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メシアの生涯(172)—過越の食事の準備—
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過越の祭りを背景として、イエスが神の小羊であることを学ぶ。
「過越の食事の準備」
(1)「ユダの裏切り」 マコ14:10~11、マタ26:14~16、ルカ22:3~6
(2)「過越の食事の準備」 マコ14:12~16、マタ26:17~19、ルカ22:7~13
(朗読箇所 マタ26:14~16、ルカ22:7~13)
1.はじめに
(1)文脈の確認
①「オリーブ山での説教」が終わると、イエスは十字架の死を予告した。
②その日の夕に、ベタニヤで晩餐会が開かれた。
③火曜日が終わり、日没後は水曜日となった。
(2)A.T.ロバートソンの調和表
§142 ユダはイエスを売り渡すために祭司長たちのところに行く
マコ14:10~11、マタ26:14~16、ルカ22:3~6
§143 弟子たちによる過越の食事の準備
マコ14:12~16、マタ26:17~19、ルカ22:7~13
2.アウトライン
(1)ユダの裏切り(マタ26:14~16)
①ユダの役割(14~15a節)
②銀貨30枚の意味(15b~16節)
(2)過越の食事の準備(ルカ22:7~13)
①当時の習慣
②イエスの指示(7~12節)
③弟子たちによる食事の準備(13節)
3.結論:
(1)マリアとユダの対比
(2)イエスの決意
(3)二階の大広間
過越の祭りを背景として、イエスが神の小羊であることを学ぶ。
Ⅰ.ユダの裏切り(マタ26:14~16)
1.ユダの役割(14~15a節)
Mat 26:14 そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテ・ユダという者が、祭司長たちのところへ行って、
Mat 26:15a こう言った。「彼をあなたがたに売るとしたら、いったいいくらくれますか。」
(1)ユダは、ベタニヤのシモンの家での晩餐から姿を消した。
①時は、火曜日の夜(水曜日になっている)である。
②イエスは、マリアの行為を批判する弟子たちを叱責した。
③ユダは、自分の動機が悪いので、叱責の言葉に衝撃を感じた。
(2)ルカ22:3とヨハ13:27
Luk 22:3 さて、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれるユダに、サタンが入った。
Joh 13:27 彼がパン切れを受けると、そのとき、サタンが彼に入った。そこで、イエスは彼に言われた。「あなたがしようとしていることを、今すぐしなさい。」
①サタンがユダに入ったタイミングはいつか。
②サタンの介入が段階を追って強くなったということか。
③いずれにしても、イエスの十字架の死にはサタンの関与があった。
④神は、サタンの悪行をご自身の計画のためにお用いになった。
⑤ユダの神は、お金であった。
⑥彼は、「悪霊憑き」ではなく、「悪魔憑き」である。
(3)祭司長たちとの面会は、通常は不可能である。
①祭司長たちにとっては、内部通報者が出たのは朗報である。
②ユダは、彼らにとっては祈りの答えであった。
(4)ユダと祭司長たちの契約内容は、3つの条項を含む。
①イエスの居場所を教え、群衆から隠れた所で逮捕されるようにする。
*これは実現した。
②コホート(約600人の歩兵隊)を派遣するための証人となる。
*ローマ法では、総督の前で反逆者の逮捕を直訴する必要がある。
*これも実現した。
③ローマ法廷で原告側の証人となる。
*宗教裁判では、この役割は必要なかった。
*これは実現しなかった。
2.銀貨30枚の意味(15b~16節)
Mat 26:15b すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。
Mat 26:16 そのときから、彼はイエスを引き渡す機会をねらっていた。
(1)銀貨30枚の支払いをもって、契約は完了した。
①この額は、すぐに支払われた。
②ユダは、希望のものを手に入れた。
③今度は、彼が責任を果たす番である。
(2)出21:32
「もしその牛が、男奴隷、あるいは女奴隷を突いたなら、牛の持ち主はその奴隷の主
人に銀貨三十シェケルを支払い、その牛は石で打ち殺されなければならない」
①銀貨30枚は、死んだ奴隷の命への弁済金である。
②ユダヤ文化の中では、銀貨30枚は軽蔑の象徴である。
③30という数字は、忌むべき数字である。
*キリスト教圏の13という数字、日本の4という数字
(3)ゼカ11:12~13
「私は彼らに言った。『あなたがたがよいと思うなら、私に賃金を払いなさい。もし、
そうでないなら、やめなさい。』すると彼らは、私の賃金として、銀三十シェケルを量
った。【主】は私に仰せられた。『彼らによってわたしが値積もりされた尊い価を、陶
器師に投げ与えよ。』そこで、私は銀三十を取り、それを【主】の宮の陶器師に投げ与
えた」
①良き羊飼いに支払われた賃金は、銀30シェケル。無給よりも侮辱的である。
②良き羊飼いの価値は、銀30枚である。
③ゼカリヤはこれを陶器師に投げ与えた。最下層の仕事。
④この預言は、イスカリオテのユダにおいて成就した。
(4)銀貨30枚は神殿の金庫から取られた。
①神殿の金庫の金の主な使途は、いけにえの動物を買うことである。
②この日、祭司長たちは、究極的な意味でそれを実行した。
(5)これで火曜日が終わった。
①水曜日は休息の日。
②木曜日は過越の食事の準備の日。
③金曜日は祭りの当日。
*イエスの十字架刑は、金曜日に行われた。
*通常の日にちの認識とユダヤ的認識が異なることが、混乱の原因となる。
Ⅱ.過越の食事の準備(ルカ22:7~13)
1.当時の習慣
(1)過越の小羊を神殿に運び、そこで傷やしみがないか吟味される。
①イエスは、4日間にわたりユダヤ人の指導者たちの吟味を受けた。
(2)小羊は神殿域でほふられ、鉢で受けた血が祭壇の土台の部分に注がれる。
①レビ人たちが、長い列を3つ作り、手渡しでその血を運ぶ。
②以上のことは、午後3時から6時にかけて行われた。
(3)小羊は捌かれ、過越の食事の食材として家に持ち運ばれた。
①祭壇で焼かれる部分は取り除かれる。
(4)それ以外の食材が用意される。
①種なしパン、苦菜、ぶどう酒など
2.イエスの指示(7~12節)
Luk 22:7 さて、過越の小羊のほふられる、種なしパンの日が来た。
Luk 22:8 イエスは、こう言ってペテロとヨハネを遣わされた。「わたしたちの過越の食事ができるように、準備をしに行きなさい。」
Luk 22:9 彼らはイエスに言った。「どこに準備しましょうか。」
Luk 22:10 イエスは言われた。「町に入ると、水がめを運んでいる男に会うから、その人が入る家にまでついて行きなさい。
Luk 22:11 そして、その家の主人に、『弟子たちといっしょに過越の食事をする客間はどこか、と先生があなたに言っておられる』と言いなさい。
Luk 22:12 すると主人は、席が整っている二階の大広間を見せてくれます。そこで準備をしなさい。」
(1)「種なしパンの日」とは、過越の祭りを含めた8日間のことである。
①その間、エルサレム周辺に、広大なテント村ができた。
②町は混雑しており、町の中で食事する場所を見つけるのは容易ではなかった。
③巡礼者たちは、テントの中で過越の食事をした。
④弟子たちは、どこで過越の食事をするか悩んでいたはずである。
(2)イエスは町の中で過越の食事をしようとされた。
①ペテロとヨハネにその準備を命じた。イエスは、場所を指定された。
②事前に言わなかったのは、ユダに知らせないためである。
③水がめを運ぶ男は珍しいので、すぐに見つかる。
*当時は、女性が水がめを運んだ。
④その人が入る家までついて行く。
⑤その家の主人は、イエスを信じる信者であろう。
⑥「弟子たちといっしょに過越の食事をする客間はどこか、と先生があなたに言
っておられる」と言えばよい。
⑦その家の主人は、席が整っている二階の大広間を見せてくれる。
*大きなゲストルームである。
*建物の脇に二階に上る階段が付いている。
*このような構造は、裕福な家だけの特徴である。
3.弟子たちによる食事の準備(13節)
Luk 22:13 彼らが出かけて見ると、イエスの言われたとおりであった。それで、彼らは過越の食事の用意をした。
(1)イエスは、小さなスケールの奇跡を行っておられる。
①予知能力
(2)ペテロとヨハネは、当時の習慣に従って食事の準備をした。
①席順が気になったはずである。
結論:
1.マリアとユダの対比
(1)マリアは、300デナリの香油をイエスに注いだ。
①イエスの埋葬の準備をした。
②彼女は、イエスにはこれ以上の価値があると認めていた。
(2)ユダは、銀貨30枚でイエスを売り渡した。
①これは死んだ奴隷の価値であった。
②祭司長たちは、意図的に侮辱的な額を提示した。
③ユダは、イエスの価値をその程度に見積りした。
2.イエスの決意
(1)マタ26:18
Mat 26:18 イエスは言われた。「都に入って、これこれの人のところに行って、『先生が「わたしの時が近づいた。わたしの弟子たちといっしょに、あなたのところで過越を守ろう」と言っておられる』と言いなさい。」
(2)「わたしの時が近づいた」
①イエスは、ベツレヘムの洞窟で誕生して以来、この時のために生きて来られた。
②イエスは、自分の運命を理解し受容した上で、最後の奉仕をしようとしている。
(3)「わたしの弟子たちといっしょに」
①この過越の祭りこそ、メシアの死の預言が成就する過越の祭りとなる。
②そこに弟子たちが同席する。
*最低10人の家族としての単位が必要である。
*イエスと弟子たちは、その家族単位を形成する。
③「あなたのところで過越を守ろう」
*この家の主人の献身的な信仰は、神に大いに祝された。
3.二階の大広間
(1)ペテロとヨハネは、「客間はどこですか」とたずねた。
①ギリシア語で「kataluma」である。
②裕福な家には、二階に客間があった。
(2)ふたりが案内されたのは、「二階の大広間」であった。
①ギリシア語で「anogeon」である。
②席が整っている二階の大広間であった。
③弟子たちが期待した以上のものが用意されていた。
(3)ルカ2:6~7
Luk 2:6 ところが、彼らがそこにいる間に、マリヤは月が満ちて、
Luk 2:7 男子の初子を産んだ。それで、布にくるんで、飼葉おけに寝かせた。宿屋には彼らのいる場所がなかったからである。
①宿屋は、「kataluma」である。
②イエスは、誕生の時には、客間さえ与えられなかった。
③最後の晩餐では、二階の大広間が用意された。
(4)ベタニヤのマリアに続く信仰者とは誰か。
①教会の伝承では、ここはヨハネ・マルコの両親の家である。
②使1章の集まりは、この場所で開かれた。
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