60分でわかる新約聖書(6)ローマ人への手紙

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ローマ人への手紙について学ぶ。

60分でわかる新約聖書(6) 「ローマ人への手紙」

 

1.はじめに
(1)ローマ人への手紙の位置づけ
 ①最初の組織神学の書
 ②これは、自分が設立していない教会に宛てたパウロの唯一の手紙である。
 ③執筆時点では、まだ訪問すらしていない。
 ④使28章になってようやく、囚人としてローマを訪問するようになる。

 

(2)著者は使徒パウロ。
 ①小アジアのタルソで生れたユダヤ人で、ローマの市民権を持っていた。
 ②教会迫害の張本人であったが、ダマスコ途上で回心を経験した(9:1~9)。

 

(3)宛先はローマの教会。
 ①使1:7
Rom 1:7
ローマにいるすべての、神に愛され、召された聖徒たちへ。/私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたにありますように。
 ②ローマの教会は、幾つかの家の教会から成り立っていた。
  *ペンテコステの日に回心したユダヤ人が、ローマに戻って伝道した。
 ③この手紙執筆当時、異邦人信者が大半を占めるようになっていた。
  *ユダヤ人信者と異邦人信者の関係は、重要な神学的問題である。

 

(4)執筆年代
 ①57年頃に書かれたと思われる。
 ②第三次伝道旅行の終りごろ
  *コリント滞在中(使20:2~3)
  *エルサレムに諸教会の献金を届ける直前
 ③第3次伝道旅行はエルサレムで終わる。
  *そこで投獄され、ローマに送られた。
 ④60年にローマに到着(使28:11~15)。

 

(5)執筆目的
 ①自らの神学をまとめるため
 ②スペイン伝道の支援を求めるため
 ③ローマ教会の中にあったユダヤ人信者と異邦人信者の葛藤を解決するため
  *ロマ14:1~15:13は、そのような視点から読む必要がある。

 

2.アウトライン:10の質問
(1)福音とは何か(1:1~17)
(2)人はなぜ福音を必要としているのか(1:18~3:20)
(3)罪人は、どのようにして義とされるのか(3:21~31)
(4)福音は、旧約聖書と調和しているのか(4:1~25)
(5)義認は、どのような祝福をもたらすのか(5:1~21)
(6)恵みと信仰による救いは、罪の生活を助長するのか(6:1~23)
(7)信者はなぜ、律法主義に陥るのか(7:1~25)
(8)信者は、どのようにして清い生活を送ることができるのか(8:1~39)
(9)ユダヤ人は、神から見捨てられたのか(9:1~11:36)
(10)では、いかに生きるべきか(12:1~16:27)

 

ローマ人への手紙について学ぶ。
Ⅰ.福音とは何か(1:1~17)
1.神の御子(第二位格の神)に関するものである。
(1)福音は、天地創造の前から約束されていた。
 ①御子の永遠性と神性を教えている。

 

(2)肉によればダビデの子孫として生まれた。
 ①イエスの人性を教えている。
 ②永遠なるお方が有限な時間と空間の中に誕生された。
 ③死者の中からの復活により、公に神の御子として示された。

 

2.福音の3要素
(1)イエスは私たちの罪のために十字架で死なれた。
(2)墓に葬られた。
(3)3日目に復活された。

 

Ⅱ.人はなぜ福音を必要としているのか(1:18~3:20)
1.異邦人は、罪人である(1:18~2:16)。
(1)聖書を持たない人にも啓示が与えられている。
 ①被造世界を通して、神についての知識を得ることができる。
 ②程度の差はあるが、すべての人にある程度の啓示が与えられている。
 ③人間は神の「かたち」に創造されているので、神を認識する能力がある。
 ④それゆえ、彼らに弁解の余地はない。
 ⑤人間は、意図的に真理を押さえつけている。だから、弁解の余地はない。
 ④ロマ1:21~23
Rom 1:21 彼らは神を知っていながら、神を神としてあがめず、感謝もせず、かえってその思いはむなしくなり、その鈍い心は暗くなったのです。
Rom 1:22 彼らは、自分たちは知者であると主張しながら愚かになり、
Rom 1:23 朽ちない神の栄光を、朽ちる人間や、鳥、獣、這うものに似たかたちと替えてしまいました。

 

2.ユダヤ人も、罪人である(2:17~3:8)。
(1)ユダヤ人には、言行不一致の罪がある(2:17~24)。
 ①人を教えながら、自分自身を教えない。
(2)割礼を誇りとしているが、割礼は祝福の保証ではない(2:25~29)。
 ①割礼を受けた者が律法に背いているなら、無割礼になったのと同じである。

 

3.すべての人は、罪人である(3:9~20)。
(1)ロマ3:9~10
Rom 3:9
では、どうなのでしょう。私たちにすぐれているところはあるのでしょうか。全くありません。私たちがすでに指摘したように、ユダヤ人もギリシア人も、すべての人が罪の下にあるからです。
Rom 3:10 次のように書いてあるとおりです。/「義人はいない。一人もいない。

 

Ⅲ.罪人は、どのようにして義とされるのか(3:21~31)
1.「義とされること」「義と認められること」を、義認という。
(1)私たちの本質が「義」となることではない。
 ①これは、転嫁された義である。
 ②キリストの義が信じる者に転嫁される。

 

2.神の義は、イエス・キリストを信じる信仰によって得られる。
(1)人は、信仰によって救われる。これを信仰義認という。
 ①「信仰のみ」、「聖書のみ」、「万人祭司」は、宗教改革の三大原理である。
 ②神は、信じた者を「義」と宣言される。

 

3.すべての人は、なんの差別もなしに同じ方法で救われる。
(1)ユダヤ人も異邦人と同じ方法で救われる。
 ①ロマ3:22~24
Rom 3:22 すなわち、イエス・キリストを信じることによって、信じるすべての人に与えられる神の義です。そこに差別はありません。
Rom 3:23 すべての人は罪を犯して、神の栄光を受けることができず、
Rom 3:24 神の恵みにより、キリスト・イエスによる贖いを通して、価なしに義と認められるからです。

 

Ⅳ.福音は、旧約聖書と調和しているのか(4:1~25)
1.信仰義認は旧約聖書の教えか。
(1)アブラハムの場合
 ①アブラハムは、神の約束を信じたので義とされた。
  *創15:5~6にある子孫の約束

 

(2)ダビデの場合
 ①ダビデは、姦淫と殺人の罪を犯したが、悔い改めによって赦された。
 ②彼は「律法の時代」の人であるが、信仰による義を証言している。
 ③詩32:1~2
Psa 32:1 幸いなことよ/その背きを赦され 罪をおおわれた人は。
Psa 32:2 幸いなことよ/【主】が咎をお認めにならず/その霊に欺きがない人は。

 

2.義認と割礼の関係をどう考えたらよいのか。
(1)割礼と義認とは無関係である。
 ①創15章:アブラハムは無割礼の時に、信仰によって義とされた。
 ②創17章:アブラハムは割礼を受けた。
 ③創15章と17章の間には、14年の歳月がある。

 

Ⅴ.義認は、どのような祝福をもたらすのか(5:1~21)
1.義認の結果、信者には5つの祝福が与えられている。
(1)神との平和(1節)
 ①ロマ5:1
Rom 5:1 こうして、私たちは信仰によって義と認められたので、私たちの主イエス・キリストによって、神との平和を持っています。

 

(2)恵みへのアクセス(利用する権利)(2節a)
 ①義認が恵みにより成就したように、信仰生活にも恵みが必要である。
 ②恵みへの道は、「オープン・ドア」の状態にある。
 ③いかなる不安や試練も、恵みによって乗り越えることができる。
 ④大祭司であるキリストに近づくことができる。

 

(3)栄光の希望に関する誇り(2節b)
 ①クリスチャンの希望は、聖化の完成である。これを栄化という。
 ②恵みにより義とされ、聖化され、栄化される。
 ③霊的指導者の役割は、霊的幼子に「恵みへのアクセス」を教えることである。

 

(4)今の時の忍耐心(3~10節)
 ①義認の恵みを受けた者は、誰もが嫌がる苦難(患難)をも誇りとしている。
 ②患難は、私たちの内にキリストの似姿を作り出す原動力となる。
 ③ロマ5:3~4
Rom 5:3 それだけではなく、苦難さえも喜んでいます。それは、苦難が忍耐を生み出し、
Rom 5:4 忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと、私たちは知っているからです。

 

(5)神に関する誇り(11節)
 ①ロマ5:11
Rom 5:11
それだけではなく、私たちの主イエス・キリストによって、私たちは神を喜んでいます。キリストによって、今や、私たちは和解させていただいたのです。

 

Ⅵ.恵みと信仰による救いは、罪の生活を助長するのか(6:1~23)
1.私たちはすでに死んだ。
(1)罪に対して死んだ。
 ①死んだ人は罪の影響を受けることはない。

 

(2)死んだと言える理由は、信仰によってキリストと一体化したから。
 ①キリストは、十字架について死んだ。私たちも死んだ。
 ②キリストは、墓に葬られた。私たちも葬られた。
 ③キリストは、復活した。私たちも復活した。

 

2.私たちはキリスト・イエスにあって生きた者である。
(1)ロマ6:11
Rom 6:11 同じように、あなたがたもキリスト・イエスにあって、自分は罪に対して死んだ者であり、神に対して生きている者だと、認めなさい。

 

Ⅶ.信者はなぜ、律法主義に陥るのか(7:1~25)
1.信者の最大の悲劇は、律法を行うことによって聖化を達成しようとすることである。
(1)ロマ書7章クリスチャン
 ①律法を行おうとする結果、律法主義的生活に追い込まれる。
 ②本来良いものであるはずの律法が、死をもたらすようになる。
 ③律法が、罪の性質が動き始めるための土台となるからである。

 

(2)パウロの体験
 ①ロマ書7章で、「私」という一人称が、9回使われている。
 ②自分の体験を基に、普遍的真理を述べている。

 

Ⅷ.信者は、どのようにして清い生活を送ることができるのか(8:1~39)
1.肉的信者と霊的信者の違い
(1)肉的信者は、ロマ書7章クリスチャンである。
 ①彼らは、自分で自分に重荷を課しているので、苦しむのは当然である。

 

(2)霊的信者は、ロマ書8章クリスチャンである。
 ①彼らは、新しい原理に従って歩む。

 

2.「キリスト・イエスにある、いのちの御霊の律法」
(1)信者は、キリストと一体化した。
 ①神は私たちに、武器なしで戦えとは命じておられない。
 ②ロマ8:2
Rom 8:2 なぜなら、キリスト・イエスにあるいのちの御霊の律法が、罪と死の律法からあなたを解放したからです。
 ③ヨハ15:5
Joh 15:5
わたしはぶどうの木、あなたがたは枝です。人がわたしにとどまり、わたしもその人にとどまっているなら、その人は多くの実を結びます。わたしを離れては、あなたがたは何もすることができないのです。

 

(2)信者は、苦難の中にあっても、圧倒的な勝利者となる。
 ①「苦難の中にあっても」
 ②「私たちを愛してくださった方によって」
 ③「圧倒的な勝利者となる」

 

Ⅸ.ユダヤ人は、神から見捨てられたのか(9:1~11:36)
1.ロマ書9~11章の扱いについて3つの立場がある。
(1)無視する立場
 ①置換神学の立場。教会は新しいイスラエルであると考える。

 

(2)軽視する立場
 ①この部分は挿入句的なもので、深い神学的意味はない。

 

(3)重視する立場
 ①神は、イスラエルに対する計画を持っておられる。

 

2.ロマ書9~11章は、「イスラエル人に関する神の義」の弁護である。
(1)本来ならば、「神の義の適用」(12~15章)に進むはずである。
 ①ここでパウロは、当然の疑問に答えようとしている。
 ②イスラエル人に対する神の愛は、どうなったのか。

 

(2)神の人類救済計画のステップ
 ①イスラエルの大半がメシアを拒否する。
 ②その結果、救いが異邦人に行く。
 ③イスラエルがねたみを起こし、やがて民族的救いを経験する。
 ④異邦人信者の使命は、ユダヤ人に「ねたみ」を起こさせることである。

 

(3)オリーブの木のたとえ
 ①折られた栽培種の枝とは、不信仰のイスラエル人。
 ②接ぎ木された野生種の枝とは、異邦人信者。
 ③この木(根の豊かな養分)は、霊的祝福の源である。
  *これは、アブラハム契約のことである。
  *アブラハム契約は、神がイスラエルと結んだ契約である。
  *異邦人は、アブラハム契約の祝福に接ぎ木されたのである。

 

Ⅹ.では、いかに生きるべきか(12:1~16:27)
1.神学のない実践はない。また、実践のない神学もない。
(1)パウロ書簡の特徴は、教理、そして、適用である。
 ①1~8章が教理
 ②9~11章がイスラエルの救い
 ③12~16章が適用

 

(2)ロマ12:1~2が、実践の基本原則である。
Rom 12:1
ですから、兄弟たち、私は神のあわれみによって、あなたがたに勧めます。あなたがたのからだを、神に喜ばれる、聖なる生きたささげ物として献げなさい。それこそ、あなたがたにふさわしい礼拝です。
Rom 12:2
この世と調子を合わせてはいけません。むしろ、心を新たにすることで、自分を変えていただきなさい。そうすれば、神のみこころは何か、すなわち、何が良いことで、神に喜ばれ、完全であるのかを見分けるようになります。

 

(3)否定形の命令の内容
 ①否定的命令形の要点は、「この時代」の要求に同意しないということ。
 ②「この時代は、あなたを『型』にはめようとするが、同意してはならない」

 

(4)肯定形の命令の内容
 ①「心を新たにすることで、自分を変えていただきなさい」
 ②受動態命令形:動作の主体は自分以外である。
 ③神が主体の場合、「divine passive」(神的受動態)という言葉がある。
 ④聖化は「divine passive」(神的受動態)の結果起こる祝福である。

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