メシアの生涯(201)—メシアの埋葬—

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メシアの埋葬の意味について考えてみよう。

「メシアの埋葬」

ヨハ19:31~42

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①福音の三要素が展開されて行く。

*キリストの死

*埋葬

*復活

②埋葬は、「メシアの辱め」の最後の段階である。

③次に、「メシアの高揚」が来る。

(2)ユダヤ的時間の確認

  ①木曜の日没後、イエスは弟子たちと過越の食事を食した。

  ②金曜の午前9時、イエスは十字架にかけられた。

    ・祭司長たちは、同じ時間に過越の子羊をほふった。

  ③金曜の午後3時、イエスは息を引き取った。

    ・この日は、種なしパンの祭り(7日間続く)の第1日目である。

    (3)A.T.ロバートソンの調和表

      §167 イエスの遺体はアリマタヤのヨセフの墓に葬られる。

マコ15:42~46、マタ27:57~60、ルカ23:50~54、ヨハ19:31~42

2.アウトライン

  (1)イエスのわき腹が槍で刺される(31~37節)

  (2)イエスの遺体が墓に葬られる(38~42節)

  3.結論:

  (1)出12:46

  (2)ゼカ12:10

  (3)イザ53:9

  (4)埋葬の神学的意味

メシアの埋葬の意味について考えてみよう。

Ⅰ.イエスのわき腹が槍で刺される

  1.31節

Joh 19:31 その日は備え日であったため、ユダヤ人たちは安息日に(その安息日は大いなる日であったので)、死体を十字架の上に残しておかないように、すねを折ってそれを取りのける処置をピラトに願った。

     (1)「備え日」とは、ユダヤ人の用語である。

      ①安息日のために備えをする日=金曜日

    (2)十字架刑の方法

      ①ローマ人たちは、死体をそのまま放置し、野獣や鳥に食わせる。

        ・まっとうな埋葬をしないことは、十字架刑の一部である。

      ②ユダヤ人たちは、十字架につけられた者の遺体は汚れていると考える。

        ・そのまま放置すれば、町が汚れる。

        ・特に、安息日に町が汚れることは容認できない(申21:22~23)。

        ・しかも、この安息日は「大いなる日」(過越の祭りの期間)であった。

    (3)ユダヤ人たち、罪人の死期を早め、すぐに遺体を取り除けるようピラトに願った。

      ①すねを折るのは、死期を早めるためである。

      ②ショック死、出血死、窒息死

      ③数か所の骨を折ったと思われる。

      ④もし、すねを折らなければ、数時間から数日間、生き延びた。

    (4)パリサイ人たちの偽善

①イエスを十字架につけるという罪を犯しながら、儀式的な汚れにこだわる。

  2.32~34節

Joh 19:32 それで、兵士たちが来て、イエスといっしょに十字架につけられた第一の者と、もうひとりの者とのすねを折った。

Joh 19:33 しかし、イエスのところに来ると、イエスがすでに死んでおられるのを認めたので、そのすねを折らなかった。

Joh 19:34 しかし、兵士のうちのひとりがイエスのわき腹を槍で突き刺した。すると、ただちに血と水が出て来た。

     (1)兵士たちは、イエス以外の2人の罪人のすねを折った。

      ①つまり、彼らはまだ生きていたのである。

      ②十字架上で、6時間以上も苦しんでいた。

      ③当然、彼らはすぐに死んだであろう。

    (2)イエスはすでに死んでおられた。

      ①もはや、すねを折る必要はない。

    (3)確認のために、兵士のうちのひとりがイエスのわき腹を槍で突き刺した。

      ①血と水が出て来た。

      ②さまざまな解釈がある。

      ③血は聖餐式、水は洗礼式の象徴であるという解釈は、比ゆ的解釈である。

  3.35~37節

Joh 19:35 それを目撃した者があかしをしているのである。そのあかしは真実である。その人が、あなたがたにも信じさせるために、真実を話すということをよく知っているのである。

Joh 19:36 この事が起こったのは、「彼の骨は一つも砕かれない」という聖書のことばが成就するためであった。

Joh 19:37 また聖書の別のところには、「彼らは自分たちが突き刺した方を見る」と言われているからである。

    (1)目撃者はヨハネである。

      ①彼は、イエスの肉体的死は実際に起こったことを証言している。

      ②彼は、この出来事と2つのメシア預言を関連づけている。

      ③つまり、イエスはメシアであるという論証を行っているのである。

Ⅱ.イエスの遺体が墓に葬られる

  1.38節

Joh 19:38 そのあとで、イエスの弟子ではあったがユダヤ人を恐れてそのことを隠していたアリマタヤのヨセフが、イエスのからだを取りかたづけたいとピラトに願った。それで、ピラトは許可を与えた。そこで彼は来て、イエスのからだを取り降ろした。

     (1)マタ27:57

Mat 27:57 夕方になって、アリマタヤの金持ちでヨセフという人が来た。彼もイエスの弟子になっていた。

      ①アリマタヤのヨセフは、サンヘドリンの議員で、金持ちであった。

      ②イエスの弟子になっていたが、ユダヤ人を恐れてそれを隠していた。

      ③「神の国を待ち望んでいた」(マコ15:43)

      ④アリマタヤは、エルサレムの北西約35キロにある町。

    (2)彼は、イエスのからだのとりかたづけをピラトに願った。

      ①これがなかったら、ユダヤ人がからだを取り外し、城壁の外に投げていた。

      ②アリマタヤのヨセフにとっては、自分になんの利益もない危険な行為である。

      ③ピラトは許可を与えた(恩赦)。彼なりのユダヤ人に対する抵抗である。

      ④埋葬は、時間がないので、大急ぎで行う必要があった。

  2.39~40節

Joh 19:39 前に、夜イエスのところに来たニコデモも、没薬とアロエを混ぜ合わせたものをおよそ三十キログラムばかり持って、やって来た。

Joh 19:40 そこで、彼らはイエスのからだを取り、ユダヤ人の埋葬の習慣に従って、それを香料といっしょに亜麻布で巻いた。

     (1)ニコデモの登場

      ①ヨハネの福音書の読者は、「前に、夜イエスのところに来た」人物を覚えている。

      ②彼は、没薬とアロエを混ぜ合わせたものを持って来た。

        *恐らくパウダー状であろう。

        *30キログラムとは、莫大な量である。

      ③彼もまた隠れ信者であったが、自らの信仰を表明した。

    (2)通常のユダヤ式埋葬法は、からだを洗い、没薬を用いながら亜麻布で巻く。

      ①ここでは、没薬とアロエを混ぜたものが使用されている。

      ②亜麻布は、複数形である。

      ③トリノの聖骸布は、偽物である。

  3.41~42節

Joh 19:41 イエスが十字架につけられた場所に園があって、そこには、まだだれも葬られたことのない新しい墓があった。

Joh 19:42 その日がユダヤ人の備え日であったため、墓が近かったので、彼らはイエスをそこに納めた。

     (1)イエスが埋葬された墓

      ①ゴルゴタに近い墓で、墓地ではなく、園にある墓である。

      ②だれも葬られたことのない新しい墓である。

      ③マタ27:59~60

Mat 27:59 ヨセフはそれを取り降ろして、きれいな亜麻布に包み、

Mat 27:60 岩を掘って造った自分の新しい墓に納めた。墓の入口には大きな石をころがしかけて帰った。

        ・これは、ヨセフの墓である。

        ・これは、金持ちの墓である。

      ④それを見ていたのが、マグダラのマリアとほかのマリアである。

結論:

  1.出12:46

Exo 12:46 これは一つの家の中で食べなければならない。あなたはその肉を家の外に持ち出してはならない。またその骨を折ってはならない。

    (1)ヨハネは、イエスが過越の子羊としての死を遂げたことを伝えている。

    (2)詩34:20

Psa 34:20 主は、彼の骨をことごとく守り、その一つさえ、砕かれることはない。

      ①イエスの死は、メシア預言の成就である。

  2.ゼカ12:10

Zec 12:10 わたしは、ダビデの家とエルサレムの住民の上に、恵みと哀願の霊を注ぐ。彼らは、自分たちが突き刺した者、わたしを仰ぎ見、ひとり子を失って嘆くように、その者のために嘆き、初子を失って激しく泣くように、その者のために激しく泣く。

    (1)メシアは突き刺される。

    (2)終わりの日に、ユダヤ人たちはそのメシアを仰ぎ見、救いに入る。

    (3)黙1:7

Rev 1:7 見よ、彼が、雲に乗って来られる。すべての目、ことに彼を突き刺した者たちが、彼を見る。地上の諸族はみな、彼のゆえに嘆く。しかり。アーメン。

      ①救われたユダヤ人たちが、再臨のメシアを見る。

  3.イザ53:9

Isa 53:9 彼の墓は悪者どもとともに設けられ、彼は富む者とともに葬られた。彼は暴虐を行わず、その口に欺きはなかったが。

    (1)受難のしもべであるメシアが、最後は金持ちの墓に葬られた。

  4.埋葬の神学的意味

    (1)埋葬は、「福音の三要素」のひとつである。

      ①埋葬は、イエスの辱めの最後であり、復活のための舞台でもある。

    (2)イエスの死は、メシア預言の成就である。

①神は、イエスがメシアであることを証明された。

    (3)ヨハネが「血と水」に言及した理由は、イエスの肉体的な死の確認である。

(4)当時、論駁する必要のある異端が存在していた。

      ①グノーシス主義

        ・物質と霊の二元論に特徴がある。

        ・物質は悪であり、霊は善である。

        ・神の子が肉体を持つはずがない。

      ②ドケチズム

        ・イエスが肉体を持っていたことを否定する説

・イエスの人間としての歩み(死も)は、人間の目にそう見えただけである。

    (5)イエスは、死んで葬られる私たち信者と一体になってくださった。

      ①それゆえ、イエスの復活は私たちの体験ともなるのである。

    (6)ニコデモの信仰(ヨハ3:14~15)

Joh 3:14 モーセが荒野で蛇を上げたように、人の子もまた上げられなければなりません。

Joh 3:15 それは、信じる者がみな、人の子にあって永遠のいのちを持つためです」

      ①彼は、イエスが上げられたことを認識した。

      ②彼は、イエスがメシアであることを信じた。

      ③彼は、メシアにあって永遠のいのちを得た。

      ④永遠のいのちが、行動として外に現れた。

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