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使徒の働き(27)―サマリヤ人伝道(1)―
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ピリポのサマリヤ人伝道について学ぶ。
「サマリヤ人伝道(1)」
使徒8:5~13
1.はじめに
(1)ステパノの死をきっかけに、エルサレムの教会に対する激しい迫害が起こった。
①使徒たち以外の者はみな、ユダヤとサマリヤの諸地方に散らされた。
②サウロは、教会への迫害を始めた。
③使8:4
Act8:4 他方、散らされた人たちは、みことばを宣べながら、巡り歩いた。
④イエスが「種を蒔く人」のたとえ話の中で語っておられた状況が訪れた。
⑤ピリポは、2つの民族的なバウンダリーを越えて行く。
*大きなバウンダリーは、サマリヤ人との間にあったものである。
*小さなバウンダリーは、エチオピア人の改宗者との間にあったものである。
(2)「サマリヤ人伝道」のアウトライン
①ピリポの伝道(5~8節)
②魔術師シモンの信仰(9~13節)
③ペテロとヨハネの訪問(14~17節)
④魔術師シモンの罪(18~25節)
2.アウトライン
(1)ピリポの伝道(5~8節)
(2)魔術師シモンの信仰(9~13節)
結論
(1)サマリヤ人とユダヤ人の敵対の歴史
(2)神のマスタープラン
ピリポのサマリヤ人伝道について学ぶ。
Ⅰ.ピリポの伝道(5~8節)
1.5節
Act8:5 ピリポはサマリヤの町に下って行き、人々にキリストを宣べ伝えた。
(1)このピリポは、使徒ピリポではなく、7人の世話役のひとりである(使6:5)。
①世話役のリストでは、ステパノに続いて2番目にその名が出て来る。
②ヘレニストのユダヤ人。ヘブライストのユダヤ人よりも開放的。
③ステパノ同様、伝道者の賜物が与えられていた。
④使徒たちの近くにおり、使徒たちから権威を委譲されていた(使6:6)。
Act6:6 この人たちを使徒たちの前に立たせた。そこで使徒たちは祈って、手を彼らの上に置いた。
(2)「サマリヤの町に下って行き、」
①エルサレムからサマリヤまでは、地形的に下りである。
②サマリヤの町
*旧約聖書のサマリヤ(セバステ)ではない(当時はギリシア人の町)。
*ネアポリス(シェケム)である。
*シェケムは、サマリヤ人の信仰の中心地になっていた。
③当時、ユダヤ人とサマリヤ人は敵対関係にあった。
(3)「人々にキリストを宣べ伝えた」
①ピリポのメッセージの中心は、キリストであった。
②キリストは、サマリヤの町ではすでに知られていた。
2.6~7節
Act8:6 群衆はピリポの話を聞き、その行っていたしるしを見て、みなそろって、彼の語ることに耳を傾けた。
Act8:7 汚れた霊につかれた多くの人たちからは、その霊が大声で叫んで出て行くし、多くの中風の者や足のなえた者は直ったからである。
(1)ピリポの伝道には、超自然的な現象がともなった。
①しるしは、基本的には使徒たちの奉仕に伴う祝福である。
*ステパノとピリポは、使徒たちから権威の委譲を受けていた。
*神は、しるしをもってピリポが語る内容を保証された。
②群衆は、ピリポが行うしるしには説得力があると感じた。
*奇跡はないという前提的真理に立っている人には、この箇所は信じ難い。
(2)しるしの内容
①悪霊が出て行った。
②多くの中風の者や足のなえた者が直った。
③使2:43と同じパターンである。
Act2:43 そして、一同の心に恐れが生じ、使徒たちによって多くの不思議としるしが行われた。
④使3:9~10とも同じである。
Act3:9 人々はみな、彼が歩きながら、神を賛美しているのを見た。
Act3:10 そして、これが、施しを求めるために宮の「美しの門」にすわっていた男だとわかると、この人の身に起こったことに驚き、あきれた。
3.8節
Act8:8 それでその町に大きな喜びが起こった。
(1)福音は、人々に大きな喜びをもたらす。
①使2:46~47
Act2:46 そして毎日、心を一つにして宮に集まり、家でパンを裂き、喜びと真心をもって食事をともにし、
Act2:47 神を賛美し、すべての民に好意を持たれた。主も毎日救われる人々を仲間に加えてくださった。
Ⅱ.魔術師シモンの信仰(9~13節)
1.9節
Act8:9 ところが、この町にシモンという人がいた。彼は以前からこの町で魔術を行って、サマリヤの人々を驚かし、自分は偉大な者だと話していた。
(1)シモンは魔術師である。
①ピリポは神の力で、シモンは悪霊の力で動いていた。
②人々を驚かすことが、彼のゴールである。
③自称「偉大な者」(somegreatone)
(2)シモンに関する種々の伝承
①グノーシス主義の創始者
②ローマに行って、キリスト教の教理を曲げた(最初の異端を作り出した)。
③ペテロと奇跡コンテストを演じ、敗れた。
2.10~11節
Act8:10 小さな者から大きな者に至るまで、あらゆる人々が彼に関心を抱き、「この人こそ、大能と呼ばれる、神の力だ」と言っていた。
Act8:11 人々が彼に関心を抱いたのは、長い間、その魔術に驚かされていたからである。
(1)「この人こそ、大能と呼ばれる、神の力だ」
①サマリヤ人たちは、シモンに欺かれていた。
②人々が、シモンは神性を有していると考えたかどうかは明らかではない。
*少なくとも人々は、シモンは「神の力」の化身であると考えていた。
③一番の問題は、シモンがそのような賞賛を喜んで受け取っていたことである。
3.12節
Act8:12 しかし、ピリポが神の国とイエス・キリストの御名について宣べるのを信じた彼らは、男も女もバプテスマを受けた。
(1)「神の国とイエス・キリストの御名」
①「神の国」とは、メシア的王国(千年王国)のことである。
*使1:3
Act1:3 イエスは苦しみを受けた後、四十日の間、彼らに現れて、神の国のことを語り、数多くの確かな証拠をもって、ご自分が生きていることを使徒たちに示された。
*使1:6
Act1:6 そこで、彼らは、いっしょに集まったとき、イエスにこう尋ねた。「主よ。今こそ、イスラエルのために国を再興してくださるのですか。」
②「イエス・キリストの御名について宣べる」
*イエス・キリストは神の国の王であるというメッセージ
③ピリポが伝えたメッセージの内容
*イエス・キリストは、今栄光の座に着いておられる。
*サマリヤ人も、イエスを信じることでメシア的王国の市民となれる。
(2)シモンの働きとピリポの働きの対比
①シモンは、悪霊の力によって関心を自分に集め、人々を驚かせた。
②ピリポは、神の力によって関心をイエスに向け、人々を回心に導いた。
(3)「男も女もバプテスマを受けた」
①信じた証しとして、洗礼を受けた。
②すでに割礼を受けていたので、洗礼だけでユダヤ教に改宗することができた。
③このようなことは、普通は起こらない。
④サマリヤ人にとっては、ユダヤ人のメシアを信じるのは、裏切り行為である。
⑤ユダヤ人にとっては、サマリヤ人も救われると教えるのは、裏切り行為である。
⑥ステパノは、福音の普遍性を論じたために迫害された。
⑦ピリポも同じ神学的危険を犯したのである。
4.13節
Act8:13 シモン自身も信じて、バプテスマを受け、いつもピリポについていた。そして、しるしとすばらしい奇蹟が行われるのを見て、驚いていた。
(1)シモン自身も信じて、バプテスマを受けた。
①シモンが救われたのかどうか、断定することはできない。
*その後の展開を見ると、その信仰が真実なものとは思えない。
②彼は、ピリポに付き従うようになった。
*その姿は、これまでシモンに従っていた人々に大きな影響を与えた。
(2)「しるしとすばらしい奇蹟が行われるのを見て、驚いていた」
①ユダヤ教は、魔術師が悪魔の力によって奇跡を行うことを認めていた。
②しかし、魔術師が発揮する力は、限定的なものであった。
③シモンは、ピリポが発揮する神の力の素晴らしさに驚いていた。
5.サマリヤ人の救いを教会が認定するかどうかという問題が残っている。
(1)次回、その問題を取り上げる。
結論
1.サマリヤ人とユダヤ人の敵対の歴史
(1)アッシリヤ捕囚直後
①北王国の人々の中で、約束の地に留まることを許された人たちがいた。
②アッシリヤは、異民族をサマリヤの町々に住まわせた。
③やがて雑婚により、サマリヤ人と呼ばれる人たちが出現した。
④2列17:25~29の説明
*異民族たちは、その地で偶像礼拝を始めた。
*【主】は獅子を送り、彼らを罰した。
*彼らは、アッシリヤの王に助けを求めた。
*捕囚になっていた祭司がベテルに来て、【主】を礼拝する方法を教えた。
*それでも、それぞれの民はめいめい自分たちの神々を礼拝した。
(2)サマリヤ宗教の誕生
①サマリヤ人たちは、ヤハウェ礼拝と偶像礼拝を混合させた。
②これが、サマリヤ宗教(Samaritanism)と呼ばれるものである。
③サマリヤ宗教の特徴
*唯一の神を礼拝する。
*モーセを敬う(モーセの五書だけを受け入れる)
*安息日を守り、割礼を実行する。
④ユダヤ人から見れば、これは異端である。
⑤ユダヤ人たちは、サマリヤ人とは交流しなかった。
(3)捕囚から帰還後
①サマリヤ人たちは、神殿建設への参加を申し出たが、断られた。
②そこで彼らは、あらゆる手段を講じて工事を妨害した。
③ユダヤ人たちは、ゲリジム山にあった神殿を破壊した。
④サマリヤ人たちは、夜中に死体数体を神殿に運び込み、敵討ちをした。
⑤紀元1世紀には、両者の関係は最悪の状態にあった。
(4)そのバウンダリーを、ピリポが越えたのである。
2.神のマスタープラン
(1)イエスによるサマリヤ人伝道(ヨハ4:7~42)
①サマリヤの女が回心する。
②サマリヤの女が伝道者になる。
③ヨハ4:42
Joh4:42 そして彼らはその女に言った。「もう私たちは、あなたが話したことによって信じているのではありません。自分で聞いて、この方がほんとうに世の救い主だと知っているのです。」
(2)10人のツァラアト患者の癒し(ルカ17:15~18)
①感謝するために戻って来たのは、ひとりのサマリヤ人だけであった。
(3)イエスの宣教命令(使1:8)
Act1:8 しかし、聖霊があなたがたの上に臨まれるとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、および地の果てにまで、わたしの証人となります。」
①エルサレムとユダヤ(ユダヤ人伝道)
②サマリヤの全土(サマリヤ伝道)
③地の果て(異邦人伝道)
*①と②の間にあるバウンダリーを越えるのは、ピリポである。
*②と③の間にあるバウンダリーを越えるのは、ペテロである。
(4)イエスは、神と罪人の間にあるバウンダリーを越えて下さった。
①私たちも、「神の国とイエス・キリストの御名について」宣べ伝えるのである。
Act8:12 しかし、ピリポが神の国とイエス・キリストの御名について宣べるのを信じた彼らは、男も女もバプテスマを受けた。
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