使徒の働き(98)―マルタ島上陸―

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マルタ島での奉仕から教訓を学ぶ。

「マルタ島上陸」
使徒28:1~10

 

1.はじめに
(1)文脈の確認

①パウロは、カイザリヤからローマに向かう(27:1~28:15)。
②パウロは、ローマに上るというゴールを常に意識していた。
③使19:21

Act 19:21 これらのことが一段落すると、パウロは御霊の示しにより、マケドニヤとアカヤを通ったあとでエルサレムに行くことにした。そして、「私はそこに行ってから、ローマも見なければならない」と言った。

④パウロは、幾多の困難に直面してきた。
*大嵐に遭遇し、船が漂流した。
*船が座礁した。
⑤しかし、パウロの命は守られて来た。
⑥今回は、マルタ島上陸とそこでの奉仕を取り上げる。

 

(2)アウトライン

①島民のもてなし(1~2節)
②まむし(3~6節)
③病人の癒し(7~10節)

 

結論:

(1)まむしの毒からの守り
(2)マルタ島での癒し
(3)カペナウムでの癒し

マルタ島での奉仕から教訓を学ぶ。
Ⅰ.島民のもてなしを受けるパウロ(1~2節)
1.1節
Act 28:1 こうして救われてから、私たちは、ここがマルタと呼ばれる島であることを知った。
(1)一行は、マルタ島に上陸した。

①この島は、地中海の中央、シチリア島から南に93キロ離れた所にある。
②縦29キロ、横13キロ、最高標高点253メートルの島である。
③現在は、マルタ共和国内の島(同国内で最大の島)である。
④1989年12月、米ソ首脳による会談(マルタ会談)が開催され、米ソ冷戦の終
結が宣言された。
⑤猫が非常に多く生息している(70万匹以上で、人口の倍近くの数)。
⑥マルチーズ犬の原産地でもある。

 

2.2節
Act 28:2 島の人々は私たちに非常に親切にしてくれた。おりから雨が降りだして寒かったので、彼らは火をたいて私たちみなをもてなしてくれた。
(1)島の人々

①ギリシア語では「バーバロス」である。
②英語では、「the barbarians」である。
③野蛮人や未開人というニュアンスはない。
④ギリシア語やラテン語を話さない人は、「バーバロス」と呼ばれた。
⑤この時代、マルタ島には、フェニキア出身の人たちが住んでいた。
⑥彼らは、ギリシア・ローマ文明とは異なるが、洗練された文化を持っていた。

 

(2)彼らは、漂着した一行を非常に親切にもてなしてくれた。

①雨が降って寒かったので、浜辺でたき火を焚いてくれた。

 

Ⅱ.まむしに噛まれるパウロ(3~6節)
1.3節
Act 28:3 パウロがひとかかえの柴をたばねて火にくべると、熱気のために、一匹のまむしがはい出して来て、彼の手に取りついた。
(1)パウロは、疲れていたであろうに、自分でも柴をたばねて、火にくべた。

①当時の彼は、50代の半ばである。

(2)一匹のまむしが、パウロの手に噛みついた。

①寒かったので、まむしは固くなっており、昏睡状態にあった。
*木の枝と間違いやすい状態であった。
②ところが、熱気に驚いて目を覚まし、出て来た。
③まむしは、パウロの手に噛みついた。
*通常まむしは、噛んだらすぐに離れる。
*昏睡状態が多少残っていたので、異常な行動を取ったのであろう。
④ちなみに、現在マルタ島にまむしは生息していない。
⑤パウロは、3度命の危険を経験した。
*大嵐
*座礁
*まむし

 

2.4~5節
Act 28:4 島の人々は、この生き物がパウロの手から下がっているのを見て、「この人はきっと人殺しだ。海からはのがれたが、正義の女神はこの人を生かしてはおかないのだ」と互いに話し合った。
Act 28:5 しかし、パウロは、その生き物を火の中に振り落として、何の害も受けなかった。
(1)島民の評価

①パウロは極悪人だ(人殺し)。
②海からは逃れたが、正義の女神は彼を生かしておかないのだ。
*正義の女神とは、偶像神ではなく、抽象的な概念を神格化したものである。

 

(2)しかし、パウロは平然としていた。

①まむしを火の中に振り落とした。
②なんの害も受けなかった。

 

3.6節
Act 28:6 島の人々は、彼が今にも、はれ上がって来るか、または、倒れて急死するだろうと待っていた。しかし、いくら待っても、彼に少しも変わった様子が見えないので、彼らは考えを変えて、「この人は神さまだ」と言いだした。
(1)彼らは、パウロが苦しんで地に倒れるのを注視して待った。

①しかし、いくら待ってもパウロに異変は起こらなかった。
②島民たちは、パウロに対する評価を変えた。
③彼らは、パウロを神だと言い始めた。

 

(2)かつてパウロは、神だと言われたことがあった。

①使14:11~12(ルステラでの足のきかない人の癒し)

Act 14:11 パウロのしたことを見た群衆は、声を張り上げ、ルカオニヤ語で、「神々が人間の姿をとって、私たちのところにお下りになったのだ」と言った。
Act 14:12 そして、バルナバをゼウスと呼び、パウロがおもに話す人であったので、パウロをヘルメスと呼んだ。

 

(3)マルタの島民たちは、パウロを礼拝するところまでは行っていない。

①ルカがこれを書いたのは、パウロの上に神の守りがあることを示すためである。
②パウロは、必ずローマに行き、そこで主イエスを証しする。

 

Ⅲ.病人を癒すパウロ(7~10節)
1.7節
Act 28:7 さて、その場所の近くに、島の首長でポプリオという人の領地があった。彼はそこに私たちを招待して、三日間手厚くもてなしてくれた。
(1)島の首長でポプリオという人

①ギリシア語で「プロトス」は、ローマの官職のタイトルである。
②マルタ島の総督である。

 

(2)パウロの一行は、ポプリオの家に招かれた。

①まむし事件で、ポプリオは感銘を受けたのであろう。
②パウロ、ルカ、アリスタルコスが招かれた。
③彼らは、3日間にわたって手厚いもてなしを受けた。

 

2.8節
Act 28:8 たまたまポプリオの父が、熱病と下痢とで床に着いていた。そこでパウロは、その人のもとに行き、祈ってから、彼の上に手を置いて直してやった。
(1)パウロは、ポプリオの父を癒した。

①熱病と下痢で床に着いていた。
②これはマルタ熱と呼ばれる感染症である。
*特に、地中海沿岸に分布する感染症である。
*マルタ島のヤギの生乳の飲用により感染する。
*有熱期と無熱期が数か月間にわたって反復する。
③パウロは、祈り、手を置いてから癒した。

 

3.9~10節
Act 28:9 このことがあってから、島のほかの病人たちも来て、直してもらった。
Act 28:10 それで彼らは、私たちを非常に尊敬し、私たちが出帆するときには、私たちに必要な品々を用意してくれた。
(1)癒しの噂が島中に広がった。

①ほかの病人たちも来て、パウロによって直してもらった。

 

(2)島民たちは、パウロの一行を非常に尊敬した。

①3ヶ月後に出帆するときには、必要な品々を用意してくれた。

 

結論
1.まむしの毒からの守り
(1)パウロは、意図的にまむしを掴んだのではない。

①彼は、神を試みたのではない。
②意図せずにまむしを掴んだが、神の守りがあったということである。

(2)これは、イエスの預言の成就である。

①マコ16:18

Mar 16:18 蛇をもつかみ、たとい毒を飲んでも決して害を受けず、また、病人に手を置けば病人はいやされます。」

②ルカ10:19

Luk 10:19 確かに、わたしは、あなたがたに、蛇やさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けたのです。だから、あなたがたに害を加えるものは何一つありません。

 

2.マルタ島での癒し
(1)パウロは、自分の自由になる癒しの賜物を持っていたわけではない。

①パウロは、自分の病を癒すことができなかった(2コリ)。

*2コリ12:7~8
2Co 12:7 また、その啓示があまりにもすばらしいからです。そのために私は、高ぶることのないようにと、肉体に一つのとげを与えられました。それは私が高ぶることのないように、私を打つための、サタンの使いです。
2Co 12:8 このことについては、これを私から去らせてくださるようにと、三度も主に願いました。

②同労者の病を癒すこともできなかった。
*2テモ4:20
③しかし、神が癒そうとされた人なら、誰でも癒すことができた。
*パウロは神ではなく、神の使いであった。

 

3.カペナウムでの癒し
(1)ルカ4:38~40
Luk 4:38 イエスは立ち上がって会堂を出て、シモンの家に入られた。すると、シモンのしゅうとめが、ひどい熱で苦しんでいた。人々は彼女のためにイエスにお願いした。
Luk 4:39 イエスがその枕もとに来て、熱をしかりつけられると、熱がひき、彼女はすぐに立ち上がって彼らをもてなし始めた。
Luk 4:40 日が暮れると、いろいろな病気で弱っている者をかかえた人たちがみな、その病人をみもとに連れて来た。イエスは、ひとりひとりに手を置いて、いやされた。

①イエスは、ひとりの癒しから始め、多くの人を癒された。
*パウロも、ひとりの癒しから始め、島のほかの病人たちを癒した。
②最初のひとりは、イエスをもてなしている人の家族(姑)であった。
*パウロの場合の最初のひとりは、パウロをもてなした総督の父であった。
③ペテロの姑は、高熱(風土病)で苦しんでいた。
*総督の父も、高熱(マルタ熱)で苦しんでいた。
④イエスは、ひとりひとりに手を置いて、癒した。
*パウロも、祈り、手を置いて、癒した(使徒の働きではここだけである)。

 

(2)ルカの福音書と使徒の働きをひとつの記録として見る。

①公生涯の最初の出来事と、使徒の働きの最後の出来事が、対比されている。
②A-B-B-Aという形式が見られる(キアズム)。

 

(3)ルカの視点
①彼は、ルカの福音書でイエスの生涯を描いた。
②彼は、使徒の働きで復活のイエスの活動を描いた。
③イエスは、今も教会建設の業を進めておられる。
④私たちは、その目的のために仕える神のしもべたちである。

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