創世記(12)—洪水の背景—

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このメッセージでは...

「ノアの洪水」が起こった必然性と、そこに働く神の恵みについて学ぶ。

創世記12 創世記6章1節~8節

「洪水の背景」

イントロ:

1.前回までの復習

  (1)創世記には11の区分(トルドット)がある。

  (2)創世記5:1~6:8は、第2のトルドット。

  (3)第2のトルドットの前半 アダムから10代目のノアまで。

(4)後半、「洪水が起こった理由」

 2.メッセージのアウトライン

(1)雑婚の内容

(2)神の反応

(3)雑婚の結果

(4)神の介入

(5)恵みの要素

 3.悪霊に関する予備知識

(1)自由に活動する悪霊たち

(2)「底知れぬ所(穴)」(アブソス、英語でアビス)に閉じ込められている悪霊たち

 ①ルカ8:31

*レギオンが「底知れぬ所に行け、とはお命じになりませんように」と懇願している。

   ②黙示録9:1、2、11、11:7、17:8、20:1、20:3

  (3)「暗やみの穴」(タータラス)に閉じ込められている悪霊

①Ⅱペテロ2:4~5

②シオールの中にある永遠に悪霊どもを閉じ込めておく場所

③悪霊は、ここから出ることなしに、白い御座の裁きを受け、火の池に投げ込まれる。

④洪水の前にある特定の罪を犯した堕天使たち。

 3.きょうのメッセージは、私たちに何を教えているか。

(1)悪霊の存在とその働き。

(2)ノアの洪水が起こった必然性。

(3)裁きの中に働く神の恵み。

このメッセージは、「ノアの洪水」が起こった必然性と、そこに働く神の恵みについて学ぼうとするものである。

Ⅰ.雑婚の内容

1. 1節:人類(アダム)の広がり

(1)人類全体、男女含む。

(2)この「アダム」をカインの家系に限定することはできない。

(3)5章は男性に焦点を合わせ、6章は女性に焦点を合わせる。

2. 2節:通常の解釈

(1)不信仰の系列と信仰の系列の雑婚と見る。

 (2)それには疑問が伴う。

①神の子ら(セツの系列)の男と、人の娘(カインの系列の女)の結婚だけしかない。

   *通常は、それとは逆のケースもあり得る。

   *例として:信者の男性と未信者の女性、未信者の男性と信者の女性

  ②人間の雑婚という解釈は、教会教父から始まった。アウグスチヌス。

③ヘブル語で、「神の子ら」とはどういう意味なのかを考える必要がある。

④文脈は、洪水が必然的なものであったことを説明しようとしている。

 *洪水の原因は、不自然な出来事、極めて異常な出来事が起こったことにある。

 3.ここでの雑婚とは、堕天使と人間の女との雑婚である。

(1)「神の子ら」(ベネイ・ハエロヒム)

  ①常に天使を指す。

②良い天使も堕天使も。ヨブ1:6、2:1、38:7。

③力ある者の子ら(ベネイ・エイリム)。これも天使を指す。詩篇29:1、89:6。

  ④いと高き方の子ら(ベネイ・エルヨン)。これも天使を指す。詩篇82:6

  ⑤神の子(バル・エロヒム)(アラム語)。これも天使を指す。

 (2)この解釈を嫌う人は、例外規定を設けるが、合理的な理由がない。

 (3)天使は、神によって造られたので、「子ら(sons)」と呼ばれる。

 (4)新約聖書に入ると、「神の子」は天使以外も指すようになる。

  ①ルカ3:38 アダム

  ②ヨハネ1:12 信者のこと。

③新約聖書の例でも、神によって直接作られたという要素は残っている。

④例外はイエス・キリスト。「そのひとり子」。永遠に存在している。

  (5)これは、昔からあるユダヤ人の解釈である。

   ①ヨセフス「ユダヤ古代史」(1:73)で「天使」と解釈している。

    *英語版ヨセフス全集の脚注に、この解釈は古代世界では一貫していたとある。

   ②クムランの書の中の3書

③エノク書(偽典)

  (6)「人の娘たち」とは、人間の女性。カインの系列も、セツの系列も含む。

  (7)「いかにも美しい」 性的ニュアンス、罪の思い。

(8)「好きな者を選んで」 堕天使と人間の雑婚。

4. 天使は結婚するのかという疑問

  (1)マタイ22:30 「天の天使たち」とは、良い天使たちのことである。

  (2)創世記6章は、堕天使たちのことである。

  (3)人間も、天においては結婚しないが、地上では結婚する。

  (4)天使には性別がないのか?

①天使が目に見える形で現れた場合は、常に若い男性。

*創世記18:1~19:22、マルコ16:5~7、ルカ24:4~7、使徒1:10~11

②天使は常に男性形で表現される(女性形でも、中性形でもない)。

③天使は霊体を有する。

④天使には、出産能力がない。

⑤天使は天使を生まないが、ここでは超人間的なものを生んでいる。

 5.どうしてサタンはこのようにしたのか。

(1)創世記3:15 「女の子孫(種)」

①サタンに向かって語られた言葉である。

②サタンは、人間の女のかたちを破壊し、「女の子孫」の誕生を妨害しようとした。

  (2)創世記3:6との比較

   ①見た、美しかった(良かった)、取った。

   ②アダムとエバは、神と人の垣根を越えた。

   ③堕天使たちも、同じようにして、人と天使の垣根を越えた。

   ④「いかにも美しいのを見て」とは、性的欲望を示す言葉。

Ⅱ.神の反応(3節)

 1.「わたしの霊」 創世記6:3に聖霊への言及が出てくる。神の三位一体性を表す。

 2.人間は肉、永遠に生きることはない。

 3.120年、洪水までの期間

  (1)神は120年間、人が悔い改めることを待たれた。

(2)Ⅰペテロ3:20

「昔、ノアの時代に、箱舟が造られていた間、神が忍耐して待っておられたときに、従わなかった霊たちのことです。わずか八人の人々が、この箱舟の中で、水を通って救われたのです」

Ⅲ.雑婚の結果(4節)

1. ネフィリム 巨人ではない。超人のこと。

2. LXXの訳はgigentes(ギゲンテス 英語のジャイアンツの語源)。

(1)ギゲンテスとは、タイタンのこと。神と人の子ども。超人である。

(2)LXXがネフィリムをギテンテスと訳したために、巨人という理解が生まれた。

(3)民数記13:33。スパイの虚偽報告。

「そこで、私たちはネフィリム人、ネフィリム人のアナク人を見た。私たちには自分がいなごのように見えたし、彼らにもそう見えたことだろう」

 3.ネフィリムは、洪水によって滅びた。

 4.創世記とギリシア神話の比較

(1)実際に起こったこと、それを基に作られた歪められた話。

(2)創世記で否定的に描かれていることが、ギリシア神話では肯定的な物語となる。

(3)洪水の目的は、雑婚をした堕天使たちと女たち、そこから誕生した超人を滅ぼすこと。

5. 新約との関係

 (1)Ⅱペテロ2:4~5 あるグループの天使の幽閉

「神は、罪を犯した御使いたちを、容赦せず、地獄に引き渡し、さばきの時まで暗やみの穴の中に閉じ込めてしまわれました。また、昔の世界を赦さず、義を宣べ伝えたノアたち八人の者を保護し、不敬虔な世界に洪水を起こされました」

①タータラス(暗闇の穴)は、アブソス(アビス)(底知れぬ所)とは異なる。

②堕天使は、そこから出ることなしに白い御座の裁きを受け、火の池に投げ込まれる。

③同じ悲劇が起きないように、これらの堕天使たちを幽閉しておく必要があった。

④堕天使たちの裁きのタイミングは、洪水が起こった時。

(2)ユダの手紙6~7節

「また、主は、自分の領域を守らず、自分のおるべき所を捨てた御使いたちを、大いなる日のさばきのために、永遠の束縛をもって、暗やみの下に閉じ込められました。また、ソドム、ゴモラおよび周囲の町々も彼らと同じように、好色にふけり、不自然な肉欲を追い求めたので、永遠の火の刑罰を受けて、みせしめにされています」

①雑婚によって人間の領域に入り込んだ。

②「暗やみの下」(タータラス)に閉じ込められている。

③大いなる日の裁き 白い御座の裁き

④ソドムとゴモラの罪 性的罪

 *不自然な肉欲 同性愛

*堕天使が人間の女性に対して抱いた不自然な肉欲

Ⅳ.神の介入(5~7節)

1. 罪の拡大のゆえに、裁きが必要。

2. 「ご覧になった」とは、神の評価。

  (1)外側の罪

(2)内側の罪 意図的、自覚的な罪。

  (3)「計る」(5節)は、「ヤツァー」

①創世記2:8 神は人間をデザインして造られた。

②人間は、神から与えられた賜物を、悪をデザインするために用いた。

3. 神の悔やみ

(1)Ⅰサムエル15:11

 「わたしはサウルを王に任じたことを悔いる。彼はわたしに背を向け、わたしのことばを守らなかったからだ」それでサムエルは怒り、夜通し主に向かって叫んだ。

  (2)Ⅰサムエル15:29

「実に、イスラエルの栄光である方は、偽ることもなく、悔いることもない。この方は人間ではないので、悔いることがない」

  (3)これは矛盾ではない。擬人法。

①神は悔いることがない。人の目にはそのように見えるだけ。

②神の人に対する態度は、従順か、不従順かで異なる。

4.神の痛み

(1)消し去ろう。取り除くこと。

(2)人、家畜、はうもの、鳥。魚は出てこない。水による裁きだから、魚は生き延びる。

(3)神は残念に思われた。

Ⅴ.恵みの要素(8節)

1. 日本語訳比較

「しかし、ノアは主の前に恵みを得た」(口語訳)

  「しかし、ノアは、主の心にかなっていた」(新改訳)

  「しかし、ノアは主の好意を得た」(新共同訳)

2. ノアは、周りにいた罪人たちのようには歩まなかった。

  (1)彼には罪がなかったということではない。

  (2)神はノアに恵みを与えた。

3. ノアの義とは、何か。

 (1)神のことばを信じる信仰による義

 (2)ヘブル11:7

 「信仰によって、ノアは、まだ見ていない事がらについて神から警告を受けたとき、恐れかしこんで、その家族の救いのために箱舟を造り、その箱舟によって、世の罪を定め、信仰による義を相続する者となりました」

結論

1. ノアの洪水は、必然的に起こった。

2. しかし、ノアが選ばれたのは、必然ではなく、神の恵みであった。

3. ノアは神の恵み応答して、人類の歴史を再スタートさせる人物となった。

4. ノアは、いつの時代にも存在する「残れる者(真の信仰者)」の型である。

5. 私たちもまた、ノアのように「主の前に恵みを得た」のである。

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