60分でわかる旧約聖書(5)「申命記」

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申命記を通して、イエスの教えの意味を考える。

60 分でわかる旧約聖書( 5 )「申命記」

1.はじめに

(1)創世記、出エジプト記、レビ記、民数記に続いて申命記を取り上げる。

①旧約聖書の最初の五書は、本来は「ひとつの書」として書かれたものである。

②著者はモーセである。

*カナンの地に入国する前のイスラエル人のために書いた。

*彼らは、イスラエルの歴史や出エジプトの歴史を知らない世代である。

*何のためにカナンの地で生きるのかを知らなければならない。

 

(2)文脈の確認

①創世記は、人類の罪と、その罪に対する裁きについて教えている。

②出エジプト記は、エジプトの束縛からの贖いの書である。

③レビ記は、聖い神との交わりを維持する方法を教えている。

④民数記は、約束の地への旅を描いた歴史書であり、世代交代の書である。

⑤申命記は、新しい世代に対する律法の解説書である。

 

(3)申命記という名称

①ヘブル語の書名は「エレー・ハデバリム」である。

*この書の最初の3語が、タイトルになっている。

*英語で「These are the words」という意味である。

②英語では、「Deuteronomy」と言う。

*七十人訳聖書の「Deuteronomion」(第2の律法)から出たもの。

*七十人訳は、申17:18の言葉を誤訳した。

*「律法の写し」が、「Deuteronomion」(第2の律法)と訳された。

*ラテン語訳は、「Deuteronomium」である。

③日本語の書名「申命記」は、漢語訳聖書からの借用である。

*「申命」とは「繰り返して命じる」という意味である。

*漢語訳の書名にも、「第2の律法」という誤解が反映されている。

*申命記は、それまでに啓示されていた律法の解説書である。

 

(4)著者はモーセである。

①申31~34章は、モーセが書いたのではない。恐らくヨシュアであろう。

②これを根拠に、モーセが著者であることを否定すべきではない。

③この部分は、本来はヨシュア記に属するものである。

 

2.アウトライン

(1)過去の回顧(1~4章)

(2)律法の解説(5~26章)

(3)未来の展望(27~30章)

(4)指導者の交代(31~34章)

 

3.結論

(1)律法の本質

(2)イスラエルの将来

(3)申命記とイエスの教え

 

申命記を通して、イエスの教えの意味を考える。

Ⅰ.過去の回顧( 1 4 章)

1.イントロダクション(1:1~4)

(1)話者、聞き手、場所(1:1)

「これは、モーセがヨルダンの向こうの地、パランと、トフェル、ラバン、ハツェ

ロテ、ディ・ザハブとの間の、スフの前にあるアラバの荒野で、イスラエルのすべ

ての民に告げたことばである」( 1 節)

①語り手はモーセである。

*主イエスが登場するまでは、彼に匹敵する預言者はなかった。

*彼は、神の言葉を代弁するにふさわしい人物だった。

②聞き手は、イスラエルの民である。

*38年の放浪生活で、成人した民である。

*彼らは、ひと月後には約束の地に入ろうとしている。

③場所は、荒野である。

*ヨルダンとアラバは分かるが、他の地名に関しては分からない。

④律法を解説するために、神の恵みの業を振り返っている。

 

(2)時の特定(1:2~4)

「ホレブから、セイル山を経てカデシュ・バルネアに至るのには十一日かかる。第

四十年の第十一月の一日にモーセは、【主】がイスラエル人のために彼に命じられ

たことを、ことごとく彼らに告げた。モーセが、ヘシュボンに住んでいたエモリ人

の王シホン、およびアシュタロテに住んでいたバシャンの王オグをエデレイで打

ち破って後のことである」( 2 4 節)

①神の啓示を、歴史の中に位置づける。

②11日と40年の対比は、不従順が悲劇的な結果をもたらしたことを示す。

③11日とは、ホレブからカデシュ・バルネア(約束の地の入り口)まで移動

するために要する日数である(距離は約240キロ)。

④この対比は、新世代の民に、同じ過ちを繰り返すなと教えるためのもの。

⑤残念ながら、民がこの警告に完全に耳を傾けることはなかった。

⑥2人の王(シホンとオグ)に対する勝利との関係で、時が特定されている。

 

2.ホレブからベテ・ペオルまでの出来事の回顧(1:5~3:29)

(1)約束の地に入るための最初の試み(1:5~46)

①ホレブからの旅立ち。【主】は、ホレブを発って約束の地に行けと命じた。

②この地は、【主】が先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓ったものである。

③民の組織化がなされた。

*千人の長、百人の長、五十人の長、十人の長の任命

④ホレブからカデシュ・バルネアまでは、約240キロの旅になる。

⑤神は、荒野の旅の間、父親が子どもを守るように民を守られた。

⑥約束の地の入り口に来て、12人のスパイが送られた。

*10人のスパイは、否定的な情報をもたらした。

*カレブとヨシュアは信仰の言葉を語った。

*彼らは、約束の地に入れることになった。

 

(2)新しい始まり:ヨルダン川東岸を北上する旅(2:1~25)

①38年の荒野の放浪生活の後、【主】からの語りかけがある。

②【主】は、イスラエルの民にカナンの地を与えるという約束を守られる。

③エドム(エサウの子孫)と戦ってはならない。

④モアブとアモン(ロトの子孫)と戦ってはならない。

 

(3)ヨルダン川東岸の征服(2:26~3:29)

①ヘシュボンの王シホンに勝利する。

②バシャンの王オグに勝利する。

③ヨルダン川東岸の地の分割

*ルベン族、ガド族、マナセの半部族

④2部族半への進軍命令

⑤モーセは約束の地への入国を神に願うが、拒否される。

⑥この時、民はベテ・ペオルの近くの谷にとどまっていた。

 

3.律法に従い、偶像礼拝を排除せよとの勧告(4:1~49)

(1)バアル・ペオルでの失敗(4:1~8)

①モアブ人の誘惑により、霊的、肉体的姦淫の罪を犯した。

②24,000人が疫病で死んだ。

③律法に従うことが、祝された生活の鍵である。

 

(2)ホレブでの経験(4:9~14)

①【主】はイスラエルの民と契約を結ばれた。

②二枚の板に書かれた十戒が与えられた。

③これは、約束の地で実行するためのものである。

④この体験を、子孫に伝える必要がある。

 

(3)偶像礼拝の禁止(4:15~40)

①【主】は目に見えないお方である。

②何かの形に刻んだ像を造ってはならない。

③天の万象を拝んではならない。

④偶像礼拝に陥るなら、約束の地から追い出される。

*これは、警告であり、預言でもある。

⑤【主】だけが神である。

(4)その他の事項(4:41~49)

①ヨルダン川の東岸に置かれた3つの逃れの町

②律法の解説を行うための地理的情報の説明

 

 

Ⅱ.律法の解説( 5 26 章)

1.十戒の解説(5章)

①再記述の法則

②神は十戒の作者であり、モーセは仲介者である。

 

2.主要な命令と警告(6~11章)

「聞け、イスラエルよ。我らの神、主は唯一の主である。あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい」(6:4~5)

 

3.その他の諸規定(12~26章)

 

 

Ⅲ.未来の展望( 27 30 章)

1.祝福と呪い(27~28章)

2.土地の契約(29~30章)

(1)申29:1

「これは、モアブの地で、【主】がモーセに命じて、イスラエル人と結ばせた契約

のことばである。ホレブで彼らと結ばれた契約とは別である」

①「ホレブで彼らと結ばれた契約」とは、モーセ契約のことである。

②この契約は、モーセ契約とは別に結ばれた契約である。

③この契約は、無条件契約である。

 

(2)土地の契約の条項

①イスラエルの不信仰と世界への離散が預言されている(申29:2~30:1)。

②イスラエルは、悔い改める(申30:2)。

③メシアが戻って来られる(申30:3)。

④イスラエルは、再び集められる(申30:3~4)。

⑤イスラエルは、約束の地を所有する(申30:5)。

⑥イスラエルは、霊的に生まれ変わった状態で生きる(申30:6)。

⑦イスラエルは、「メシア時代」の祝福を受ける(申30:8~10)。

 

(3)土地の契約の意義

①約束の地の所有権はイスラエルにあることが再確認された。

②イスラエルが罪を犯しても、土地の権利が奪われることはない。

*土地の契約は、無条件契約である。

③イスラエルが不信仰になれば、その土地から追放される。

 

Ⅳ.指導者の交代( 31 34 章)

1.モーセによる新しいリーダーの任命(31章)

2.モーセによる新しい歌(32章)

3.モーセによる新しい祝福(33章)

4.モーセの死(34章)

 

結論

1 .律法の本質

1 )律法と律法主義とを混同してはならない。

2 )律法主義とは、口伝律法を強調することである。

3 )律法は、本来良いものである。

4 )神は最初から、律法による救いを想定しておられない。

5 )問題は、人間の心の中にある。

6 )人間の内側には罪があるので、神は恵みによる救いを提供された。

 

2 .イスラエルの将来

1 )土地の契約は、アブラハム契約の土地に関する条項が発展したものである。

2 )土地の契約の現状

①アブラハムの子孫は土地を所有するようになるという約束が与えられた。

②しかし、不従順のためにヤコブとその子孫は 400 年間エジプトに住んだ。

③出エジプト後、彼らは約束の地の一部を所有した。

⑤その後、再び不従順に陥り、アッシリヤ捕囚、バビロン捕囚を経験した。

70 年後にバビロンから帰還し、再び約束の地を奪回した。

⑦紀元 70 年にエルサレムが滅び、彼らは再び離散の民となった。

⑧しかし、イスラエルの民には、将来の帰還が約束されている。

*イザ 11 11 12 、エレ 23 3 8 、エゼ 37 21 25 、アモ 9 9 15

 

3 1948 年のイスラエル国家の誕生

①イスラエルの回復は、 2 段階でやって来る。

②先ず、不信仰な状態での肉体的回復が起こる。

③次に、霊的回復が起こる。

 

3 .申命記とイエスの教え

1 )申命記は、律法を行うことは、神の愛と恵みに対する応答だと教えている。

2 )ヨハ 14 21

「わたしの戒めを保ち、それを守る人は、わたしを愛する人です。わたしを愛する

人はわたしの父に愛され、わたしもその人を愛し、わたし自身を彼に現します」

①キリストに対する愛は、その戒めを実行することによって表現される。

②その人は、父に愛される。

③キリストはその人にご自身を現される。

*幻を見るということではない。

*聖霊がキリストをその人に示す。

*信者は、聖書の中でキリストに出会うのである。

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