私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
ローマ人への手紙(23)—義の奴隷—
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聖化の原理について学ぶ。
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「義の奴隷」
1.はじめに
(1)「義認」を終えて、「聖化」に入った(6:1~8:17)。
(2)聖書が教える「救い」の全体像
①義認:過去形の救い。一度限りの出来事。
②聖化:現在進行形の救い。
③栄化:未来形の救い。
(3)前回の内容:「聖化の土台:キリストとの一体化」
①質問「恵みが増し加わるために、罪の中にとどまるべきか」
②回答:私たちは罪に対して死んだ。
キリストに起こったことは私たちに起こった。
私たちは、キリストとともに死に、葬られ、復活した。
2.メッセージのアウトライン
(1)第2の質問(15節)
(2)回答:奴隷の例話(16~22節)
(3)まとめ(23節)
3.メッセージのゴール
(1)無律法主義(Antinomianism)
(2)聖化の速度
このメッセージは、聖化の原理について学ぼうとするものである。
Ⅰ.予想される第2の質問(15節)
1.15節
「それではどうなのでしょう。私たちは、律法の下にではなく、恵みの下にあるのだから
罪を犯そう、ということになるのでしょうか」
(1)1節との比較
「それでは、どういうことになりますか。恵みが増し加わるために、私たちは罪の中
にとどまるべきでしょうか」
①ともに修辞的質問である。
②動詞の時制が異なる。
*1節は、現在形。継続した動作。つまり、習慣的に罪を犯し続けること。
*15節は、アオリスト形。時々罪を犯すこと。
(2)この質問の背景にある論理
①律法の下にいれば裁きが恐ろしい。
②今は恵みによって赦されるのだから、時々罪を犯してもよいではないか。
(3)パウロの論理
①「罪が増せば、恵みも増す」という真理は否定していない。
②「信者は律法の下にではなく、恵みの下にいる」という真理も否定していない。
③彼が否定しているのは、恵みを放縦な生き方をする口実にすること。
2.「絶対にそんなことはありません」
(1)最も強い否定形(メイ・ゲノイト)
①ロマ3:4、6、31、6:2にすでに出て来た。
(2)パウロは、第1の質問も、第2の質問も、強く否定する。
Ⅱ.回答:例話(16~22節)
1.19節
「あなたがたにある肉の弱さのために、私は人間的な言い方をしています」
(1)肉の弱さとは、霊的理解力が欠如していること。
①本来なら、霊的話題だけを取り上げて説明すべきところである。
②ローマのクリスチャンたちは、まだ霊的に成熟していない。
(2)人間的な言い方をするとは、例話を用いるということである。
①例話は、当然、聞き手が熟知しているものでなければならない。
②聖書から実例を引用して例話とすることの当否。
③2列18:4
「彼は高き所を取り除き、石の柱を打ちこわし、アシェラ像を切り倒し、モーセ
の作った青銅の蛇を打ち砕いた。そのころまでイスラエル人は、これに香をたい
ていたからである。これはネフシュタンと呼ばれていた」
(3)パウロが用いている例話は、奴隷と主人の関係である。
①今の私たちには、分かりにくい。
②ローマ時代の人たちには常識である。
*当時の都市生活者の多くが、借金のために自分を奴隷に売った。
*これは、意志に反して奴隷になっている人である。
*自発的に奴隷になっている人もいる。
*ともに、主人には絶対服従である。
*ただし、この時代の奴隷は、アメリカ南部での奴隷のようではない。
*コリントの町の人口の3分の1が奴隷であったと言われている。
③今の時代の人に分かるように、私は「DV状況にある夫婦関係」を例話とした。
2.16節
「あなたがたはこのことを知らないのですか。あなたがたが自分の身をささげて奴隷とし
て服従すれば、その服従する相手の奴隷であって、あるいは罪の奴隷となって死に至り、
あるいは従順の奴隷となって義に至るのです」
(1)「あなたがたはこのことを知らないのですか」
①当然知っているはずだ。
(2)人間には、完全な自立はあり得ない。
①未信者は、クリスチャンになると不自由になると誤解している。
②人間は、誰か(何か)に仕える必要がある。
③イエスの教え。マタ6:24
「だれも、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛した
り、一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、
また富にも仕えるということはできません」
④ヨシ24:15
「もしも【主】に仕えることがあなたがたの気に入らないなら、川の向こうにい
たあなたがたの先祖たちが仕えた神々でも、今あなたがたが住んでいる地のエモ
リ人の神々でも、あなたがたが仕えようと思うものを、どれでも、きょう選ぶが
よい。私と私の家とは、【主】に仕える」
(3)主人は2人いる。
①罪という主人の奴隷となるなら、死に至る。
*これは不従順の道である。
*「死」とは、神からの分離(霊的死)のことである。
②キリストという主人の奴隷になるなら、義に至る。
*これは従順の道である。
*「義」とは、永遠のいのちである。
③主人を変えると、劇的な変化が起こる。
3.17~18節
「神に感謝すべきことには、あなたがたは、もとは罪の奴隷でしたが、伝えられた教えの
規準に心から服従し、罪から解放されて、義の奴隷となったのです」
(1)私たちが置かれている状態の説明
①かつての姿:罪の奴隷
②今の姿:自発的に義の奴隷になった。
*この状態を日々実践する。
(2)今の状態は、「伝えられた教えの規準に心から服従し」たから与えられた。
①「伝えられた教えの規範を受け入れ」(新共同訳)
②「伝えられた教の基準に心から服従して」(口語訳)
(3)訳語の問題
①「教えの規準」が私たちに伝えられた(委ねられた)のではない。
②私たちが、「教えの規準」に委ねられたのである。主客が転倒してはならない。
③神のことばは永遠に変わらず、私たちを救う力がある。
(4)「規準」という言葉について
①「教え」とは、福音のことであり、キリストとの一体化のことである。
②「規準」とは、ギリシア語で「トゥポス」という。
(5)「トゥポス」の使用例
①ヨハ20:25(衝撃を受けた痕跡)
「それで、ほかの弟子たちが彼に『私たちは主を見た』と言った。しかし、トマ
スは彼らに『私は、その手に釘の跡を見、私の指を釘のところに差し入れ、また
私の手をそのわきに差し入れてみなければ、決して信じません』と言った」
②使7:43(偶像。型に入れて作られた物)
「あなたがたは、モロクの幕屋とロンパの神の星をかついでいた。それらは、あ
なたがたが拝むために作った偶像ではないか。それゆえ、わたしは、あなたがた
をバビロンのかなたへ移す」
③使7:44(神から示された型)
「私たちの父祖たちのためには、荒野にあかしの幕屋がありました。それは、見
たとおりの形に造れとモーセに言われた方の命令どおりに、造られていました」
*ヘブ8:5参照
④使23:25(文章の要約)
「そして、次のような文面の手紙を書いた」
⑤ロマ5:14(予表。予型)
「ところが死は、アダムからモーセまでの間も、アダムの違反と同じようには罪
を犯さなかった人々をさえ支配しました。アダムはきたるべき方のひな型です」
⑥ピリ3:17(手本。模範)
「兄弟たち。私を見ならう者になってください。また、あなたがたと同じように
私たちを手本として歩んでいる人たちに、目を留めてください」
*1テサ1:7、2テサ3:9、1テモ4:12、テト2:7、1ペテ5:3など参照
(4)私たちが受け入れた教えには力がある。
①福音の3要素
②キリストとの一体化
*キリストにあって死に、葬られ、キリストにあって生かされている。
③この教えの本質
*神からの型であり、模範である。
*私たちの人格に衝撃を与え、私たちをキリストに似た者に変える力である。
4.19~22節
「あなたがたにある肉の弱さのために、私は人間的な言い方をしています。あなたがたは、
以前は自分の手足を汚れと不法の奴隷としてささげて、不法に進みましたが、今は、その
手足を義の奴隷としてささげて、聖潔に進みなさい。罪の奴隷であった時は、あなたがた
は義については、自由にふるまっていました。その当時、今ではあなたがたが恥じている
そのようなものから、何か良い実を得たでしょうか。それらのものの行き着く所は死です。
しかし今は、罪から解放されて神の奴隷となり、聖潔に至る実を得たのです。その行き着
く所は永遠のいのちです」
(1)以前:罪の奴隷として自分の手足を汚れにささげていた。
①それ以外の選択肢はなかった。
②その結果、今では恥じているようなことをしてきた。
③終着点は、死である(霊的死)。
(2)今:自発的に義の奴隷(神の奴隷)となり、聖潔に進むべきである。
①罪から自由になったという前提がある。
②聖潔に至る実を得た。
③終着点は、永遠のいのちである。
Ⅲ.まとめ(23節)
1.23節
「罪から来る報酬は死です。しかし、神の下さる賜物は、私たちの主キリスト・イエスに
ある永遠のいのちです」
(1)かつての私たちは、罪の奴隷であった。
①罪が主人である。
②主人から報酬が来る。それが死である。
③当然の報いである。
④ギリシア語で「オプソウニオン」である。
⑤将軍が兵士に支払う給与である。
⑥毎日支払われる。
(2)今の私たちは、キリストの内にある。
①キリストが主人である。
②主人から賜物が与えられる。それが永遠のいのちである。
③賜物は、報酬ではない。
④ギリシア語で「カリスマ」である。
(3)以上のことが、神が創造した世界にある霊的法則である。
結論:
1.無律法主義(Antinomianism)
(1)パウロに対する非難(ガラ5:13)
「兄弟たち。あなたがたは、自由を与えられるために召されたのです。ただ、その自
由を肉の働く機会としないで、愛をもって互いに仕えなさい」
(2)ペテロに対する非難(1ペテ2:16)
「あなたがたは自由人として行動しなさい。その自由を、悪の口実に用いないで、神
の奴隷として用いなさい」
(3)ユダに対する非難(ユダ4)
「というのは、ある人々が、ひそかに忍び込んで来たからです。彼らは、このような
さばきに会うと昔から前もってしるされている人々で、不敬虔な者であり、私たちの
神の恵みを放縦に変えて、私たちの唯一の支配者であり主であるイエス・キリストを
否定する人たちです」
2
.聖化の速度
(1)クリスチャンの祝福
①一度キリストを信じたなら、救いを失うことはない。
②永遠のいのちが保障されている。
③聖化の完成も保障されている。
(2)聖化の速度が各人によって異なる。
①クリスチャンになっても、罪を犯すことはありうるが、それは必然ではない。
②日々、キリストの奴隷としての選びをしている人は、聖化の速度が速い。
③不従順な人は、神からの矯正的裁きを受ける。
(3)努力によって聖化の速度を速めようとすると、失敗する(7章の内容)。
(4)聖化は、聖霊の働きによって可能となる(8章の内容)。
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