私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
60分でわかる旧約聖書(22)雅歌
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雅歌の意味とその現代的適用について学ぶ。
60 分でわかる旧約聖書( 22 )「雅歌」
1.はじめに
(1)雅歌は、聖書の中で最も解釈が難しい書である。
①その証拠に、歴史上、雅歌は種々の方法で解釈されてきた。
②と同時に、官能的であるとして、雅歌を遠ざけて来た人たちもいた。
(2)書名
①「ソロモンの雅歌」(The Song of Solomon)
②ヘブル語では、「歌の歌、ソロモンによる」
*The Song of Songs, Which is by Solomon’s
*「歌の歌」は、最上級を指す言葉である。
*「雅歌」の意味は、「歌の中の最高の歌」である。
③「彼は三千の箴言を語り、彼の歌は一千五首もあった」(1列4:32)
*それらの歌の中の最高峰が、雅歌である。
(3)著者はソロモンである。
①ソロモンの名が7ケ所に登場する。
*1:1「ソロモンの雅歌」
*1:5、3:7、9、11、8:11、12
②自然界への言及は、ソロモンの興味と合致する。
「彼はレバノンの杉の木から、石垣に生えるヒソプに至るまでの草木につい
て語り、獣や鳥やはうものや魚についても語った」 (1列4:33)。
③王が所有する馬や戦車への言及がある。
④地理的状況が、統一王国時代のものである。
⑤ユダヤの伝承
*ソロモンは、青年時代に雅歌を書いた。
*壮年期に箴言を書いた。
*この世の生活に飽きた頃に、伝道者の書を書いた。
(4)執筆の目的
①どの解釈法を採用するかによって、結論が異なる。
②字義通りの解釈を採用すると、「結婚生活への賛歌」となる。
2.アウトライン
(1)5つの代表的な解釈法
①寓喩(比ゆ的解釈)的解釈
②型としての解釈
③戯曲(2名ないし3名の主役)
④歌集(関連性のない愛の賛歌が集められたもの)
⑤字義通りの解釈
(2)字義通りの解釈に基づくアウトライン
①牧歌①:結婚式当日(1:2~2:7)
②牧歌②:婚約時代(2:8~3:5)
③牧歌③:結婚式の描写(3:6~5:1)
④牧歌④:性的関係のずれ(5:2~6:9)
⑤牧歌⑤:ガリラヤへの帰省(6:10~8:14)
雅歌の意味とその現代的適用について学ぶ。
Ⅰ. 5 つの代表的な解釈法
1 .寓喩(比ゆ的解釈)的解釈
(1)これは、2人の恋人に関する実話でなく、あることを教えるための寓話。
(2)何を教えているかについても意見の相違が見られる。
①ほとんどのユダヤ人学者と一部の福音派の学者は、これをイスラエルに対
する神の愛の物語だと解釈する。
②多くの福音派の学者は、これを教会に対するキリストの愛の物語だと解釈
する。
(3)この解釈の問題点は、主観に基づく自己解釈がどこまでも広がることである。
①文字の背後に隠された意味があると考える。
②雅歌1:5(オリゲネスの解釈)
Son 1:5 エルサレムの娘たち。/私はケダルの天幕のように、/ソロモンの幕のように、/黒いけれども美しい。
*教会は罪で汚れている。
*しかし、回心後は霊的に美しくなった。
2 .型としての解釈
(1)この解釈では、雅歌の物語は事実であるとされる。
①歴史的事実が、あることを指し示す型になっている。
②寓話的解釈では、物語は実話ではない。
(2)あることがなんであるかに関しては、やはり、2つの立場がある。
①イスラエルに対する神の愛
②教会に対するキリストの愛
(3)この解釈法の問題点は、歴史的事実の内容がほぼ無視されることである。
3 .戯曲( 2 名ないし 3 名の主役)
(1)雅歌の内容を「幕」や「場」に区切ることは不可能である。
(2)当時のイスラエルには、戯曲という文学類型は存在していなかった。
4.歌集(関連性のない愛の賛歌が集められたもの)
(1)雅歌の物語には、追跡可能な筋がある。
①婚約時代(1~3章)
②結婚式(3~5章)
③結婚生活(5~8章)
5.字義通りの解釈
(1)雅歌の物語は、実際に存在した2人の恋人の愛の物語だとされる。
(2)神が用意してくださった理想的な男女の愛の関係について詠った歌である。
(3)物語の流れ
①ソロモンは、下ガリラヤにぶどう畑を所有していた。
②ある日そこを訪問し、ぶどう畑で働いている女に出会って恋に陥った。
*彼女の家族構成は、母親、妹、少なくとも2人以上の兄。
*父親は登場しない。恐らく亡くなっていたのであろう。
③彼女は、兄たちから強制されて、ぶどう畑で働いていた。
*そのため、顔は日焼けしていた。
④ソロモンは彼女と交際を始め、ついに結婚を申し込んだ。
*彼女はそれを受け入れた。
⑤ソロモンは行列を仕立て、彼女を花嫁としてエルサレムに上らせる。
⑥宮廷で結婚式と婚宴が行われ、ふたりは初夜を迎える。
⑦その後、シュラムの女は肉体関係における困難を覚える。
*彼女はソロモンを拒否し、王は彼女から離れて行く。
⑧彼女は自分が王を拒否したことを悔い、王を探してよい関係を回復する。
⑨宮廷での生活がしばらく続いた後、シュラムの女は帰省することを願う。
⑩ソロモンは同意し、ふたりで彼女の実家を訪問する。
*そこでふたりは再度愛を誓い合う。
⑪締めくくりは、彼女の故郷で体験した夫婦関係の喜びを歌った歌である。
⑫これが、雅歌を字義通りに解釈した結果として見えてくる流れである。
⑬ちなみに、「シュラムの女」(Shulamit)と訳された言葉は、ヘブル語では
「ソロモン」の女性形の「シュラミット」である。「パウロ」の女性形を「ポ
ーリン」と言うのと同じ。「ソロモン」と「シュラミット」で、「Mr. and Mrs.
Solomon」という意味になる。
Ⅱ.字義通りの解釈に基づくアウトライン
*雅歌は、5つの牧歌から構成されている。
*それらの牧歌は、時間順に並んでいるわけではない。
*それが、この書の解釈を困難にしている理由である。
*5つの牧歌を吟味すると、結果的に、ある物語の流れが見えてくる。
1 .牧歌①:結婚式当日( 1 : 2 ~ 2 : 7 )
(1)婚宴に備えるシュラムの女
①彼女は、エルサレムの娘たち(クアイア)に向かって新郎への愛を語る。
(2)婚宴の席で
①婚宴の席で、ソロモンと花嫁が互いの美しさをたたえ合っている。
②ソロモンは花嫁を雌馬の麗しさにたとえる。
③花嫁はソロモンを最高の香料(ナルド)にたとえる。
*花嫁が身に着けているナルドが香りを放つ。
*ナルドは性的情熱をかきたてるために用いられることがある。
④相手のよい点を言葉に表すことは、大変重要である。
(3)奥の間にて
①ふたりは、初夜を過ごすために寝室に入る。
②その様子が、官能的な言葉で描写される。
③この体験から、花嫁はこう語る。
Son 2:7 エルサレムの娘たち。/私は、かもしかや野の雌鹿をさして、/あなたがたに誓っていただきます。/揺り起こしたり、かき立てたりしないでください。/愛が目ざめたいと思うときまでは。
*性的情熱は、それが完全に満たされる状況が整わない限り、不用意に掻
き立てるものではない。
2 .牧歌②:婚約時代( 2 : 8 ~ 3 : 5 )
(1)愛する人の訪問
①ある春の日、ソロモンがガリラヤに住む彼女の家を訪ねて来た。
②シュラムの女は家の中にいる。
③ソロモンは、シュラムの女に語りかける。
*冬は過ぎ去り春が来た、それゆえ、眠りから覚めて外に出ておいでと。
④ふたりは散歩に出かける。
*長い冬の間に、彼らの愛が冷えなかったことが証明された。
⑤散歩の途中で、女はぶどう畑が狐によって荒らされているのを発見する。
*ふたりの愛を壊す狐(障害)がいるなら、それを取り除く必要がある。
⑥婚約期間中に問題が見えたなら、すぐにそれに対処する必要がある。
(2)冬の間に見た悪夢
①ソロモンが仕事に出かけて後、彼女は冬の間に見た夢について考える。
②夢の中で、ソロモンを探すが、なかなか見つけることができなかった。
③ソロモンが彼女を見捨ててどこかに行ってしまったという悪夢である。
④夜回りが去るとすぐに、彼女は愛する人を見つける。
⑤彼女はその人をしっかりとつかまえ、自分の母の家に連れ帰る。
⑥婚約時代には、婚前交渉の危険性がある。
⑦「揺り起こしたり、かき立てたりしないでください。愛が目ざめたいと思う
ときまでは」という言葉は、その危険性に関する警告である。
⑧現代の性道徳と聖書が教える基準とは、大きくかけ離れている。
3 .牧歌③:結婚式の描写( 3 : 6 ~ 5 : 1 )
(1)結婚式場への行進
①これは、第1の牧歌と第2の牧歌の間に入るものである。
②ソロモンはシュラムの女をエルサレムに迎えるために、行列をガリラヤに
派遣した。
③彼女は、行列の中心にいて、エリコからエルサレムに上りつつある。
④花嫁は豪華な香水を身に着け、香料をたきながら近づいて来る。
⑤ソロモンは彼女をすでに女王として扱っている。
(2)結婚の夜
①ソロモンは、花嫁の美しさをたたえる。
②彼の言葉は、一般的なものから具体的な描写に移行していく。
*目(1節)、歯(2節)、くちびる、口、こめかみ(3節)、首(4節)、
乳房(5節)などが、次々と称えられていく。
*これは7重の美の表現である。
③次にソロモンは、花嫁の内面の美について語る。
④彼はシュラムの女を「閉じられた庭」にたとえている(11節)。
*その庭に入ることができるのは、正当な所有者だけである。
*彼女は、封じられた泉(処女)である(12節)。
⑤彼女は、ソロモンを受け入れる準備が出来たことを伝える。
⑥翌朝、ソロモンは彼女との関係に満足したことを伝える。
⑦この箇所の締めくくりは、エルサレムの娘たちがふたりの肉体的関係を祝
福して歌う歌である。
4 .牧歌④:性的関係のずれ( 5 : 2 ~ 6 : 9 )
(1)愛の拒否
①ふたりは、結婚生活の調和に向かって努力を始める。
②この箇所は、結婚関係においては双方の努力と歩み寄りが必要であること
を教えている。
③言葉に出して妻をほめることが重要である。
④夫にとって気に入らないことが起こったとしても、結婚の時に示した愛を
もって妻を受け入れる必要がある。
5 .牧歌⑤:ガリラヤへの帰省( 6 : 10 ~ 8 : 14 )
(1)踊り
①シュラムの女が踊る場面は、「性的関係の調整」という文脈の中で解釈すべ
きである。
(2)シュラムの女の帰省の願い
①ふたりで故郷を訪問しようという提案がなされる。
②ガリラヤの野では、木々が芽を出し、花が咲くのを見ることができる。
③自然の中で夫婦の契りを交わすことができる。都会では不可能なこと。
④女は、自分の生家にソロモンを連れて行き、そこで新しい形の夫婦愛を見せ
ることを願っている。
⑤この箇所は、シュラムの女がエルサレムの女たちに誓いを立てさせるとこ
ろで終わる。「エルサレムの娘たち。私はあなたがたに誓っていただきます。
揺り起こしたり、かき立てたりしないでください。愛が目ざめたいと思うとき
までは」(8:4)
⑥欲求が十分に満たされる状況が訪れるまでは、軽々しく欲望をかきたてる
べきではない(この歌が出てくるのは、これで3度目)。
⑦ここでの教訓は、女性が夫婦関係を積極的に導いているということである。
*これは決して悪いことではない。
(3)故郷への旅
①ソロモンが初めてシュラムの女を見た場所、出会いの場所に戻る。
②シュラムの女は、愛の契約の更新を願っている。
③愛の契約は、愛が最初に生れた場所で更新された。
(4)シュラムの女の実家にて
①彼女には兄が少なくとも2人、妹が少なくとも1人いる。
②シュラムの女は、彼らがどのようにして自分を守ってくれたかを思い出す。
③処女の状態でソロモンと結婚できたのは、彼らの守りがあったから。
④ここでシュラムの女は、兄たちに褒賞を与えて欲しいとソロモンに願う。
⑤ソロモンはそれに同意する。
⑥彼女は歌を歌いながら、ソロモンを外に導き出す。
⑦ふたりは、どこかへ消え去る。自然の中で夫婦の契りを交わすためである。
⑧それこそ、彼らがガリラヤを訪問した目的であった。
⑨これをもって、雅歌の物語は終了する。
結論:結婚生活のためのガイドライン
1 .相手のために時間を費やす。
( 1 )真に相手のことを知るために、時間を取る。
( 2 )相手の必要に対して関心を払う。
2 .相手を励まし、ほめる。
( 1 )批判は信頼関係を破壊する。
( 2 )ともに喜び、ともに悲しむ。
3 .互いの存在を楽しむ。
( 1 )結婚を神からの贈り物として喜ぶ。
( 2 )独創的な方法を用いて、互いの存在を楽しむ。
4 .相手に対する愛と献身を再確認する。
( 1 )問題解決のために努力する。
( 2 )離婚を解決策とは考えない。
( 3 )神は、私たちの結婚関係を祝福しようとしておられる。
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