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ローマ人への手紙(56)—パウロの将来の計画—
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「パウロの将来の計画」について学ぶ。
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「パウロの将来の計画」
1.はじめに
(1)文脈の確認
①15:14~16:27は、「結論」の部分である。
②前回は、「執筆の目的」について学んだ。
*ローマ教会の評価
*使徒としての使命
*使徒としての奉仕の原則
(2)今回は、「パウロの将来の計画」について学ぶ。
①キリストにあって計画を立てる必要性
②計画を修正する柔軟性
③祈りの格闘の必要性
2.アウトライン
(1)長期計画(22~24節)
(2)短期計画(25~29節)
(3)祈りの格闘(30~33節)
3.メッセージのゴール
(1)異邦人とユダヤ人の関係
このメッセージは、「パウロの将来の計画」について学ぼうとするものである。
Ⅰ.長期計画(22~24節)
1.キリストにあって計画を立てる必要性
(1)パウロは、過去の成功の上に安住して、隠居生活を送ることもできたであろう。
①しかし、彼はそこに留まらないで、前進した。
②幻が、彼を捉え、彼に活力を与えた。
③クリスチャンは、死ぬまで現役である。
(2)各年代における計画
①青年期の計画
②壮年期の計画
③熟年期の計画(これが最も難しい)
2.22節
「そういうわけで、私は、あなたがたのところに行くのを幾度も妨げられましたが、」
(1)「そういうわけで」
①他の人の土台の上に建てないことを原則にしてきた。
②エルサレムからイルリコに至るまで、巡回宣教をしてきた(19節)。
③ローマ教会を訪問する時間的余裕がなかった。
(2)「あなたがたのところに行くのを幾度も妨げられました」
①願望はあったが、実現しなかった。
②「妨げられた」は、神や悪霊によってではなく、不可能であったという意味。
3.23~24節
「今は、もうこの地方には私の働くべき所がなくなりましたし、また、イスパニヤに行く
場合は、あなたがたのところに立ち寄ることを多年希望していましたので ──というのは、
途中あなたがたに会い、まず、しばらくの間あなたがたとともにいて心を満たされてから、
あなたがたに送られ、そこへ行きたいと望んでいるからです、──」
(1)「もうこの地方には私の働くべき所がなくなりました」
①ローマ帝国の東側地区での働きを終えたということ。
②すべての町を巡ったということではなく、主要な町々をカバーしたという意味。
③開拓伝道をする場所がなくなったということ。
④パウロは、3回の伝道旅行でそれを達成した。
(2)イスパニヤに行きたいという希望
①スペインのこと
②当時スペインは、ローマ帝国の植民地で、帝国の最西端にあった。
③多くのユダヤ人と、奴隷になってここまで送られたギリシア人がいた。
(3)パウロがイスパニヤに行ったかどうかは、不明。
①ローマでの幽閉が1度限りで、それ以降自由にならなかったと考える人。
*パウロのイスパニヤ行きを否定する。
②ローマでの幽閉が2度あったと考える人。
*その間に、イスパニヤに行った可能性があるとする。
(4)その途中で、ローマ教会に立ち寄りたいという。
①交わりによって心を満たされたい。
②「あなたがたに送られ、そこへ行きたいと望んでいるからです」
(5)「プロペンポウ」という動詞の受動態
①旅立ちの最初の部分において、同行する。
②すでにその人が進んでいる方向に送り出す。
③初代教会においては、「プロペンポウ」という動詞は宣教のための派遣の意味。
使15:3
「彼らは教会の人々に見送られ、フェニキヤとサマリヤを通る道々で、異邦人の
改宗のことを詳しく話したので、すべての兄弟たちに大きな喜びをもたらした」
1コリ16:6
「そして、たぶんあなたがたのところに滞在するでしょう。冬を越すことになる
かもしれません。それは、どこに行くとしても、あなたがたに送っていただこう
と思うからです」
④その場合、その人の伝道旅行を援助するというニュアンスが含まれている。
*祈りの援助
*経済的援助
*人的援助(同行者)
*ネットワークによる援助
Ⅱ.短期計画(25~29節)
1.夢や願いよりも、責務を優先する必要がある。
(1)長期計画だけを論じている人は、地に足の付かない夢想家である。
(2)短期計画だけにとらわれている人は、単なる実務家である。
2.25節
「ですが、今は、聖徒たちに奉仕するためにエルサレムへ行こうとしています」
(1)使19:21(エペソで奉仕の後)
「これらのことが一段落すると、パウロは御霊の示しにより、マケドニヤとアカヤを
通ったあとでエルサレムに行くことにした。そして、『私はそこに行ってから、ローマ
も見なければならない』と言った」
(2)イスパニヤに行く(ローマ教会を訪問する)前に、エルサレムに行く必要がある。
①エルサレム教会の聖徒たちは、困窮していた。
②飢饉のために、エルサレムのユダヤ人たち全般が苦しんでいた。
③その上に信者たちは、迫害に苦しんでいた。
④母教会援助の旅である。
3.26節
「それは、マケドニヤとアカヤでは、喜んでエルサレムの聖徒たちの中の貧しい人たちの
ために醵金することにしたからです」
(1)異邦人教会が、エルサレム教会を援助する。
①1コリ16:1~4
②2コリ8~9章
(2)これは自発的な献金である。
①「喜んで」という言葉
②「醵金」とは、「コイノニア」である。
*交わりを指す言葉
4.27節
「彼らは確かに喜んでそれをしたのですが、同時にまた、その人々に対してはその義務が
あるのです。異邦人は霊的なことでは、その人々からもらいものをしたのですから、物質
的な物をもって彼らに奉仕すべきです」
(1)異邦人がユダヤ人を援助することが、神学的真理へと引き上げられる。
①これは、自発的な愛の行為である。
②と同時に、霊的義務でもある。
(2)「同時にまた、その人々に対してはその義務があるのです」
「しかし同時に、彼らはかの人々に負債がある」(口語訳)
「実はそうする義務もあるのです」(新共同訳)
①彼らは、その人々には負債者(オフェイレテイス)である。
②負債があるのだから、返済の義務がある。
(3)「異邦人は霊的なことでは、その人々からもらいものをしたのですから、物質的
な物をもって彼らに奉仕すべきです」
「異邦人はその人たちの霊的なものにあずかったのですから、肉のもので彼らを助
ける義務があります」(新共同訳)
①異邦人が受けている霊的祝福は、すべてユダヤ人たちが受けるものであった。
*それが「負債」である。
②負債を返すとは、肉のもの(物質的なもの)で彼らを援助することである。
*これが、ユダヤ人伝道の財源となる。
(例話)昨年、イスラエル聖書大学に献金を送った。
5.28~29節
「それで、私はこのことを済ませ、彼らにこの実を確かに渡してから、あなたがたのとこ
ろを通ってイスパニヤに行くことにします。あなたがたのところに行くときは、キリスト
の満ちあふれる祝福をもって行くことと信じています」
(1)パウロの計画の全貌
①ローマ帝国東部の宣教は終えた。
②これから、エルサレムに行く(異邦人の献金をエルサレム教会に届けるため)。
③次に、イスパニヤに行く。ローマ帝国西部の宣教のため。
④途中で、ローマ教会を訪問する。そこからイスパニヤ宣教に派遣されるため。
(2)この計画が祝されることを信じている。
①と同時に、人間の計画は不確定である。
②それゆえ、神の守りを祈り求める必要がある。
Ⅲ.祈りの格闘(30~33節)
1.30節
「兄弟たち。私たちの主イエス・キリストによって、また、御霊の愛によって切にお願いします。私のために、私とともに力を尽くして神に祈ってください」
(1)パウロの謙遜
①祈りの援護をいつも要請している。
②三位一体の神のすべての位格が、この節に登場している。
*主イエス・キリスト
*「御霊の愛」:「御霊によって与えられる愛」
*神(父なる神)
(2)「私のために、私とともに力を尽くして神に祈ってください」
①「スナゴニゾマイ」:激しい格闘に加勢すること。
②祈りとは、霊的な戦いそのものである。
③クリスチャンは、会ったことがなくても、共通の祈りを捧げることができる。
2.31~32節
「私がユダヤにいる不信仰な人々から救い出され、またエルサレムに対する私の奉仕が聖
徒たちに受け入れられるものとなりますように。その結果として、神のみこころにより、
喜びをもってあなたがたのところへ行き、あなたがたの中で、ともにいこいを得ることが
できますように」
(1)安全のための祈り
①パウロは、ユダヤ人に捉えられる。
②しかし、百人隊長によって救われ、国外に退去させられる。
(2)異邦人の献金が受け入れられるように。
①パウロを疑う者たちが依然としていた。
②ユダヤ人の誇りが邪魔をして、異邦人の献金を受け入れない恐れがあった。
(3)ローマに行けるように。
①パウロは確かにローマに到着した。
②しかしそれは、囚人としてであった。
(4)祈った通りには聞かれていない。
①しかし、祈りの精神は聞かれている。
3.33節
「どうか、平和の神が、あなたがたすべてとともにいてくださいますように。アーメン」
(1)ここで、ローマ人への手紙は終わってもよかった。
①パウロは、個人名を上げて挨拶を送ることにした。
②16章は、いわば「追伸」である。
結論:異邦人とユダヤ人の関係
1.なぜ、異邦人の献金をエルサレム教会に届けることにこだわったのか。
2.異邦人がユダヤ人に対して「負債者」であるとは、どういう意味か。
3.聖書的裏付け
(1)エペ2:11~16(要約)
「ですから、思い出してください。あなたがたは、以前は肉において異邦人でした。
…そのころのあなたがたは、キリストから離れ、イスラエルの国から除外され、約束
の契約については他国人であり、この世にあって望みもなく、神もない人たちでした。
…キリストこそ私たちの平和であり、二つのものを一つにし、隔ての壁を打ちこわし、
ご自分の肉において、敵意を廃棄された方です。敵意とは、さまざまの規定から成り
立っている戒めの律法なのです。このことは、二つのものをご自身において新しいひ
とりの人に造り上げて、平和を実現するためであり、また、両者を一つのからだとし
て、十字架によって神と和解させるためなのです。…」
(2)エペ3:6
「その奥義とは、福音により、キリスト・イエスにあって、異邦人もまた共同の相続
者となり、ともに一つのからだに連なり、ともに約束にあずかる者となるということ
です」
3.解説
(1)「異邦人はその人たちの霊的なものにあずかった」(27節)(新共同訳)
①異邦人が受ける霊的祝福は、本来はユダヤ人のものである。
②それらの霊的祝福は、神がユダヤ人と結んだ契約を通して与えられた。
(2)4つの無条件契約
①アブラハム契約
②土地の契約
③ダビデ契約
④新しい契約
(3)1つの条件付契約
①シナイ契約(モーセ契約)
②これが、「隔ての壁」であり、「敵意」である。
③旧約時代、祝福を受けるためには、ユダヤ教に改宗する必要があった。
④その壁は、キリストの死によって取り除かれた。
(4)教会は、「新しいひとりの人」である。
①異邦人は、ユダヤ人と共同相続人である。
②教会がユダヤ人に置き換わったのではない。
③置換神学は、間違っている。
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