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ルカの福音書(74)忠実な管理人としての責務16:1~13
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不正な管理人のたとえ話について学ぶ。
ルカの福音書 74回
忠実な管理人としての責務
16:1~13
1.はじめに
(1)文脈の確認
①ルカは、エルサレムへの旅という枠組みの中に、種々の教えを配置している。
②ルカ15章のテーマは、「罪人に対する神の愛」である。
*神は罪人を招いておられる。
③ルカ16章のテーマは、弟子の責務である。
*特に、富の使用に関する教えが語られる。
(2)ルカ16:1~31の内容
①不正な管理人のたとえ話(1~8節)
②たとえ話の適用(9~13節)
③パリサイ人たちを叱責するイエス(14~18節)
④金持ちとラザロの物語(19~31節)
2.アウトライン
(1)不正な管理人のたとえ話(1~8節)
(2)たとえ話の適用(9~13節)
3.結論
(1)富に関する誤解
(2)富に関する正しい理解
(3)2人の主人
不正な管理人のたとえ話について学ぶ。
Ⅰ.不正な管理人のたとえ話(1~8節)
はじめに
(1)「不正な管理人のたとえ話」は、極めて難解である。
①イエスが不正を奨励しているかのように読める。
②解釈の鍵は、「不正の富」ということばにある。
③このたとえ話は、「悪いこと」を用いて「良いこと」を教えている。
1.1節
Luk 16:1
イエスは弟子たちに対しても、次のように語られた。「ある金持ちに一人の管理人がいた。この管理人が主人の財産を無駄遣いしている、という訴えが主人にあった。
(1)イエスは、弟子たちに話している。
①これは、「忠実な管理人としての責務」を教えるためのたとえ話である。
②聴衆が誰かを判断することが、たとえ話の解釈のために重要である。
③周りで、パリサイ人たちも聞いている。
*彼らは、イエスの教えをあざ笑う(14節)。
(2)ある金持ちが、ひとりの管理人を雇っていた。
①管理人とは、現代のファイナンシャルプランナーや管財人に相当する。
②イエス時代、金持ちは資産運用のために管理人を雇うことが一般的だった。
*管理人は、奴隷の場合も、自由人の場合もあった。
③資産は主人のものであり、管理人はその運用を任されているだけである。
④この管理人は、主人の財産を無駄遣いしていた。
*放蕩息子が父の遺産を「湯水のように使った」のと似ている。
*ともに、「diaskorpizo」(ディアスコルピゾウ)という動詞である。
⑤誰かがそのことを主人に訴えた。
2.2節
Luk 16:2
主人は彼を呼んで言った。『おまえについて聞いたこの話は何なのか。会計の報告を出しなさい。もうおまえに、管理を任せておくわけにはいかない。』
(1)たとえ話からは、管理人の失敗が意図的なものなのかどうかは分からない。
①主人は、管理人のことを不正直というよりも無責任と考えている。
②それゆえ、解雇する前に、管理人に帳簿を整理する時間を与えた。
3.3~4節
Luk 16:3
管理人は心の中で考えた。『どうしよう。主人は私から管理の仕事を取り上げようとしている。土を掘る力はないし、物乞いをするのは恥ずかしい。
Luk 16:4
分かった、こうしよう。管理の仕事をやめさせられても、人々が私を家に迎えてくれるようにすればよいのだ。』
(1)管理人は、対策を考えた。
①誰も自分を管理人として雇ってくれないだろう。
②肉体労働は、自分には無理である(老年になる。事務職であった)。
③物乞いは、不名誉な職業である。
④知恵を働かせることならできる(主人の財産を盗むこと)。
(2)彼は、主人の債務者たちの多くが、小作農であることを思い出した。
①彼らは、収穫量の中からある歩合を払うことになっていた。
②収穫期までは、支払う必要はない。
③管理人は、負債を減らしてやれば将来自分を雇ってくれるだろうと考えた。
4.5~7節
Luk 16:5
そこで彼は、主人の債務者たちを一人ひとり呼んで、最初の人に、『私の主人に、いくら借りがありますか』と言った。
Luk 16:6
その人は『油百バテ』と答えた。すると彼は、『あなたの証文を受け取り、座ってすぐに五十と書きなさい』と言った。
Luk 16:7
それから別の人に、『あなたは、いくら借りがありますか』と言うと、その人は『小麦百コル』と答えた。彼は、『あなたの証文を受け取り、八十と書きなさい』と言った。
(1)最初の人
①油100バテ → 50バテ
②バテとは「娘」のこと。1人の少女が運べる水の量。
*1バテは、約8.5ガロン(約32リットル)
*100バテは、約3,200リットル
*オリーブの木150本分(1000デナリに相当する)
*この人は、現代の貨幣価値で約500万円免除された。
(2)別の人
①小麦100コル → 80コル
②100コルは、100エーカーの収穫量(2,500デナリに相当する)
*この人もまた、約500万円免除された。
*免除された割合は異なるが、ほぼ同額が免除されたことになる。
(3)この管理人には知恵がある。
①両者ともに裕福な人なので、将来管理人として雇ってもらえる可能性がある。
②自分が手を染めるのではなく、負債者に修正させている。
③書類上の変更なので、発覚の可能性が低い。
④当時、干ばつの時には負債を減額し、名声を得る人が多くいた。
*もし主人が免除を取り消せば、面目を失くす可能性がある。
⑤古代世界では、奴隷が主人を出し抜くという物語が流布していた。
5.8節
Luk 16:8
主人は、不正な管理人が賢く行動したのをほめた。この世の子らは、自分と同じ時代の人々の扱いについては、光の子らよりも賢いのである。
(1)主人は、管理人が賢く行動したのをほめた。
①管理人の不正をほめたのではない。
②管理人は、将来への備えをしたのである
③これは、「悪いこと」を用いた良い教えである。
(2)未信者(この世の子ら)と信者(光の子ら)の対比
①未信者は、この世のことに関しては賢く振る舞う。
*この管理人は、自分の将来の備えをしたのである。
②それに比べると、信者は、天国のことに関して賢く振る舞っていない。
Ⅱ.たとえ話の適用(9~13節)
1.9節
Luk 16:9
わたしはあなたがたに言います。不正の富で、自分のために友をつくりなさい。そうすれば、富がなくなったとき、彼らがあなたがたを永遠の住まいに迎えてくれます。
(1)地上の富を、魂を勝ち取るために使用すべきである。
①「不正の富」(unrighteous mammon)とは、この世の富のことである。
*これは、ラビ用語である。
②「富がなくなったとき」(when you fail)とは、死んだ時という意味である。
*ギリシア語の「エクレイポウ」である。
③地上の富を用いて伝道したなら、天での友人ができる。
*これは、富の使用によって天に入れるという意味ではない。
2.10~12節
Luk 16:10
最も小さなことに忠実な人は、大きなことにも忠実であり、最も小さなことに不忠実な人は、大きなことにも不忠実です。
Luk 16:11
ですから、あなたがたが不正の富に忠実でなければ、だれがあなたがたに、まことの富を任せるでしょうか。
Luk 16:12
また、他人のものに忠実でなければ、だれがあなたがたに、あなたがた自身のものを持たせるでしょうか。
(1)小さいこと
①地上の富(不正の富)のことである。
②他人のもののことである(富は神のもの)。
③富の価値は低い(小さいこと)。
(2)大きいこと
①永遠に価値あるもの(霊的財産)である。
②真の富のことである。
③自分が所有できるもののことである(永遠の命は自分のもの)。
(3)小さいことに忠実な人に、大きいことが委ねられる。
①地上の富の管理に忠実な人は、キリストから報賞を得る。
3.13節
Luk 16:13
どんなしもべも二人の主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛することになるか、一方を重んじて他方を軽んじることになります。あなたがたは、神と富とに仕えることはできません。」
(1)2人の主人に仕えることはできない。
①神に仕えるか。
②富(マモン)(アラム語)に仕えるか。
結論
1.富に関する誤解
(1)パリサイ人たちの教え
①神は愛する人を富ませる。
②富は、神に愛されている証拠である。
(2)今日の「繁栄の神学」も、同じ教理的過ちを犯している。
①信仰によって、健康、富、成功などが手に入るという教えである。
②人格の完成については、ほとんど取り上げない。
2.富に関する正しい理解
(1)地上の富を軽視するのは間違っている。
①光の子らは、この世の子ら以上に、富の管理について長けている必要がある。
②神がすべて与えてくださると言って、無責任になるのはよくない。
(2)地上の富を重視し過ぎるのも間違っている。
①地上の富は、「まことの富」を得るために用いるべきである。
②「まことの富」とは、救いであり、主イエスとの関係である。
③御国の拡大のためにお金を使う人は、幸いである。
④それは、「小さなこと」を使って、「大きなこと」を成し遂げることである。
3.2人の主人
(1)奴隷が2人の主人を持てば、矛盾した命令が来て、働くことができなくなる。
(2)光の子らはマモンに仕えるではなく、マモンを利用して神に仕えるべきである。
(3)1テモ6:9~10
1Ti 6:9
金持ちになりたがる人たちは、誘惑と罠と、また人を滅びと破滅に沈める、愚かで有害な多くの欲望に陥ります。
1Ti 6:10
金銭を愛することが、あらゆる悪の根だからです。ある人たちは金銭を追い求めたために、信仰から迷い出て、多くの苦痛で自分を刺し貫きました。
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