに必要な雨が与えられる。

*秋に降るのが初めの雨、春に降るのが後の雨である。

②それらの雨によって、豊かな収穫が保障される。

③神の裁きを受けて苦しんだ年数と同じ期間、主からの祝福が注がれる。

 

(4)赦しと回復の約束のクライマックス

Joe 2:27 あなたがたは、/イスラエルの真ん中にわたしがいることを知り、/わたしがあなたがたの神、【主】であり、/ほかにはないことを知る。/わたしの民は永遠に恥を見ることはない。

①イスラエルの民は、永遠に恥を見ることはない。

②私たちの神は、確かに私たちの真ん中にいてくださる。

 

Ⅳ.栄光の未来の預言( 2 28 3 21

1.聖霊の傾注

Joe 2:28 その後、わたしは、/わたしの霊をすべての人に注ぐ。/あなたがたの息子や娘は預言し、/年寄りは夢を見、若い男は幻を見る。

Joe 2:29 その日、わたしは、しもべにも、はしためにも、/わたしの霊を注ぐ。

(1)ヨエル2:28〜32は、ブル語聖書では3章を形成している。

①それほどに重要な箇所である。

②日本語聖書の3章は、ヘブル語聖書では4章になっている。

③この箇所のテーマは、将来起こる聖霊の傾注とイスラエルの民族的救い。

④「その後」とは、終わりの日のこと。

 

(2)神は、「わたしの霊をすべての人に注ぐ」と言われる。

「すべての人」とは大患難時代に生きているすべてのイスラエル人のこと。

「あなたがたの息子や娘」も、イスラエル人のこと。

③聖霊がすべてのイスラエルの民の上に注がれる。

④彼らは、預言をしたり、夢や幻を見たりするようになる。

 

(3)聖霊が注がれることは、他の預言者たちも預言している。

①エゼ39:29、ゼカ12:10など

②ホセア5章と6章では、聖霊の傾注は再臨の前の3日間に起こることが預

言されている。

③ロマ11:26の「イスラエルはみな救われる」も、同じ内容の預言である。

 

(4)聖霊傾注の前提条件とは何か。

①【主】の日が来る前に、天変地異が起こる(30節)。

②暗黒が地上を支配する(31節)。

③大患難時代の中で、イスラエルの民は悔い改めに導かれる。

「主の名を呼ぶ者はみな救われる」とはそういう意味である。

 

(5)使徒2章で、ペテロはヨエ2:16~21を引用した。

①ヨエルが預言したことがすべてペンテコステの日に成就したわけではない。

②ヨエルの預言は、終末時代に起こるユダヤ人の民族的救いに関するもの。

③ペテロは、ペンテコステの日に起こったことと、ヨエルの預言の間に、ひと

つの共通点があることに着目した。

④それは、「わたしの霊を注ぐ」ということである。

⑤その1点をユダヤ人たちに示すために、ペテロはヨエルの預言を引用した。

⑥ラビたちの習慣では、全部が成就していなくても、ある1点で共通性があ

れば、それを引用することは許されることであった。

 

2.千年王国設立の前に起こること

(1)異邦人の裁き

①大患難時代の終了と千年王国の設立の間に、この裁きが行なわれる。

②すべての国民が、ヨシャパテの谷に集められる。

③裁きの基準は、大患難時代の間にイスラエルの民をどのように扱ったかと

いうことである。

④羊と山羊に区別される。

 

3.メシア的王国(千年王国)

(1)2つの水の流れ

Joe 3:18 その日、山々には甘いぶどう酒がしたたり、/丘々には乳が流れ、/ユダのすべての谷川には水が流れ、/【主】の宮から泉がわきいで、/シティムの渓流を潤す。

①ユダのすべての谷川には水の流れがある。

*雨季にだけ水が流れるワジではなく、常に水のある川である。

*山々にはぶどうが豊かに実り、丘々は豊かな乳産物を産出する。

②もうひとつの水の流れは、神殿の敷居の下から流れ出る泉である。

*神殿から東に流れ出し、シティムの渓流(ヨルダン渓谷)を潤す。

*死海の北西岸から塩水の中に流れ込み、そこを最高の漁場に変える。

・エゼ47:1〜12参照

 

(2)「羊の異邦人」は、それぞれの民に割り当てられた地に住むようになる。

①教会時代の聖徒たちは、メシアとともに異邦人諸国を統治する特権に与る。

②パウロはローマのクリスチャンたちにこう書き送っている。

Rom 8:17 もし子どもであるなら、相続人でもあります。私たちがキリストと、栄光をともに受けるために苦難をともにしているなら、私たちは神の相続人であり、キリストとの共同相続人であります。

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